三百二十九話 その手があった

「あれ以来、あの貴族の坊ちゃんはギルドでは見なくなったけどな」


「そんな事があれば恥ずかし過ぎてこの街のギルドでは活動出来ないですよ」


自分ならそんな大恥をかいた場所で活動する事なんて考えられず、そもそも格上の相手に上から目線で話しかけたりしないとソウスケは考えるのだが、世の中理解不能な自信を持つ馬鹿は多い。


「後ろにいた二人の少年達は他の冒険者と一緒にパーティーを組んでダンジョンを探索しているのをチラッとだけ見た事があるけどな」


格上で先輩にあたる冒険者に対してあんまりにも無礼な態度をとった坊ちゃんに付いて行けないと思った二人。

元々坊ちゃんの方が爵位が上であったため、後々厄介な事に発展したくなかったので中々縁を切れなかった二人だが、この件で坊ちゃんが父親にボコボコにされるまで殴られ、無理矢理謝罪させられたという事を訊いて完全に坊ちゃんとは縁を切った。


最初は何か嫌がらせ的な行為が来ると身構えていた二人だが意外にもそういった事は無く、今も冒険者として活動出来ている。


「調子に乗って坊ちゃんと一緒に俺らに上から目線で話しかけてこなかった事を考えれば、元々慎重な性格なんだろう。だから今でも冒険者として長続きしてるんだ。坊ちゃんの方はどうなったか知らんけどな」


「あんな性格じゃどこにいっても上手くいく筈が無い。って、こんな話は置いといてだ。ソウスケ、お前は今日の夜どうするんだ?」


「ミレアナとはお互いによるまで別行動って話なんでもう少しブラブラと遊ぼうかなと」


「なら時間は大丈夫って事だ。そんで、昼間話していた内容はどうするんだ?」


「昼間・・・・・・あっ!!!」


昼間に教えて貰った暗黙のルールを思い出したソウスケは直ぐにどうするべきかを考える。


(そうだそうだ、完全に忘れていた。今日は夜まで別行動だからこのままチップを渡してバニーガールを抱くのは全然有りな流れなんだ。有りな流れなんだけど・・・・・・)


ソウスケとしてはその時間にザハークを一人にするのは自分勝手過ぎると思うので、そこをどうするべきなのか迷う。


(俺だったら一時間から二時間も気軽に出来る暇つぶしが無い世界でほっとかれるとか絶対に嫌だ。退屈過ぎて死にそうになる。だからそんな思いをザハークにさせるのは物凄い気が引ける)


それならザハークを一旦宿まで送るのか? 言って帰って来る時間を考えると面倒な為却下。

勿論、それをジーラスとバルスに頼むのも却下。


(まぁ、別に明日この街を出るって訳じゃ無いんだし、後日もう一回来るとするか)


息子が元気になりかけているが、今日は諦めようと思ったソウスケ。

だが、ザハークはソウスケがこの後どうしたいのかなんとなく解っていたので、助け舟を出す。


「自分の事は気にする必要は無い。一時間から二時間ぐらいは待っておこう」


「え、いやでもそんなに待ってたら暇過ぎるだろ」


「確かにそうかもしれないが、その程度の時間なら何も問題は無い」


自分の事は考えずに楽しんでくれと伝えるザハークにソウスケは感謝するが、やっぱり暇な時間を過ごすのは辛いだろうと思い、何か時間を潰す方法は無いのかと考える。


(娯楽が殆ど無いこの世界で、手軽に時間を潰せる方法は・・・・・・あっ、そうだよ。あれがあるじゃないか)


「ジーラスさん、カジノでトランプは買えますか」


「おう。ちょっと割高に感じるかもしれないけど、買えるぞ」


トランプを買えると知ったソウスケはホッと一安心する。


そして会計を終え、トランプを買い終えた後に三人は早速バニーガールに声をかけ始める。

ソウスケは軽くフロアを見渡し、好みの女性を見つける。


グラビアアイドルのスタイルを持ち、なおかつ高身長で美しいブロンドヘアを持つバニーをロックオン。

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