二百三十九話ぐしゃっと

ザハークが進化してから数日間、ソウスケ達はダンジョンを探索し続けていた。

ソウスケとミレアナはモンスターを倒しつつ、珍しい植物などの採集や宝箱の捜索。


ザハークはひたすらモンスターを丁寧に殺す訓練を行っていた。

今でこそザハークはモンスターの素材や魔石を無駄にする事なく倒す事が出来るが、当初は殴りつけた部分の原型が分からない程潰し、蹴りを入れれば勢い余って体を真っ二つにしてしまう。


素材や魔石が何とか使える状態になっている物も無くは無かったが、それでも圧倒的に使い物にならなくなってしまった素材や魔石が殆どだった。

それでも戦いを何回何十回と続けて行く内にようやく力加減を覚えた。


「今は十九階層か・・・・・・そろそろ一旦上に戻ろうかと思うんだけどどうかな?」


「私は特に要望は無いので構いませんよ」


「自分もモンスターを倒す力加減を覚えられたので特には」


「それじゃ今日一晩寝て明日十階層を・・・・・・いや、このまま二十階層まで降りてから柱を使って地上に戻るか」


地上に転移できる柱までの距離を考えると二十階層の柱の方が圧倒的に近かった為、ソウスケは即座に予定を変更した。


「にしても、宝箱の中から伸縮性が有る服が出てきてくれて良かったな。もしそれが無かったらローブを巻くしか隠しようがないからな」


ザハークが普通のオーガよりも小さいとは言っても、ミレアナやソウスケよりは普通にデカい。なのでホブ・ゴブリンからオーガへ進化した際に来ていた物は弾け飛び、大事な物を隠す場所は体全体を覆うローブしかなかった。


「まさか魔術師が扱う用のローブがパンツ替わりになってしまうとは・・・・・・あっ、そういえば盗賊達のアジトから奪ったベットが有りましたよね」


「あったな・・・・・・あっ、そうか。シーツをパンツ替わりにすれば良かったか。でも、戦ってる最中に直ぐにボロボロになりそうじゃないか?」


大事なところを隠す事が出来ても、直ぐに破けてしまっては唯の無駄遣いになってしまう。


「それもそうですね。それを考えれば従魔でも着れる洋服が見つかって一安心ですね。性能としてはそこそこな服ですし」


宝箱の中から見つかった服一式は耐久性が高く、汚れを時間は掛かるが落とし、切れたり弾け飛んでしまった部分も時間は掛かるが自動で修復する機能があるため、ザハークにはもってこいの服一式だった。


「自分もこの服はとても有難いです。お二人みたいに綺麗にモンスターを倒すのは苦手なので」


ザハークも魔法の類は扱える。武器も呑み込みが早く、ソウスケとミレアナが教えられる技術はどんどん覚えていく。しかし徒手格闘が一番得意なので戦いの最中にあまり武器を使おうとはしない。


「まぁ、あれだよな。俺やミレアナにとっては大剣でもザハークにとっては少し大きい程度の長剣になってしまうもんな」


「弓に関しては完全に我々用では扱う事が難しいですからね」


ミレアナが扱える武器の中でレベルが高いのは弓な為、ミレアナは是非ザハークに弓術のスキルも覚えて貰いたいと思っていたが、宝箱から稀に手に入る物ではザハークが扱えるサイズの物は無かったのでソウスケが特注でトレントの木とハントスパイダーの糸を使って造った。


ソウスケが特注で作った弓は確かにザハークが扱える物であったが、それでもザハークが握る力加減を間違えてしまえば容易に折れてしまう。


その光景を見たソウスケは口を大きく開いて固まってしまった。


(・・・・・・この辺りの階層ではエルダートレントはいないみたいだな。もしかしたら二十階層のボス部屋にいるのか? でもジーラスさん達が話していたエルダートレントの強さを考えるともっと下の階層に行かないといなさそうだな)


トレントの木をゲットした事で本来の目的は達成されているのだが、ソウスケのエルダートレントの木が欲しいという欲求は消えない。


「まぁそこら辺も考えながら今日は一眠りして明日ボス戦に挑もう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る