三百四十九話 雰囲気が一皮剥けた
モバールの街へと戻ったソウスケはローディア商会に向かい、トーラスに会えるようアポを取る。
そして翌日に会う事が決定し、その日は特にする事は無くダラダラと過ごして一日が終わった。
「待ってましたよゼルートさん」
「ど、どうも」
(あい、かわらず豪華な部屋だな。やっぱりまだまだ慣れん)
場違い感が凄いと感じながらもソウスケはなるべく自然な様子でザ・高級ソファーに腰を下ろす。
その隣にトーラスから促され、ミレアナとザハークも座る。
「中々長い期間離れていましたが、ダンジョンを潜ったのは良い経験でしたか?」
トーラスはソウスケが過去に一度ダンジョンを攻略した事を知らず、初めてダンジョンに潜ったと思っていた。
(そりゃこんなガキがダンジョンを一人で攻略したとか普通は思わないよな。そもそもあの時は超奇跡的に攻略できた訳だし)
いくら最初から強力なスキルや技を持っていようと、モンスターを倒してレベルが上がって強くなってもダンジョンを潜るのに初めてだという事は変わらない。
「えぇ。とても良い経験でしたよ。なんというか、そこまで長い間潜っていた訳では無いですし、幾つものダンジョンを潜った訳じゃ無いんですけど、何となく・・・・・・ダンジョンではあんな事やこんな事が起こってこういった感情を持つんだなって思いました」
「そうですか。詳しい事までは解りませんが、短い間に色々と経験したみたいですね。一皮剥けて一段と男らしくなったんじゃないですか?」
「ははは、そうだと良いんですけどね」
半分はお世辞。だが、もう半分は本音だった。
容姿は一カ月やそこらで変わる訳ない。
それは身長も同じ。
でも雰囲気は少しだけかもしれないが、確実に変わったとトーラスは感じた。
(あんな事や、こんな事を・・・・・・私の予想が正しければ、ダンジョンの良い部分と闇の部分を両方知った。そんな感じがしますね)
トーラスの予想は正しかった。
ソウスケは二回目のダンジョン探索で、ダンジョンで突然襲ってくる悪意のある悪戯、強者が弱者を食い物にしようとする腐った考え。
それらを見て、他にもどんな状況があり得るのか想像出来てしまった。
が、だからといってソウスケがダンジョンを恐れるのかといえば、そんな事は無い。
自分が強いという事を自覚しているから。
「えっと、俺がモバールを離れていた間にどれぐらいの予約が入りました? 他の街に言ってる間も造り続けていたんですけど」
「ふっふっふ。やはり気になりますよね」
トーラスはデスクから一枚の紙を取り出し、ソウスケ達に見せる。
「通常のエアーホッケーが五つに、トレントの木を使ったエアーホッケーが十五です!!!」
「お、おぉーー・・・・・・え? トレントの木を使ったエアーホッケーの方が予約数が多いんですね」
「そうですね。通常の物は私と同じ商人、後は知名度が高い職人の方が予約されました。そしてトレントの木を使った方は冒険者ギルドや貴族の方、それと酒場などから予約を受けています」
(なるほど。確かに一般人よりレベルが高いから普通にエアーホッケーだとぶっ壊れる可能性はあるな)
そんな状況が容易に想像出来た。
酒場などでそんな事になれば周囲の人間は大笑いするかもしれない。
ただ、店主は大金を払って買った物を簡単に壊されてはたまったものではないだろう。
(トーラスさんから手渡されたけど、あれ一台で白金貨五枚だもんなぁ・・・・・・もしそんな状況になれば、店主の性格や腕っぷしにもよるだろうけど、壊した奴はボコボコにされるだろうな)
そんな状況も簡単に想像出来てしまい、ソウスケはおもわず小さく笑ってしまった。
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