二百三十八話進化!!

ザハークが放った火を纏った短剣は見事にフォレストオーガの虚を突いた。


短剣はフォレストオーガの顔を貫く事は無かったが、それでも刃の部分は十分に脳の位置まで突き刺さっている。


「ゴ、ガァ・・・・・・ガ、」


最後の魔力を振り絞り、渾身の技を打ち込もうとした筈なのに急速に意識が落ちていくフォレストオーガ。

右手に集めていた魔力は霧散し、前のめりに倒れていく。


「・・・・・・完全に終わったな」


「そのようですね。お疲れ様ですソウスケさん、ザハーク」


「オフタリモオツカレサマデス」


ザハークは何時も二人に礼を言う時以上に頭を下げる。

二人の援護が無ければ今回の様にスムーズに倒せないと解っているため、より感謝の念が籠った礼をする。


「さてと、まずは倒し終えたんだし解体をしてしまうか。でもその前に・・・・・・ザハーク、こいつの魔石を喰っちまうか」


「ッ!!! ・・・・・・イ、イ。コンカイフォレストオーガヲタオシタノハジブンノジツリョクダケデタオシタワケデハナイノデエンリョシマス」


ザハークからの返答はソウスケが予想していた通りの内容だったが、ソウスケはザハークの違和感を見抜いていた。


「お前、今相当昂ってるだろ。俺が思うに・・・・・・それは進化する前兆なんじゃないかと思う。そのチャンスを、態々ふいにする必要は無いだろ」


フォレストオーガの胸部から魔石を取り出しザハークの前に差し出す。


「ほら、確かにお前だけの力で倒した訳では無い。それでも、お前も戦いに参加していたのは事実だ。俺やミレアナがこの魔石を何かに利用する権利があると同じように、お前にもこの魔石を喰う権利がある。そんで俺はまた次の機会にフォレストオーガが見つかればそれで良い。ミレアナはどうだ」


ミレアナへソウスケは考えを訊くが、それに応える様にミレアナは首を横に振る。


「私も特に今は必要としていないので、ザハークが喰ってしまって構いませんよ」


「・・・・・・ワカリマシタ」


二人からの許可を貰ったザハークはソウスケからフォレストオーガの魔石を受け取り、口に放り込んで噛み砕き、飲み込む。

するとザハークの体に直ぐに変化が起きた。


体がどんどん大きくなり、着ていた服が破れてしまう。

手足はどんどん太くなりがっしりとした筋肉が付く。

そして額からは二本の角が生えて来る。


「オーガに進化した・・・・・・あれ? なんか、思ってたよりもシュッとしてるな」


オーガへと進化を果たしたザハークは一般的なオーガの様な筋骨隆々な体型では無く、無駄な肉を削ぎ落としった細マッチョな体型となっている。


「一般的なオーガとは違うようですが、私はザハークの方が一般的なオーガより頭二つほど強いかと思います」


「それは俺も思う・・・・・・ザハーク、そこら辺の木を一本素の力で適当に殴ってみてくれ」


「分りました」


(・・・・・・すっげぇ流暢に話すようになったな。これも進化した影響か?)


ザハークの話し方は普通の人の発音と全く変わらなかった。

その事実にミレアナもポーカーフェイスを崩さないが、少なからず驚いていた。


(高位の竜種は普通に私達が理解出来る言葉を話すようですが、おそらくそのレベルとザハークは同等でしょう。つまり強さも将来的には竜種程まで上がると思っても良さそうですね)


ミレアナがザハークの将来を期待していると、ソウスケの指示通りザハークは近くの木を軽く殴りつける。


「・・・・・・わぉ。予想以上で期待通りって感じか?」


ソウスケ達が探索中のダンジョンに生えている木は普通の木とは違い、耐久性は一般的な木と比べて数倍高い。

そんなダンジョン産の木をザハークは難無く折ってしまった。


「正直、自分でも戸惑いを感じます」


「まっ、いきなりそんなパワーアップしたら戸惑っても可笑しくはないか」


「それならザハークの当面の課題は力の調節ですね」


進化して直ぐに明確な課題が決まったザハークは自然とやる気が溢れ出し、鼻息を荒くして心を昂らせていた。

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