二百四話最低最悪ではないが面倒な事に変わりない

受付嬢からダンジョンの情報を買い取った二人は直ぐにギルドから出ようとしたが、周りの冒険者達がそれを許さなかった。


「なぁなぁエルフさん、もしかしてダンジョンに挑むつもりなのか?」


「そうですが何か用ですか」


「いやいや、買い取ったダンジョンの情報を聞いた限り子守りをしながら探索するのは無理だろうと思ってな」


子守りをしながら探索すると言う言葉を聞いた瞬間、ミレアナの眉がピクリと動いた。

ソウスケは面倒な奴らが絡んできた思いながらも言葉を発しない。

ただミレアナがやり過ぎてしまわないか心配に思い、万が一の準備をしておく。


「だから俺達と一緒に組んでダンジョンを探索しないかってお誘いさ」


ミレアナに声をかけて来た男のパーティーは声をかけて来た男も含めて三人、性別は全員男。

三人の中に女が一人でもいればソウスケの警戒も少しは緩んだかもしれないが、パーティーメンバーが全員男という事で例え善意での誘いであったとしても、一日ぐらいパーティーを組んでいいかもしれないとは思えない。


何より三人の視線がミレアナだけに集中している様子から、何が目的でミレアナに話しかけて来たのかは十分に解った。

ソウスケは三人の目から自分の最悪の想定相手とは違うと判断する。


(目当てはミレアナに良い恰好を見せてあわよくば・・・・・・なんて思っているんだろうな。まぁ、ダンジョン内で新人を殺して優越に浸るような糞みたいな奴らじゃないか)


最低最悪の屑では無い。しかし面倒な相手に変わりは無かった。


「いいえ、結構で。私とソウスケさんで十分なので遠慮します」


「なぁ!!??」


見事にミレアナに振られてしまった男とそのパーティーメンバーは嘘だろといった表情になる。

そして周囲の冒険者やギルド職員は大なり小なり声を出してその様子を笑っている。


自信満々に一緒にダンジョン探索をしないかという誘い・・・・・・もといナンパをするが見事に振られてしまう。

そういった話が大好きな冒険者達には格好のネタ話であり、話は直ぐに広がる。


(・・・・・・まぁ、学生でよくある告白した日の次の日に直ぐに広まってるって感じだな。なんというか・・・・・・自業自得。いや、自爆かもしれないけど、ご愁傷さまとしか言えないな)


これから目の前の三人、特にミレアナに声をかけて来た男が揶揄われる光景を思い浮かべたソウスケは少しだけ同情する。


「い、いやでもさぁ、二人でダンジョン探索とか無理だぜ。基本は四人以上で潜るのが一般的なんだしさ」


「あなたの常識を私達に押し付けないでください。もしそういった階層に潜る事になったとしても、あなた方では力不足です」


お前らがいても足手まといにしかならない、そう捉える事も出来る言葉を聞いて三人はさらに顔を赤くする。

声をかけて来た男はDランクであり、後ろの二人はEランク。


お世辞にも三人が自分達の役に立つとは一ミリもミレアナは思えなかった。


このまま舐められたままで終われないと思った三人は自身の武器に手をかけようとするが、その瞬間にソウスケは殺傷能力の低い風の円盤を三つ飛ばす。


「ミレアナ、こんな露出狂に構う必要はない。行くぞ」


「・・・・・・ふっ、それもそうですね」


ソウスケからいきなり露出狂と言われた三人は自身の下半身を見る。

すると見事にズボンが切り裂かれて下に落ちていた。


慌ててズボンを上げるがズボンから手を離す事が出来ない三人の姿に、もう一度大きな笑いが生まれる。


そして三人がわたわたしている間に二人はギルドから早足で出て行った。


「最初に断られた時に素直に諦めていればまだ傷は浅く済んだかもしれないのに、なんでそんな面子を気にするのかねぇ~~~」


「吹けば軽く吹き飛びそうな小さなプライドの為ではないでしょうか」


ミレアナの完全に見下した言葉に、そりゃそうだなとソウスケは同意しながら小さく笑った。

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