百八十五話あまり踏み込まず

「なぁソウスケ君、俺達のそのうどん? って料理を分けて貰っても良いかな。勿論ミーシャと同じだけお金は払うよ」


ブライドにリーナ、ラックとレンカ―スが並んでおり右手にお椀、左手に銀貨一枚を持っていた。


(そこまで美味しそうに見えるのか? まぁ、スープが美味いからそう見える、もしくは野営という状況だからそう見えてしまうのかもしれないな)


まだ水筒には大量のスープがあるので、ソウスケは四人のお椀にスープとうどんを入れて代金を貰う。


「ソウスケ、もしバックス達が金を持って来てソウスケにうどんを分けてくれって言って来たらどうするんだ?」


ラックはバックス達に聞こえない小さな声でソウスケに尋ねる。

バックス達が自分達に害を為さない存在だと信用出来る相手なら、等価交換でうどんを渡すつもりだった。


「あんな態度を取る人達にお金を貰ってもうどんは渡しませんよ。唯でさえほぼ初対面でお互い信用できない相手なのにあんな上から目線、ミレアナに発情した目を向けるて信用がた落ちの相手に大事な食料を渡すほど、俺の心は広くないんで」


「くっくっく。確かにソウスケの言う通りだな。俺がソウスケだったら同じ対応を取るぜ。まぁ、あいつらもソウスケからうどんを分けて貰えないって分かってるみたいだな」


固い黒パンに味気ない干し肉に温い水という寂しい食事を取っているバッカス達の視線はソウスケ達が食べているうどんに集中している。


本音を言うならば直ぐにソウスケの元へ行き、銀貨を渡してうどんを貰いたい。

だが、バックスは昨日の行いで金を渡してもうどんを貰えるとは思っておらず、他の四人もバッカスの行動を止めずにニヤニヤと笑って見ていたため、ソウスケの所へ行こうにも行けなかった。


「それにしても美味しいな。これはソウスケが考えて作った料理なのか?」


何時の間にソウスケ達の前へ椅子を持ってきたうどんを食べていたレンカ―スが、うどんという今まで自分が食べた事が無かった料理に興味を示してソウスケに質問する。


「まぁ・・・・・・そうですね。ただ、俺が作ったのはこのうどんだけで、スープは宿の女将さんと旦那さんが作ったものです」


「確かにスープも美味しいが、このうどんに私は興味を持った。これほど美味い保存食は初めて食べた!!」


「そ、そうですか・・・・・・でも、確かにこのうどんがメインという形になりますけど、スープが無いと正直美味しくないと思います。スープあってこそのうどんだと俺は思っているんで」


スープが無ければうどんはそこまで美味しいと感じない。それはレンカ―スも薄々気が付いていた。


(ソウスケ君言う通りだな・・・・・・だが、美味くは無くとも腹は膨れる筈だ。スープの方を考えるのは冒険者であるソウスケ君ではなく私達商人の役目だな。ソウスケ君はマジックアイテムの水筒のだからな)


中に入れる事が出来る物が殆ど水分だけと決まっているとはいえ、中の物の時が止まるマジックアイテムの水筒がかなり値段が高い。

商人であるレンカ―スはそれが分かっているため、ソウスケとミレアナが何故低ランクにも関わらず価値の高いマジックアイテムを持っているのか疑問に思う。


(見た目、ランク通りの冒険者ではないと思っていたが、このようなマジックアイテムまで持っているとは・・・・・・そこら辺を少し尋ねたいところだが、あまり踏み込み過ぎると警戒されてしまう。それだけは避けたいところだ)


離れたところで寂しく食事をしているバックス達を見て、二つのパーティーの間で何があったのか大体察したレンカ―スはバックス達の二の舞にはなりたくなかった。


なので踏み込んだ質問はせず、少しでも信頼関係を築けるように実のある話題を提供しながら二人を会話を楽しんだ。

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