百八十六話辛くつまらない

夕食を終え、一先ず日が沈むまでの間ソウスケとミレアナはテントの中で待機し、見張りの時まで時間を潰す。


テントの中はAランク冒険者であるゼアストから買った物であり、勿論唯のテントでは無い。

中の広さは見た目以上の広さとなっていて家具も一通り揃っている。

唯一風呂だけが無かった為、ソウスケが自作した木製の風呂を取り出す。


「いやぁ・・・・・・やっぱりこれって結構凄いよな?」


「はい、テント自体もそうですけど、中に入っている家具も幾つかマジックアイテムで出来ているので合計でかなり金額になるかと思います」


(だよな。もしかしてゼアストさん、テントの中に入れていた家具の事忘れていたんじゃないのか? 確かにミレアナの装備も含めて懐からかなり金が消えはしたけど・・・・・・良い意味で割に合っていない気がするんだよな)


テントの中に入っていた家具の数々を見て、ソウスケは嬉しく思う反面少し罪悪感を感じてしまう。

ただ、一応しっかりと金を払って買った訳なのでその事について考えるのを止め、見張りの事に頭を切り替える。


「ふぅーーー、正直見張りは面倒としか言えないな」


「ソウスケさんは見張りの経験があるんですか?」


「夜寝ずに朝まで起きていた事は何回かあったけど、周囲を警戒して一夜を過ごすのは一回だけだ。あれは・・・・・・かなりきつかった」


過去に一度、助けた冒険者達の為に考えなしに完全に夜が明けるまで見張りを続けた時の事を思い出したソウスケはつい頭を抱えた。


(あの時みたいに長時間起き続ける訳では無いけど、それでもただ時間を潰す、遊びながら過ごすのではなく周囲を警戒しながら過ごすんだからな・・・・・・退屈というかつまらないというか、正直嫌で面倒な時間ではあるな)


何かを楽しむ訳でもなく時間を潰す、だからといってやらなくていい事かと言えばそう言う訳でもない役割。


「確かに慣れていないと辛い時間ではありますね。やはり私が明日の朝まで務めた方が・・・・・・」


「いや、それはしないでくれ。俺の良心が痛むしこう・・・・・・いくらお前が俺の奴隷であっても評判がエグイ程下がるだろうから」


例え奴隷であってもミレアナ程の美人を便利な物扱いしていれば必ず良からぬ噂が立ち、今後冒険者活動にどこかで影響しかねない。

一度はソウスケもミレアナの言う通り一晩中見張りをしてもらば良いのでは思ってしまったが、直ぐに頭の中の天使が悪魔の囁きを掻き消した。


「私は一向に構わないんですが・・・・・・そうですね、モンスターをテイムするという方法もありますよ。モンスターは私達より活動時間が長いというか、長時間起きていられるので特に問題は無いかと。ソウスケさんならばランクの高いモンスターをテイムする事が出来ると思いますよ」


ミレアナの提案を聞いたソウスケはその手があったかと希望の光に少し心が軽くなる。


(漫画・・・・と言うよりゲームにモンスターを仲間に出来るってのがあったな。仲間にしたモンスターで戦ってストーリを進めていく感じだったか? 取りあえず良い案ではあるな。肝心のテイムの仕方は知らないけど・・・・・・まぁ、そこら辺は何とかなるだろう)


モンスターをテイムし、自身の従魔とする。

それは見張りの負担が減るだけでなく、戦力が上がる事も意味する。


だが、その分食費が自分達と比べて大きく掛かってしまうが、ダンジョンで大量の魔物を倒し、その肉をアイテムボックスの中に仕舞っているソウスケにとっては些細な問題だった。


そしてソウスケ自身も見張りの問題解決に良い案を思い付く。

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