三百十九話 過ぎると嫌味になる
軽食を食べ終えたソウスケは昼間から歓楽街へとやって来ていた。
「ここに来るのは初めてか?」
「いえ、この街では一回来た事があります」
「そうなのか。んだよ、やる事しっかりやってるって事だな!!」
「まぁ、俺も一応男なんで」
過去にフォルスと一緒に来た事を思い出し、自然とソウスケの息子が元気になり始める。
(待て待て待て落ち着け。今日は娼館に行く訳じゃ無いんだから静まるんだ息子よ)
この場所で息子が元気な状態であることは何ら可笑しい事ではないが、それでもソウスケは鋼の精神力で息子を抑える事に成功した。
「今日はカジノに行こうと思ってな。で、一応聞くが礼服は持っているか?」
「いや、持っていないです。というか、そもそもザハークはカジノに入れないですよね」
「そこは安心してくれ俺とバルスが責任を持って入れる様に伝える。な?」
「おう。俺らはカジノの常連だからな。そっちにも多少なりとも顔が効くんだよ」
ジーラスとバルスが自信満々に任せろと言うので、ザハークの入場に関してソウスケは二人に任せる事にした。
「礼装に関してはカジノで買う事も出来るが、ソウスケは懐に余裕があるか?」
「結構余裕ですね。この街に来る前ですけど、盗賊団を一つ壊滅させたんでそこそこあります。この街に着いてからもダンジョンの宝箱から結構な量の金を得られたんで」
「はっはっは。ここに来る前って事はまだソウスケとミレアナだけだったんだろ。相変わらず無茶苦茶するな」
「そうですね。ただ、頼れる仲間と相棒がいるんで、つい無茶しちゃんですよ」
現在の高レベルでいられるのは神から貰ったスキルのお陰だとソウスケは思っている。
この最初に与えられた十六のスキルが無ければ下層から地上へ戻るのは不可能だったと。
どんなに強いモンスターを倒しても自己評価は高くない。
「謙虚なのは良い事だが、謙遜が過ぎるとソウスケが嫌いな面倒事がやって来るかもしれないぞ」
「・・・・・・そう、かもしれませんね。解りました」
「ならいい。もう少し歩けば着くからな」
そして歩くこと約二十分、ようやくカジノの前に辿り着いた。
「なんか、カジノって雰囲気が無い訳でもないんですけど、ちょっと違う建物の様に見えなくもないですね」
「だよな。俺も最初見た時は戸惑った」
木の伐採量が多いこの街の鍛冶のは外装に良質な木が大量に使われていた。
「安心しろ。中身はしっかりとカジノになってるかからな」
「わ、わかりました。それじゃ、自分達は一旦ここで待っといたら良いんですよね」
「おう。俺達がカジノの従業員に話してくるから待っといてくれ」
二人が待つ事三分、ジーラスとバルスが親指を立てながら戻って来る。
「大丈夫だってよ。けど、一応暴れる事が無いか確認させて欲しんとよ」
「暴れる事が無い、か。大丈夫そうか?」
「ソウスケさんに危害を加える事が無ければな」
主人に迷惑が掛からない様に極力我慢する努力はする。
が、もしソウスケに危害を加える様な者がいれば容赦なく拳を振り抜く。
そのスタンスは変わらないザハーク。
「それは向こうも解ってるさ。従業員の前でちょっと話すだけだ」
入り口近くに向かい男性の従業員と向かい合うザハーク。
ジーラスの問いに答えた言葉と同じ言葉を従業員に話す。
従業員はその内容よりもオーガであるザハークが喋った事に対して驚き少しの間固まってしまった。
だが直ぐに元に戻り、多少の確認事項を話す。
確認は終わり、四人は更衣室へ向かいその場で代金分を払って礼服に着替える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます