二百三十七話何もさせない

フォレストオーガは目の前の光景に危機感を感じていた。


先程までは四人の武装した人間と戦っていた。

相手は油断できるような相手ででは無く、自身の種族特有の力を使って何とか傷を癒しながら戦い続けた。

戦いを続けていくうちにやや自分の方が優勢になっていく。


しかし自身の魔力もあまり残っておらず、傷を癒せる回数も限られている。

それでも自分には十分に勝機があると思っていた。


たが次の瞬間、何者かが自分の体を吹き飛ばした。

今まで無かった体験では無い。しかしそれでも驚いた事には変わらず、自身の骨にひびを入れた者がどの様な相手なのか直ぐに立ち上がって確認する。


そこに立っていたのは華奢な体型のエルフだった。

見覚えのある種族。ただし自分の記憶にあるエルフとは違う点があった。


あまりの強さに命からがら逃げた相手、自身の腕力で叩き潰した相手。どちらのエルフも棒を持ち、魔法を唱えていた。

だが、今我前に立つエルフは確かに自分は打撃によって吹き飛ばした。


人が、モンスターが見た目にそぐわない能力を持っている者がいる事は知っている。

小さな獲物を捕らえようとして、無駄に走っただけで終わった日もある。

ただ目の前エルフは今までの記憶の中にあるエルフとは戦い方がまるで違うのではと感じた。


そしてエルフの女に集中していたらいつの間にか自分と先程まで戦っていた武装した集団が消えている。

自身の目の前にエルフの女と男、そして何度も目にしたことがあるホブ・ゴブリン。ただ今まで見て来たホブ・ゴブリンとは少し違うと本能的に感じ取った。


おそらく今の状況から逃げ切れる事は不可能。

それならば戦うしかない。そう思ったフォレストオーガの拳は自然と力が入る。


ただし次の瞬間、エルフの女と男の周囲に風の刃と矢が生み出される。

数が兎に角多い。まだ攻撃を喰らった訳では無いが十分に自分の体を傷付ける事が出来ると判断した。

そこで一匹のゴブリンがこちらに襲い掛かって来た。


「ハアアアアアア!!!!!」


ザハークは両手にコボルトの上位種の牙や爪によって造られた短剣を持ち、声を張り上げながらフォレストオーガに突っ込んでいく。

勿論身体強化のスキルを使っており、ランク通りの速さ以上の速度で襲い掛かる。


しかしその速度にフォレストオーガは反応出来ない速さでは無く、左足でザハークを蹴り上げようとする。


「そうはさせないぞ」


ソウスケのウィンドカッターがフォレストオーガの胸部へと迫る。

それを弾こうとフォレストオーガは右腕でウィンドカッターを弾く。


フォレストオーガの視線が自分からウィンドカッターに移った瞬間、急停止して蹴りを躱す。

そして再び加速してフォレストオーガの左足を斬りつける。


走る痛みにフォレストオーガは顔を歪めるが絶えず追撃する。

だが今度はそれをミレアナが生み出したウィンドカッターが許さなかった。


ザハークが攻撃を仕掛ける。フォレストオーガがそれに対処しようとした瞬間に風の刃か矢が襲い掛かる。それに対処しようとした瞬間にザハークが攻撃を決める。


一瞬の痛みに耐えてそのままザハークに攻撃を決めようとする。

ただ視線は無意識に行動を語る。


ソウスケとミレアナはその表情を正確に捉え、フォレストオーガが我慢できない程の攻撃を加える。

何とか傷を癒そうと木に近寄ろうとするも、そうはさせないザハークが先回りする。


刃が肌を削ぎ、矢が肉を刺し、戦意の乗った刃が体を刻む。

もう自分に後は無いと悟ったフォレストオーガは残りの魔力を全て振り絞り、最後の一撃を放とうと覚悟を決めた。


「ソレハハツドウサセハシナイ」


短剣に無理やり火の魔力を込め、フォレストオーガの顔面に投げつけた。

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