三百二十話 客は見抜く

「・・・・・・なんか、ザ・馬子にも衣裳って感じだな」


ソウスケは礼服に着替え終え、鏡の前で今の自分を見てそう思えた。

髪型は変わっていないが、それでも服装が何時もの冒険者スタイルでは無いので、それだけで雰囲気がガラッと変わる。

そしてソウスケは本来ならビシッと決める礼服を着付けの従業員に崩してくれと頼んだので、少し不良スタイルとなっている。


「ザハークは中々似合っているな」


「ソウスケさんも中々似合いっているぞ。その格好なら貴族だと言い張っても通用するんじゃないのか?」


「そんな事は無い。服装は変わっても顔の幼さが消える訳じゃ無いからな」


(ザハークは・・・・・・ぶっちゃけ後サングラスを装備すればザ・ヤクザかマフィアになるよな)


ソウスケから見た今のザハークの格好は確かにカッコよく見えるが、見る者によっては厳つさと威圧感により逃げ出してしまうかもしれない。


「おう、ソウスケもシュラも中々似合ってるじゃねぇーーか」


「早速着崩してるんだな。やっぱあんま俺らにはビシッとこういった服を着ても苦しく感じるだけだからな」


ジーラスとバルスも既に礼服に着替えており、二人もソウスケとザハークと同様に着崩しているため、ガラの悪い連中だと思う者がいる見た目となっている。


だがソウスケは二人の見た目がワイルド系なので、変にビシッと決めているよりは着崩している方が似合っていると感じた。


「お二人も似合っていますよ」


「ああ。そういった服装もまた味があると感じた」


「そうか、そいつは嬉しいぜ。まっ、褒め合いはここらで終わらせてゲームを楽しもうぜ」


着替え室から離れ、大勢の客が楽しみ、ある者は人生を賭けて勝負に挑んでいる場所に到着。


「ここが、基本的に冒険者から貴族まで立場関係無く賭けという娯楽を楽しむ、一種のステージだな」


「一般市民が遊べるカジノもあるんだが、ここはこの街で一番大手の店だから一般市民は殆ど来れないんだよ」


バルスの質問にソウスケは何となくだが理解する。


(ここのいる客の身に付けている物やギャンブルに使っているチップの量? 正確な事は解らないけど、それらを考えると一般市民の給料でこんなところに来てやらかしたら一発でアウトだろうな)


戦う前から負ければ崖に落ちそうな状況によっぽどの馬鹿か失う物が無ければ人は挑もうとしない。


「ブラックジャックかルーレットにポーカー、ダイスとたくさんのゲームがあるぜ。まっ、一番熱気があるのは剣闘だけどな」


「冒険者同士が戦うんですか?」


「冒険者が稼ぎとして参加する事もあるが、大抵の場合はカジノが専属として雇っている者達が戦うんだよ。まっ、本当に稀にだが騎士が戦ってることもある」


「えっと・・・・・・それは中々にヤバいのでは?」


「俺も中々にヤバいと思う。もし負ければ自分の名誉だけでは無く、仕えている貴族の名に泥を塗る事になるんだからな」


ソウスケの思った通り、騎士が剣闘に参加するのはかなりハイリスクだった。

しかしカジノが側も貴族と関係を悪化させたくないため、対戦相手の者に手加減するように言うのではと思ったが、バルスがそれを否定する。


「カジノには基本的に固定客がいるから剣闘に夢中な人達は大体だが鑑定系のスキルを持っていなくても選手の強さが解るんだよ。つまり騎士相手に八百長の様な真似をすれば、カジノ側だけでなく貴族側にも不利益を与える事になるんだよ」


「あぁ、なるほど。確かに両方にとって良い結果は無い訳ですね」


「ただし、挑んで来た騎士と同等の力を持っている選手を相手として選ぶ。客たちも八百長の試合が見たい訳では無いが、一方的な戦いを見たい訳でもないからな」


「それもそうですね。とりあえずルーレットをやってみたいと思います」


遊ぶゲームを決めたソウスケは金をチップに変え、いざ大人の楽しみに挑戦する。

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