三百二十五話 高いし自分には必要ない
剣闘場に向かうと、そこは一般的なカジノのスペースとは隔離された場所にあった。
そしてドアを開けると外見がコロッセオの剣闘場が目に入る、と同時に大きな歓声がソウスケ達の眼に入る。
「相変わらずここは賑やかだな」
「賑やかってレベルじゃ無く、騒々しいの間違いでは?」
「かもしれないな。でもこんな声量はここじゃ日常茶飯事だぞ」
カジノの剣闘場には勿論、金を賭けなければ試合を見る事が出来ない。
そしてカジノが所有する戦う者達はどれも基本的にレベルが高い。
全員が高レベルという訳では無い。だがレベルが低い者達の戦う形相は尋常な物では無く、その必死さが観客の熱気を刺激する。
そして同レベル同士の者達しか戦わせないので、一方的な戦いになる事は無い。
「さて、中に入るぞ」
会場の中に入ると大きな掲示板にこれから戦う者の名前載っている。
それを見終えた者は観客席と案内板が掛かれた方へは向かわず、違う場所へ歩き出す。
「? なんであの人たちは観客席と書かれてる方向や賭けの管理をしている場所へ向かわないんですか?」
「十分前に戦う選手はあいつらが向かう場所で準備運動をしてるんだよ。それを観客はガラスの向こうから見る事が出来て、どの選手に賭けるかを決めるんだ。ちなみに特殊な鏡を使っているから選手の方からそと様子が見える事は無く、外部の音も入ってこない。驚くほど高いガラスを使ってるらしいけどな」
(前に住んでいた世界でもそんな鏡が合った様な気がするな。・・・・・・あっ、一個思い付いた)
一方から見え、もう片方から見えないガラス。それを使ってこの世界に新たな大人の店を生み出す案を思い付いてしまった。
(た、多分この世界の男の人も興味はあるだろう。とりあえずセルガ―さんに相談してからだな)
ピンク色な考えを一先ず置き、ソウスケは次の試合に備えて準備をする二人に鑑定を使う。
「・・・・・・? あっ、ようやくか」
鑑定を使って調べようとするが、中々ステータスが見えてこない事に疑問を感じるも、少し時間が経てばいつも通りに視ることが出来た。
(レベルはお互いに三十代後半で長剣使いと長槍使い。習得している戦闘に関係するスキルは結構高いな。長剣使いのなんて俺の方がレベル高いのに剣術スキルは俺と一緒のレベル七だし)
剣闘場で選手として働く者達はここをメインの職場としており、週に一度はダンジョンに潜ったり街の外のモンスターと戦ってレベルを上げる事もあるが、剣闘場で同レベルの相手とお互いに八割方本気で戦っている事もあって、必然と技術面が向上する傾向にある。
(どっちが勝つってのは正直予想しづらいな。レベルは誤差の範囲だとは思うが・・・・・・ザハークと同じく疾風の脚力強化スキルを持っている戦士に賭けるか)
「ソウスケはどっちに賭けるか決めたか?」
「はい。決めました」
四人ともどちらの選手に賭けるのか決め終え、早足で賭けの管理場に向かって申請する。
その時に職員が扱っていた道具にソウスケは興味を惹かれた。
(ボードに名前を書いてその横に賭けた金額と、どちら選手に賭けたかを記入してる。それをタブレットの様に動かしている・・・・・・もしかして人工的に造られて魔道具か?)
その予想は正しく、従業員が賭けを正確に管理して、紙のコストを減らすために造られた魔道具。
ただ、簡易的な内容しか書き込めないのと、値段が高いという事もあって、日常的には普及している魔道具では無い。
(この世界では便利そうな魔道具かもしれないけど、別にそこまで紙を手に入れるのが難しいって訳じゃ無いからな)
日本と比べれば手に入れるコストは高いが、それでも今のソウスケの懐事情からすれば大したダメージは無い。
その魔道具に直ぐに興味を無くしたソウスケはもうすぐ始まる剣闘試合に意識を集中させる。
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