三百二十四話 夢のある暗黙のルール

ソウスケがディーラーの胸倉を掴み、難癖を付けようとしていた男を取り押さえてから十秒もせずに警備員の者がやって来た。


「ご協力ありがとうございます!!!」


「いえいえ、偶々近くを通りかかっただけなんで」


「あなたのお陰で従業員や他のお客様方が怪我を負わずに済みました。本当に感謝いたします」


警備員の黒服お兄さん達に深々と頭を下げられ、ソウスケはちょっと面倒な事になったと思いながらも礼を受け取る。


そして黒服の警備員達が男を両側から抑えて連れて行く途中で、自身が地面に叩き付けてから踏んで動きを止めていた男だけを鑑定で調べた。


(一応礼服は着てるけど、レベルや習得しているスキルを視る限り元冒険者ってところか。その元冒険者を余裕で抑えこんで連れて行く警備員・・・・・・ちょっと鑑定してみたいけど、カジノに喧嘩売りたい訳じゃ無いからやめておこう)


チップを片手に持ちながらソウスケはどのゲームで遊ぶか考える。

だが、横からシーラスが全く関係のない話をブッ込んで来た。


「なぁ、周りにいるバニー姿の姉ちゃん達をどう見る」


「どう見るって言われましても・・・・・・美人でエロいと思います」


ソウスケは見たままの率直な感想を答える。


「そうだろう。でだ、これはカジノに存在する暗黙のルールみたいなもんなんだが、あのバニーの姉ちゃん達に金を渡せば一晩相手にしてもらえるんだ」


「ッ!!! そ、それはマジですか」


「おう、マジだぜ!!!」


親指をビシッと立ててジーラスとバルスが断言する。

チップを渡せば本物のバニーガールが一晩相手をしてくれる。


思春期真っただ中でお盛んなソウスケにとっては息子が元気になる理由としては十分だった。


「そ、相場は幾らぐらいなんですか?」


「大体、銀貨数十枚が相場だ。カジノによって値段は変わるが、ここの鍛冶のには高レベルなバニーしかいないからな。銀貨五十枚後半ぐらいなら大体はオッケーする。金貨一枚で頷かないバニーはいないだろう」


「なる、ほど」


(前世の金額に変えればそりゃ一晩相手をして百万円だからな。そりゃ大概はオーケーするだろう)


男として有難い情報を得たソウスケ。

是非この街にいる間に利用した暗黙のルール。


(金貨一枚ってこの世界の基準で考えてもそこそこ高値段だが、それでもダンジョンに入って稼がせてもらってる金額を考えればなぁ・・・・・・それに俺にはエアーホッケーの副収入もあるし)


自身の総収入を考えれば屁でも無い。

そう考えたソウスケはいずれかのバニーにチップを渡す事を決意する。

しかしここでザハークが重要な問題をブッ込む。


「ソウスケさん。自分は従魔用の小屋で過ごしているから関係無いが、ミレアナとは一緒の部屋にいるんだろ。なら泊まっている宿に連れてくるのは難しいんじゃないか?」


「あっ!! そ、そうか・・・・・・確かにそれは難しいというか、普通に考えればあり得ないやり方だよな」


仲間の冒険者と同じ部屋に泊まっているのにもかかわらず、部屋にバニーを呼んで好意を開始する。

気まずいとかそういう話では無く、完全に常識が無い行為だ。


ならその時間だけミレアナに外で時間を潰して欲しいと頼むのか?


(ここは前世と違って時間を潰せる場所が多々ある訳じゃ無い。というか、流石にそんな事を頼むのは失礼というか・・・・・・匂いで部屋で何をしていたのかだってバレるだろうし)


バニーと良い事をしたいが出来ない、そういう結論に至りそうだったソウスケだったが、ここでバルスが助け舟を出す。


「歓楽街にはそういった目的の宿がたくさんあるから、バニーの日程が合う日か仕事終わりの夜に宿でやればいいんじゃないか? そうすればミレアナにも迷惑は掛からないだろ」


バルスからの名案? を聞いたソウスケはホッと一安心。

そんなゲスい会話が落ち着いたところで、最後の賭けとしてソウスケ達は剣闘場へ向かう。

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