二百三話良く耐えました

ギルドの中へ入った二人は昼時とはいえ、ちらほらといる冒険者達とギルド職員達の視線を集める。

その視線は直ぐに外れる事無く、二人に留まる。


一人は正直頼りなさそうに見える人族の少年。そしてもう一人は一般的に美人と呼べる容姿から頭三つか四つほど抜けた美しさを持つエルフ。しかもナイスプロポーション持ち。


そんなアンバランスな二人組を周りの者達は物珍しそうに見ている。


周囲の視線にソウスケは自分にどういった内容が含まれている視線を向けられているのか、ある程度予想がついていたので特には気にしなかった。


しかしソウスケと同様に向けられる視線の内容についてある程度予測がついていたミレアナだが、それでも不愉快な事には変わりなかった。


(男性の方たちが私に品の無い視線を向けてくるのはまだ分かります。男の性というものでしょうから。ただソウスケさんを下に見るような視線はダンジョンの入り口前の時と同じように不愉快極まりないですね)


だがソウスケに余り目立たない様にするといった手前、直ぐに破る訳にはいかなく体から魔力が漏れるような事は無いが、明らかにミレアナは不機嫌な表情を隠しきれていない。


そんなミレアナの表情を顔を見ずとも分かったソウスケは指でツンツンと突き、落ち着けと合図を送る。

ソウスケが自分に何を伝えたいのか理解したミレアナは一つ深呼吸をして眉間の皺を消す。


そして受付嬢が常在するカウンターまで着いたミレアナはダンジョンの情報について尋ねる。


「この街のダンジョンの五階層から下のモンスターや階層の特徴を教えてくれませんか」


「わ、分かりました。申し訳ありませんがギルドカードを見せ貰ってよろしいでしょうか?」


規則として見せなけれなならないのだろうと判断した二人は懐からギルドカードを取り出して受付嬢に渡す。


二人のギルドカードを受け取った受付嬢はその二枚に記されてあるランクを見て驚きのあまり口をパクパクとさせる。

まるで餌を欲している金魚だなとソウスケは思ってしまい、小さく吹いてしまった。


完全に予想外だった二人のランクを見て、受付嬢はダンジョンの内容公開が出来ない事を伝えようとする。


「あ、あの大変申し上げにくいのですが、お二人の」


受付嬢がダンジョンの情報を売る事が出来ないと伝える前に、ミレアナがカウンターを軽く、しかし響くようにノックする。


「あなたがまだ成り立てなのかどうかは知りませんが、冒険者の個人情報をそう安々と口に出して良いものでは無い筈です。安心してください、私達の強さはランク通りではないので」


ダンジョンの入り口前の時の様に体から魔力は漏れ出していないが、目の前の受付嬢が小鹿の様にプルプルと足を震わせてしまうようなプレッシャーが放たれていた。


「さぁ、早くしてくれませんか」


「わ、わわわわわかりました! しょ、少々お持ちください!!」


ギャグ漫画の様に奥へと消えていった受付嬢を見てソウスケは大きな声を出さない様に笑い声を噛み殺していた。


「くくく・・・・・・いくら何でも少し怯え過ぎな気もするけど、よくやったミレアナ」


「有難うございます。・・・・・・ソウスケさん、やはり冒険者ランクを積極的に上げませんか。何と言うか、納得できない感情が溢れ出すと言いますか・・・・・・・・・・・・」


「言いたい事は解るよ。でも俺は特に気にしてないから。それに俺達に絡んできたところで・・・・・・な」


ミレアナもソウスケが何を言いたいのか解り、それ以上は言わずに小さく頷いた。

そして戻って来た受付嬢が手に持っていたダンジョンの情報を殆ど買い取り、結果金貨数十枚を支払う事になった。


普通の冒険者であれば手痛いどころではない、生活問題に少し関わってくるほどの出費だが小金持ちな二人にとっては全く痛くない出費。惜しむ理由が一つもなかった。


そしてダンジョンの情報を殆ど買い終えた二人はギルドから出ようとしたが、ソウスケの読み通りそうはいかなかった。

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