百二十四話舐めた真似をしてくれるな

右手にミスリルの短剣、左の掌に圧縮した風の魔力を準備したミレアナは戦いが始まると同時に、直ぐにその場から動き出した。


数の利は相手にあるが個の力は自分とソウスケが圧倒していると確信しているため、ミレアナはスナイプビーの針だけに注意して短剣から放つ斬撃と、圧縮した風の魔力を開放して放つオリジナルの技でスナイプビー達に攻撃を仕掛けた。


素の速さでもミレアナはスナイプビーを上回っているが念の為と思い、ミレアナは身体強化のスキルを使いスナイプビー達が反応出来ないほどの速さで頭部を斬り裂き、腹部を破裂させていった。


このまま行けば万が一はなく目標が達成できるとミレアナは持っていたが、スナイプビー達はただでやられるほど弱くはなかった。


ミレアナを襲っているスナイプビー達はソウスケを襲っている奴達とは違い、相手が速過ぎて針の標準が合わせられないからといって、何も出来なくなるという事は無かった。


「・・・・・・そうきましたか」


スナイプビー達は狙いが定まらないからといって棒立ちにならず、下手な鉄砲も数撃てば当たる作戦でミレアナを囲むようにして針を発射した。


スナイプビー達の攻撃に厄介さを感じながらも、数が多いとはいえ隙間が無い程の全方位攻撃ではないため、ミレアナはその場から駆け出して自分に向かって来る前方の針に対して圧縮した風の魔力を前に出し、射程を完全に殆ど殺す代わりに範囲を広げて放ち毒付きの針を弾き、そのまま前進した。


自棄にならずミレアナに攻撃したスナイプビー達だったが、ソウスケと対峙している同族同様に見えない何かに阻まれた自分の針を見てほんの一瞬であるが動きが止まった。


身体強化のスキルを使っているミレアナにとって、そのほんの一瞬は十分な時間であり、魔石を傷つけない様に丁寧に葬った。


次々に数が減っていく中で、あるスナイプビーがミレアナに針を発射するのではなく斬りかかった。


「っ!!」


攻撃が背後からの奇襲だったため針を躱す事は出来ず、ミスリルの短剣で軌道をずらして攻撃を防いだ。


「あれは・・・・・・ナイトスナイプビーですか。ナイトスナイプビーがいると言う事は、思っていた以上にクイーンスナイプビーが厄介で強いって事になりますね」


クイーンスナイプビーと同じくスナイプビーの上位種に当たるナイトスナイプビーがいる事に、ミレアナは少し焦りを感じていた。


(クイーンスナイプビーの子供であるスナイプビーが上位種のナイトスナイプビーに進化しているという事は、クイーンスナイプビーがかなり長く生きている証拠。幸いにも数が数は一体・・・・・・いや、ソウスケさんの方にも一体いるので二体。そこまで通常のクイーンスナイプビーとかけ離れた力は持っていないと思いますけど、少し心配になりますね)


自分の知識に当てはまる事が目の前で起こっている事に対し、まだ姿を見せていないクイーンスナイプビーの実力を予測しているとナイトスナイプビーがスナイプビー達に合図を送った。


自分達の先輩、上司に当たるナイトスナイプビーに指示を受けたスナイプビー達は他の仲間達が戦っているソウスケの元へ向かった。

スナイプビー達はただ自分より長く生きており、種族的に自分達より偉い上司に従っただけなのだが、結果として自分の寿命を縮める事になった。


「何してるんですか」


ソウスケの奴隷として、ソウスケの戦う相手を増やしてしまうのは愚行だと思ったミレアナは短剣から手首のスナップだけで斬撃を放ち、ソウスケと戦っている仲間に加勢しようとしたスナイプビーを射ち落とした。


「あなた達の相手は私ですよ。といっても、後残っているのはあなただけですけどね、ナイトスナイプビー」


先程までのクイーンスナイプビーの力に少し不安と焦りを感じていた表情は消え、冷たい目でナイトスナイプビーを見据えていた。


相手を怯ませるようなミレアナの視線にナイトスナイプビーは少し後ずさってしまうが、女王に忠誠を誓う騎士に逃げるという選択肢は無く、スナイプビーと比べて長く太い針を構えてミレアナに縦横無尽に動きながら襲い掛かった。


その動きに対してミレアナは見失うことなく目で追いかけ、自分に迫って来る針にミスリルの短剣で応戦した。

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