三百二十三話 そんなスキルがあったら
(ディーラーが手札二枚の数を足して十六以下の数なら必ずもう一枚引かなければならない。このルールは結構有難いな)
まだ幸運を使わずに賭けているソウスケだが、勝率は七対三と悪くない。
ベットする金額はその時々で変えている。そのため、ちょっとした大金を失う事もあるがそれでも総合では確実に勝っていた。
そしてソウスケはブラックジャックに限らず、カードゲームを行う際に最強のスキルがあると思った。
(透視なんてスキルがあるのかは知らないが、もしそんなスキルがあれば自分の手札が悪ければ勝負を降り、自分の手札に加わるカード次第では勝負を続行。多分目的の様とは多々あるけど、こういったカードゲームには超有効だ)
透視と言うスキルは存在する。
透視のスキルを持つ者がカジノに通って金を毟り取った事もある。
しかしカジノ側も馬鹿では無く、圧倒的な勝率を誇る者に関しては対戦するディーラーが客の勝率を計り、上へ報告。そして鑑定を持つ者を雇って監視。
透視のスキルを持つと確認できれば、そのプレーヤーがゲームを行う際にスキルを使ったか否かが解るマジックアイテムを従業員を持たせ、テーブルの近くで待機。
そしてスキルを使ったと確認が取れれば透視を使用した客はこわ~~~い黒服のお兄さんたちに奥の部屋へと連れていかれる。
なのでソウスケも幸運のスキルを使い過ぎれば、目を付けられる可能性は十分にある。
しかしソウスケはその事を既に理解しているので、無茶苦茶に荒稼ぎしようとは思わない。
幸運を使わずにブラックジャックを初めて十何回。
ここでようやく幸運のスキルを発動する。
すると手札にエースや絵札のジャック、クイーン、キングが来る確率が少し上がった。
だが一回目の勝負の様に最初の二枚でブラックジャックが完成する事は無い。
そして手札があまりにも悪く、後数回カードを引くにはリスクが高いと思えばサレンダーをする事もあった。
しかしやはり幸運発動した甲斐があり、三回ほど数字の合計数がぴったり二十一となる。
ある程度ブラックジャックを楽しみ、金を稼いだソウスケは次のゲームへと移る。
ダイスやポーカーで遊び、またルーレットに戻ったりとカジノを遊びつくす事二時間。
偶に大金を取られてしまう事もあるが、それでも勝率が五割より高いソウスケは一歩、また一歩と重ねていく。
結果、金貨十二枚弱とかなりの大金を得た。
(一日でこれだけ稼げてしまったら、確かに普通の人なら自分は才能があると思い込んでカジノにハマってしまうだろうな。大きく負けても次勝てば取り戻せれるとか考えて借金しそうだ)
そんなリアルにイメージできる事を考えていると、通りかかった近くのテーブルで一人の客がディーラーの胸倉を掴んで怒鳴り散らし始める。
客の手元を見ればチップは一枚も無い。
(あ~~~あ。あの焦燥した顔を見るからに借金して得た金でギャンブルしたのか? ったく、楽しい雰囲気をぶち壊してくれるよな)
客を見てイラッとしたソウスケは持っていたチップをザハークに預けて客の元へ行き、肩を軽く叩く。
「あぁあああ!!!! 誰だ俺に障る奴は!!! 俺は今こいつのきたねぇーーー手口を吐かせるために」
「とりあえずあんたの心が汚い」
襟首を掴み、男を宙にフワッと浮かせる。
突然の浮遊感に男は戸惑うが、そんな事は関係ないとばかりソウスケは男の服を掴んで地面に優しく叩き付けた。
「がはッ!!!???」
男がそれなりにレベルの高い人間なのかどうか調べる前に行動を起こしてしまったので、やり過ぎてしまわないか心配だったソウスケだが、思いの外頑丈なことに安心する。
そして男が動けない様に、尚且つ内臓が潰れない程度の力で腹を踏みつけた。
「そこで大人しくしてろ、ギャンブル中毒者」
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