二百九十一話 戦える秘密
「全く、歳に似合わない雰囲気を持った冒険者がいるもんだね」
マムはソウスケから買い取ったスパイロードをじっくりと眺める。
「本来は蜘蛛系のモンスターの糸を使って労力の代わりに魔力を消費して森の中での自在な移動。それだけを考えていたんだろうけど、対象の拘束や行動の妨害にも役立つ。副次的な効果とはいえ大した能力だね」
通常のポーションや解毒薬以外にもマジックアイテムを造るマムだが、ソウスケが作ったスパイロードのような効果を持つマジックアイテムを造ろうという発想は無かった。
「若い者の発想は違うねぇーーー。後このマジックアイテムの面を使っての防御。これも良いアイデアだ。それを考えればここまで大きいのも納得。今日は少し時間的にあれだから、明日にでも試運転と行こうかしら」
錬金術の腕は確かであっても見た目は普通の老婆。大体の者がマムの発言を聞けば何を言っているんだこの婆さんはという反応になるだろうが、マムは冗談では無く本気で明日ダンジョンに潜るつもりだ。
その理由はマムの持つスキルに理由があった。
若返り。それがマムが高齢と呼べる歳になってもダンジョンへ潜れる秘密。
魔力を消費する事によって一時的に任意の年齢へと戻る事が出来る。
まだスキルのレベルが低いうちは消費魔力が大きいがレベルが上がれば徐々に消費魔力量は減り、若返りのスキルを解いた後の疲労感も少なくなる。
「そうと決まれば明日の準備をしないとね」
久しぶりの狩りにマムのテンションは上がり、客が来ていない事を確認して店の奥へと向かった。
「・・・・・・てな事があった」
「それはかなり良い事、ですよね?」
「そうだな。かなり良い事だと思う。色々と疑問に思う事はあったが」
結局ソウスケはマムに鑑定を使わなかったのでどうしてマムの年齢で戦おうという気持ちがあるのか解らないでいた。
(ムキムキなマッチョ爺さんがそういう事を言うなら十分に解るんだが、明らかに戦え無さそうな優しそうな顔をした婆さんがどうやったら戦えるんだ? 元々冒険者だとして、スタミナを増加出来るスキルを持っていたとしても・・・・・・やっぱりダンジョンを潜って戦うのは辛いよな?)
宿に着いてからもソウスケのモヤモヤは消えない。
今になってソウスケはマムに鑑定を使ってその理由を調べれば良かったと少し後悔する。
「それで明日からの予定はやはり上層に存在するかもしれないイレギュラーなモンスターの討伐ですか?」
「おう、一応ザハークと出会った階層に行ってそのイレギュラーのモンスターを探す」
ソウスケとしてはそのイレギュラーな強さを持つモンスターのが生息する場所に幻の果実が存在するのではと考えていた。
そしてもし・・・・・・万が一そのモンスターと会話が出来るなら争いを避けてその果実を手に入れたいと計画している。
(そりゃやっぱりイレギュラーな強さを持つモンスターの素材は欲しい。けどそのモンスターがいるお陰でその幻の果実・・・・・・もしくは貴重な花? が増えるのかもしれないし。もし仮にそうだとしたら今後の事を考えると殺して全て頂くのは得策では無い)
イレギュラーな強さを持つモンスターを倒せば一度に得られる量は多いが、その後を考えれば総合量は倒さず話し合いで得られる方は断然多い。
「んで、イレギュラーなモンスターに関しての探索が終わった後は一回休憩してから下層へ潜る」
「そのまま最下層のボスの元まで行きますか?」
「ん~~~~・・・・・・一応そこまで行こう。それから一旦戻って休息して、それから今度は最短距離と時間で最下層のボスの元まで降りてボスに挑む。そんな感じだ」
「分りました。それではおよそ三週間後に最下層のボスに挑むという予定ですね」
「大体そういう流れになると思う」
予定が完全に決まったソウスケ達は腹を慣らしながら食堂へと降りていった。
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