三百二話 使える物

動きを阻害する為に放たれた麻痺液にザハークは全力の横蹴りを放った。

勿論ザハークの位置からグランドスパイダーに横蹴りが当たる事は無い。


しかし横蹴りによって発生した風圧は麻痺液に直撃し、広範囲にわたって動きを阻害する事は出来ず小範囲に収まり、グランドスパイダーの作戦は完全に当てが外れた。


だが麻痺液による妨害を防がれた事にグランドスパイダーは焦る事無く、自身の視界も覆う事になるが相手の攻撃妨害する事を第一に考えた結果、複数のロックエルプションを発動する


噴火したような形で岩槍が地面から現れた事でザハークの進行を防ぎ、ミレアナの攻撃を予測しやすい状況を造った。

そして次の攻撃を準備しようとした時に噴火形状の岩槍が切断される音にグランドスパイダーは即座に攻撃から防御に移す。


ザハークが胴回し蹴りの勢いで放った斬撃に粘着質の糸を大量にぶちまけ、切断力を無くす。

だがそうしたとしても勢いが衰える訳では無いので前足で受け止めるが、それでも後方へ押し飛ばされてしまう。


残りの魔力が少なくなったことで賭けに出ようとしたグランドスパイダーだが、それをミレアナが許さなかった。


大きく跳躍し、高所からの風矢。

それはもはや風では無く竜巻の槍。


上空から放たれた竜巻の槍を躱すのは無理だと判断して防御態勢を取る。

ザハークの胴回し蹴りによる斬撃を防いだ時と同じく粘着質の糸を放ち、その上で即興で造ったため耐久力は低いが岩の壁を質より量と言わんばかり展開する。


だが・・・・・・その結果も虚しく、糸は全て斬り裂かれ、岩の壁は荒く突き抜けられグランドスパイダーの脳天を貫いた。


重要な器官を失っても少しの間は動く事が出来る昆虫系のモンスター。

しかし魔力を使い果たしたグランドスパイダーにはもう出来る事が無く、そのばから一歩も動く事無く崩れ倒れた。


「二人共結局傷を負う事無く倒せたわけだけど、どうだった?」


「非常に頭が回るモンスターだったと思います。私一人だけでは無傷で討伐するのには難しかったかと」


「自分も同じ考えです。相手の攻撃を制限する事に長けていたので面倒な相手でした」


面倒な相手、無傷で討伐するのは難しい。

そう言っているが、一人で倒せないと言ってないあたり、二人が謙虚な言葉を使いながらも絶対に一人でもグランドスパイダーに勝てる自信を持っていると解らせられる。


「ソウスケさんも大量にいたのに瞬殺でしたね」


「別に一体一体は大して強くないからな。攻撃を合成して放つのは驚いたけど、こいつらがいるから大丈夫だった」


グラディウスを片手で回し、蛇腹剣を指輪状に戻しながらソウスケは嬉しそうに口角を上げる。


「ソウスケさん、解体は後にしますか?」


「そうだな。解体は後回しにしよう。さて、宝箱は部屋を出てから夜の楽しみに取っておこうか」


今までの道中で得た宝箱やボス戦で得た宝箱からも使える物は手に入ったが、今回はそれらよりも良質な物が手に入る。

そんな予感がなんとなくしたソウスケ。


本当は今すぐ開けたいと思っていたが、一度夜に開けると言ってしまった手前、直ぐに開けるのは恥ずかしかったので開けたい気持ちをグッと堪えた。


そしてボス部屋から出るとまだ太陽は上がっていた状態なのでソウスケ達は少しだけ探索を進める。


三十一階層からの地形は二十一階層から三十階層までと変わらない密林だが、ミレアナは雰囲気が前の階層と比べて多少禍々しくなっているように感じた。


だからといってソウスケ達の勢いが止まる事は無く、その日の内に三十一階層のセーフポイントを見つけて野宿に移る。

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