二百九十二話知っていたとしても
ザハークと出会った階層にやってきたソウスケ達はザハークの記憶を頼りに、モンスター達が二度と帰ってこなかった方角に向かって歩き続けていた。
「この方角に向かったモンスターの中にはコボルトの上位種もいたと思います。後はスナッチバードもいたかと」
「あぁ、あの盗鳥か。一か月ぐらい前に俺らの昼食を盗ろうとしてたな。というかこの階層にコボルトの上位種って・・・・・・もしかしてそれもちょっとしたイレギュラーモンスーか?」
決して珍しい訳では無い。しかしソウスケ達が現在探索している階層の中では上位に位置するであろう実力を持つモンスターでもある。
「ダンジョンの中で生まれてから戦いに明け暮れ、一定期間生き延びた個体は割と上位種へと進化しているモンスターはそこそこいますね」
「そうなのか。けどそこまでの数を見ないって事は、進化する前に冒険者に殺されるってだろうな」
ソウスケの予想は正しく、上位種へと進化する前に大抵のモンスターは冒険者の手によって殺されてしまう。
「ソウスケさん、ようやく出発地点に着きましたね」
「おう。こっから幻の花か果実を探す訳だが・・・・・・とりあえず片っ端から探すしかないか」
一つの階層の中とは言え、山はそこそこな大きさを持つ。
この広さを一日で全て調べ尽くす、又は運良く一日目で目的の物を見つけるのは不可能だと思い。アイテムボックスの中から取り出した紙とペンでマッピングを始めた。
ソウスケにそんな技術やスキルある訳では無いが、次回の探索の事を考えると下手なりにでもマッピングした方が良いと思い、ソウスケは周りの風景を見ながらマッピングを開始する。
そんな無防備な状態になるソウスケを、お手製の壺の中に入った石を使ってミレアナとザハークが襲って来たモンスターを投擲で倒す。
稀に少しイレギュラーなモンスターが存在する。そんな階層の山だがソウスケ達を襲って来るモンスター達はミレアナとザハークの石による投擲で殆ど一撃で沈んでしまう。
投擲で倒したモンスターは一応魔石は回収し、素材が使えそうだなと思ったモンスターだけ素材を回収する。
そんな状況が延々と繰り返され、その日の探索は終了した。
「特に珍しいモンスターはいなかったな」
「そうですね。草原と比べて昆虫系のモンスターが多少多いというのはありましたが、違いといえばその程度ですね。そういえば聞き忘れていたのですが、今回の幻の果実か花の探索は何日程行うのですか?」
何日間探索を続けるのか。そううう尋ねられたソウスケは直感的に幻の果実か花は見つかると思っていたので探索期間を全く考えていなかった。
「そうだなぁ・・・・・・長くて五日間ぐらいだな」
「五日間ですか。妥当と言えば妥当な期間ですね。しかしギルドから買ったダンジョンの情報に山の情報が載っていないとなると、この山一帯の探索は全く行われていないのかもしれませんね」
「いや、そんな事はないと思うぞ。確かに山自体はそこそこ広いから正確にマッピングするのには手間がかかる過ぎるだろう。でも冒険者達がこの山を探索していないって事は無い筈だ」
今日一日の探索の中でポーションの材料になる薬草の群生地あった。
そこそこな数の薬草があったので、最終依頼や個人での取引材料などを考えれば採り過ぎない限りは一定間隔で採集等の計画は立てられる。
他にも果物が生っている木々も草原のエリアと比べて多々あったため、ソウスケは絶対にギルドにこの情報は流していない冒険者が少なからずいると思っている。
「冒険者がギルドに報告していない情報、それらをゲット出来るだけでも十分の収穫だ」
そう言いながら本日採れたての過日をソウスケは口に含み、幸せそうな表情で噛みしめる。
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