三百三十話 単純に強い?

「ちょっといいかな、お姉さん」


「何か私に用かしら坊や。成人に成り立てでもの子でも飲めるお酒なら少しは教えてあげられるけど」


「あーーー、それもちょっと教えて欲しいが、用は別にあるんだ」


バニーガールはソウスケが自分に話しかけて来た理由は解らなかったが、見た目はまだ少し幼いとはいえ客なので嘗めた態度を取る事無く無礼が無いように接する。


「お姉さんは、何時仕事が終わる?」


「ッ、・・・・・・そうねぇ。後三十分もしたら今日の勤務時間は終わるわ」


「そっか、なら三十分経ってからもう一度ここに来るよ。それと・・・・・・」


「あらあら、見た目は子供だけど中身は立派な大人という訳ね。わかったわ」


バニーガールはソウスケの頭をよしよしとしてから仕事へと戻った。


(いきなりの子ども扱いは照れるというか恥ずかしいな。まっ、あの様子なら約束をすっぽかす事は無いだろ)


ソウスケは一枚の金貨を握りしめ、ザハークの元へ戻る。


「上手くいったのか?」


「ああ。後三十分後にもう一度同じ場所に向かう。三十分ぐらいあれば少しプレイ出来るけど、遊ぶか?」


「そうだな。ソウスケさんもじっとしているのは暇だろう。ただ長引くと良くない、だからルーレットにしよう」


「了解」


一応成功した事を報告しようとしたソウスケはジーラスとバルスを探す。

すると二人共上機嫌な表情になっていた。


「お二人共成功したんですね」


「おう。その様子だと、ソウスケも成功したみたいだな。んで、幾ら使ったんだ」


「これぐらいです」


ソウスケが指を一本立てる。

それでソウスケがバニーガールに幾ら払ったのか二人は理解した。


「はっは~~~。太っ腹だなソウスケは」


「今回探索していた時に中身が良質な宝箱を手に入れましたからね。結構余裕があるんですよ」


「あぁーーー、なるほどな。偶にあるよなそういう時。俺らもそういう日は地上に戻って限界まで飲んで食うな」


ジーラス達のパーティーは基本的に酒に強いので、酔いつぶれて身に付けている物を盗られるという事は無い。


「それで後三十分程時間はありますけど、お二人はどうしますか? 自分はザハークと少しルーレットで遊んで時間を潰そうと思ってるんですけど」


「俺らもお互いに一時間ぐらい時間を潰さなきゃならない。ってな訳だから、一緒にもう少しギャンブルを楽しむか」


全員時間までギャンブルで時間を潰すことが決まり、空いているテーブルに座ってルーレットを始める。

勝負し続ける事十数回。今回のギャンブルでは幸運を使わずに行ったソウスケだが、七割方の勝利を収めた。


「やっぱりソウスケはルーレット強いな。今回のゲームで幾ら増えた?」


「そうでもないですよ。強いて言えば安全マージンを張ってるからそこまでチップが減らないだけです。えっと、増えたチップは現金で金貨一枚弱ぐらいですかね?」


日本円で換算すれば時給ではなく、分給四万程になるのだが既にその辺り感覚がマヒして来たソウスケは増えた金額に多少驚きはするものの、最初のプレイ程は驚かなくなっている。


「そういえばソウスケはそろそろ時間か?」


「あっ、そうですね。それじゃ、今日はこんな楽しい場所を教えてくれて有難うございました」


日本に住んでいては年齢的にも国的にも得られないであろう、大人楽しさを教えてくれた二人にソウスケとザハークは頭を下げる。


「よせよせ、別に大した事は教えてねぇーーーよ」


「だな。俺らの方こそ今日は二人とカジノで遊べて楽しかったぜ。また機会があれば一緒に遊ぼうな」


二人と別れたソウスケとザハークはバニーガールと話した場所へ向かう。

そして待つ事約五分、ようやくバニーガールが私服姿でやって来た。

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