三百三話 自分が持っていても

セーフティーポイントを見つけ、夕食を終えたソウスケは楽しみに取っておいた宝箱の開封を始める。


(今更ながらこの宝箱を開ける感じ、遊〇王のパックを開ける感覚に似てるな。こっちはパック・・・・・・では無く箱を手に入れる為にはかなり命賭けだけどな)


懐かしい記憶を思い出しながらもソウスケは雷の魔力を応用してササッと罠を解除してしまう。


(・・・・・・一つ、解除を失敗すれば爆発するって罠があったな。やっぱり物騒な罠が多いな)


罠の種類にソウスケが苦虫を潰したような表情をしている横で、その手際の良さに感心した表情になる。


「ミレアナは前にも俺の解除方法を見たんだからそんな感心する様なもんでも無いだろ」


「いえいえ、宝箱やダンジョンの中に存在する罠とはまず冒険者ギルドの斥候専門の講習を受けて罠解除のスキルを習得し、実戦で経験を得て地道に上達していくものです。パーティーにそういった技量を持つ者がいないパーティーは罠解除を商売にしているお店に頼むらしいですが、金額は結構馬鹿にならないと聞いた事があります」


ソウスケは軽々と罠を解除している訳では無い。

頭の中にパズルのイメージが浮かび、それを解くといった感覚で罠を解除している。

ただ、直感的にミスったら駄目な瞬間が分り、危機を回避しているに過ぎない。


(パズルとか暗算をしてるみたいな感覚なんだよな。中の物が高価になるにつれて難易度は上がってるんだけど、日本で学生やってた時に暗算が得意だったからか、結構出来るんだよな。ヒヤッとする場面は何度かあるけど)


もう少しゆっくりと安全に解いた方が良いかもしれないと思いながらソウスケは五つの宝箱を空けていく。


「・・・・・・もう、俺にとってこの光景だけで夢があるんだよな」


他の四つと比べて小さめの宝箱には銅、銀、金貨がぎっしりと詰め込まれていた。

そして奥の方に白金貨が二枚。


それらを見ただけでソウスケのテンションは上がる。

現在のソウスケの総資金を考えれば今目の前にある金額よりも多いが、そういう問題では無かった。


「まぁ、ソウスケさんの気持ちは解らなくもありません」


「これで美味い料理が喰えるんですね。それなら自分もソウスケさんの気持ちが解ります」


ザハークの考えは少しソウスケと違ったが、全員がぎっしりと金が詰まった箱に対して夢があると再確認した。


「んで次の箱は・・・・・・今度はポーションがぎっしりだな。レア度が五が殆ど中には六もあるな。というか・・・・・・殆どが状態異常を回復させるポーションだな」


「これはダンジョンからのメッセージかもしれませんね」


「これから先に階層でモンスターが状態異常系の攻撃を放ってくるのが今まで以上に多くなるって事か」


これらのポーションは地上に戻って金に換える事無く、直ぐに飲めるように身に付けて下へ進め。

ミレアナはこの宝箱に入ってるポーションにそういった意味があると思えた。


(ダンジョンからのメッセージか。そういえばギルドから買ったダンジョンの情報に三十階層以降の宝箱には状態異常回復のポーションが入っている事が多いって書かれてあったな。ご丁寧にホルスターまである)


上等な物だったので売ればそこそこするかとソウスケは思ったが、ミレアナのホルスターが無かったのを思い出し、ミレアナに渡す事にした。

ソウスケからホルスターを渡されたミレアナは大事そうに受け取る。


それを見てザハークは特に嫉妬という感情は無かった。

学習能力が高いザハークにはまだゴブリンだった時から毒などの反応に敏感だったため、グランドスパイダーとの戦いでも妨害用に吐かれた液体がどんな効果を持つのか、自身にどれ程の効果を持つのか直ぐに直感的に理解した。


(自分があの様な物を見に付けていれば戦闘中にうっかり壊してしまうかもしれない。ならばソウスケさんとミレアナさんが持っているのが一番良いだろう)


宝箱から出る物に対し、ザハークとしては自身が装備できる手甲や脚甲に大剣等が欲しいと思っていた。

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