三百四十八話 本当に偶々だから頭上げて

「そこの三人、ここから先は通行止めだぜ!!! 通りたきゃ「やかましんだよ山賊」ガハッ!!??」


隠れていた木々から動き、通りへと出て来た山賊にソウスケは容赦なくウィンドボールを叩きこんだ。


その数は丁度十。

隠れていた盗賊の人数ぴったりの数。


だがその初撃だけで戦いが終わる事は無かった。


「おい、何避けてんだよ。初撃で終わらせるつもりだったのによ」


「な、なな、お、おまっ、お前えッ!!!???」


運良くウィンドボールを躱せた盗賊達の数は二。

一気に数の利を失った盗賊達が出る行動は攻撃か、それとも仲間に情報を伝える為に逃走か?


否、仲間が文字通り瞬殺されたという事実を頭と心が認識できていなかった。


「お前ら、俺らに手を出したらボスが黙っていないぞ!! とかそんな捨て台詞か。こんな世界で生きているんだからいつ死ぬのか解らんのは当たり前だけど、それが最後の言葉とか悲しくならないのか?」


ソウスケが言い終えると、横から二本の魔矢が空を裂いて脳天を貫く。


「生かしておいた方が良かったでしょうか?」


「殺してから言うなよ。まっ、別に良いけどさ」


「ソウスケさん、盗賊の下っ端共がいるという事は当然親玉がいるのだろう。そいつはどうする?」


少しだけ暴れたくなったなど、そういった幼稚な理由では無く単純な疑問だった。

盗賊団を潰す。それは冒険者にとって良くある仕事だ。


ただし、本来なら複数のパーティーが一緒に行動して行うのだが、ここにいる三人なら実力的に三人だけでも全く問題は無い。


「・・・・・・今は正直狩る気は無いな」


「それなら私が行きましょうか? 放っておけば、またいつこうやって足を止められるか分かりませんし」


一つの盗賊団を潰したところで星の数程とは言わないが、それでも相当数の盗賊団が存在しており、焼け石に水に過ぎない。


ただ潰しておく事に越した事は無い。


「分かった。こいつらの強さからしてないとは思うが、一応気を付けろよ」


「勿論です。それでは少々お持ちください」


全速力で駆け出し、あっという間にミレアナは森の中へ消えた。


「レベルが上がったからか、足速くなった?」


「なったと思います。アクセルウィンドを使った時の速度には及ばないが、速くなっていますね」


「ザハークの疾風を使った時と比べてどう?」


「訊かなくても解っているだろう」


ザハークもダンジョンに何度も潜った事でレベルは上がり、必然的に身体能力も上がってるので脚力も上がっているのだが、お互いに脚力が上がるスキルを使ったとしてもザハークはミレアナに及ばない。


そしてミレアナが森に入ってから三十分後、ようやく戻って来た。

だが、後ろに数人の冒険者が付いて来ていた。


「おい、そいつらは誰だ?」


「盗賊に捉えられていた冒険者達です。まだ生きていたのでとりあえず通りまで連れてきました」


後ろに付いていた冒険者達はミレアナがポーションを使ったので傷は無いが、身に付けている防具が所々凹んでいる。


「あ、自分はボラットと言います!! 今回は助けて頂き有難うございます!!!!」


「「「有難うございました!!!!!」」」


ミレアナから自分が所属しているパーティーのリーダーはソウスケだと伝えているので、冒険者達は聞いていたソウスケの特徴から判断し、相手が子供であっても関係無く深々と頭を下げた。


「お、おう。どういたしまして。ただ、助けたのはミレアナだから、感謝の念はミレアナに伝えてくれ」


「ミレアナさんにはもう結構ですと言われました。それに、あなたがミレアナさんに許可を出さなければ盗賊団を討伐しなかったと」


「いや、そう・・・・・・かもしれんが、とりあえず頭を上げてくれ」


一旦頭を上げて貰い、四人が無事に拠点にしている街に変えれることを確認してソウスケ達は再びモバールに向かう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る