三百四話 ・・・・・・交渉道具だな

「これは・・・・・・料理道具、で良いんだよな」


「そうですね。これは簡易的なキッチン代わりになる魔道具です。使用するときは自身の魔力を使うか、この穴が開いている部分に魔石を入れれば誰でも使えるようになります」


流しとコンロが二つある野営などで使える魔道具。

需要は高く、多少の料理が出来る冒険者からは喉から手が出る程欲しい魔道具なのだが、ソウスケとしてはそこまで欲しい物でも無かった。


「別に火も水も俺は出せるから正直あまり興味は無いな」


魔力から作られた水は普通の水とは違い、少し違和感を感じる味ではあるが飲めない訳では無い。

なのでソウスケは仲間と自身も含めて水魔法が使えるので売ったら多少の金にはなるかな、っといった程度にしか考えていなかった。


「そうなんですか? でもこの魔道具から出される水は当たり前ですが飲める水なのでダンジョン内ではかなり重宝されると思いますよ」


「それもそうか。火や水の燃料はモンスターを倒せば手に入るんだもんな。そっか・・・・・・なら売るのは少し待とう。良い交渉材料になるかもしれないしな。さって四つ目の宝箱だ」


ソウスケがゆっくりと四つ目の宝箱を開ける。

すると中には槍・・・・・・に見える杖が入っていた。


「これは・・・・・・杖なのか?」


「そ、そうですね。先端の形状からして槍に見えなくもないですけど、これは杖ですね」


「随分と珍しい杖の形ですね。もしかしたら接近戦でも多少戦えるように造られてるのでしょうか?」


ザハークの考えにソウスケはあり得るかもしれないと思い、鑑定を使って杖を調べる。

その結果・・・・・・ザハークの考えは正しく、あまり力の無い所有者に対して考慮された魔道具だった。


「ライファーロッド、レア度五。持ち主の魔力操作の技量を上げ、雷と火の魔法を使う時に威力と速さが上がる。そして物理攻撃を行う時に持ち主の腕力を上昇させる。ってな感じだ」


「かなり有能な魔道具ですね。魔法メインの方の不利な部分を補うには十分かと。魔法に関しての補助効果も持ち主によっては有難い効果だと思います」


確かに有能な杖。平均レベルの魔法使いからすればそこそこの金を払っても欲しい杖。

しかしこれまたソウスケ達には不要な道具であり、魔道具の簡易キッチンと同じく交渉道具として保管しておくことになった。


そして最後のソウスケが使える物と直感的に感じていた宝箱を開けた。


「見た目は結構良いデザインの剣だな。しかも二刀流」


宝箱の中には深緑の色をメインにした二つの長剣が入っていた。


「これは一目で名剣だと解らせられる魔道具ですね」


「・・・・・・・・・・・・」


「急に黙り込んでどうしたんだザハーク? この二つの剣から何か嫌な雰囲気で発せられているのか?」


ソウスケとミレアナは二つの剣から全く嫌なオーラは感じないので、特別な呪われた武器では無いと思っているのだが、もしかするとモンスターであるザハークに何か害のある剣なのかと不安に思う。


「いや、そういう訳では無い。ですが、昔冒険者と対峙した時に相手が持っていた武器から発せられる雰囲気と似ていたんです。その時に自分にとってはとても嫌な雰囲気でした。本能的にあの剣で斬られたら不味い・・・・・・そう思える剣でした」


「つまり今のザハークにはこの二つの剣から嫌な雰囲気が発せられているが、それは自分に向けた物では無いって事か」


「そういう事か。まぁ、どのような効果があるかは鑑定しなければ解りませんが、ミレアナさんのおっしゃる通り業物だと言えるのは確かでしょう」


ミレアナとザハークからの太鼓判を押された二つの長剣にソウスケはどんな効果があるのかワクワクしながら鑑定を使った。

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