二百九十話 あれよこれも
「にしても、あんたは冒険者としての能力以外も優秀そうだね。鑑定のスキルも持っている様だし・・・・・・もしかして錬金術のスキルも持っていたりするのかい?」
「は、はい。そうですけど・・・・・・なんでそこまで解るんですか?」
自身が鑑定のスキルを持っている事はバレるかもしれない。そうソウスケは思っていたが、錬金術のスキルを持っているとまで見抜かれるとは思っていなかった。
「なんでと言われてもねぇーーー。伊達に長生きしていないって事ね。あんたの私が作った解毒薬を見て驚いた時の表情が単に鑑定を使って内容を見て驚いた、それだけでは無いような気がしたの」
「な、なるほど。それは確かに長年生きてきた経験によって解る事ですね」
(そんな細かいところなんて普段から人間観察をしてるような人でないと解らない部分だろ)
少なくともソウスケには同じことが出来ない。
だが同じ事が出来るようになるまで時間がかなりかかりそうなので出来るようになりたいとも思わなかった。
「冒険者をしながら同時に錬金術をねぇ・・・・・・偶にそういう冒険者要るけど、あんたみたいな強さを持ちながら錬金術を使っている冒険者は初めてかもしれない。良かったらあんたの造った物を見せてくれないかい?」
ソウスケは前にも似たような状況があったのではと? と思いながらも目の前のポーションを大量に造れる人が自身の作品を見てどう思うのかは気になったのでアイテムボックスの中からスパイロードを取り出した。
「!? あんた・・・・・・いや、そこら辺は解っているんだろうね」
「はい。流石に周りに人がいる前ではおいそれと使いません」
中身は強くともソウスケのランクを考えれば自身の物にしようと考える馬鹿は大勢いる。
もしかしたらそれを解っていないのかとマムは一瞬思ったが、ソウスケの表情を見てそうではないのだと確信する。
そしてスパイロードをマムに渡したソウスケはどういう効果を持っているのかを軽く説明する。
「へぇーーー・・・・・・あんた、中々面白いマジックアイテムを造るじゃないか」
「あ、有難うございます」
「森の中を素早く移動出来て相手の動きを妨害、又は束縛する事も出来る。そしてこの側面で攻撃を防ぐ事も出来る・・・・・・いい、良いね。是非欲しい」
そう言うとマムは一旦スパイロードをカウンターに置き、店の奥へと向かう。
そして三分ほどで戻ってきた。
するとマムは両手でポーションが三十程と小さな丸薬も同じ三十程入った箱を持っていた。
「こいつと後これを払うからそのスパイロードを売って貰ってもいいかい」
「いや、あの・・・・・・ちょ、多くないですか?」
まずは白金貨が三枚。この時点で仰天ものの値段。
エアーホッケーを始めて買い取って貰った時の値段は白金貨五枚だったが、今回もソウスケにとっては十分驚嘆に値する金額だった。
そして箱に入ったポーションと丸薬の価値も並みの物では無いとソウスケには解った。
「いいかい。このスパイロードはあんたが思い付きで造った物だとしてもおそらくこの世にはまだ無いマジックアイテムだ」
(そりゃこの世界には無い発想からインスピレーションを得た作品ですからね)
掌から糸を伸ばし、街中を自由自在に飛び回るス〇イ〇ー〇ンの能力を元にした作品。
ソウスケとしてはマムの言う通り完全に思い付きの作品だった。
「これを私が使うって理由もあるけど、この世にまだ知れ渡っていないマジックアイテム。それだけでこのスパイロードにはこれだけの価値があるのよ・・・・・・って自分で言っていて不安になってきた。ちょっと待っていて」
もう一度マムは店の奥へ行くと一つの絨毯を持ってきた。
「こいつはフライカーペットってマジックアイテムさ。こいつに魔力を流せば重さの制限はあるけれど、上に乗って空を飛ぶ事が出来る」
「そ、それは・・・・・・中々夢のある道具ですね」
箒に跨って空を飛ぶ、絨毯の上に乗って空を飛ぶ。
どちらもソウスケが思い描く魔法使いの乗り物。
(でも絨毯は座っていても特に何もないけど、箒に跨って空を飛ぶ場合は股間がかなり痛そうなんだが・・・・・・多分痛いよな?)
空気抵抗を考えればどちらも絨毯にも多少のデメリットはあるが、それはソウスケにとって些細な問題。
「これもあなたにあげる。これでどうかしら?」
「えっと・・・・・・お、お売りします」
こうしてスパイロードをマムに売ったソウスケ。
そしてソウスケは店を出てから一つ疑問に感じた言葉を思い出す。
(私が使う・・・・・・そう言ってたよな。あれは・・・・・・そのままの意味なのか?)
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