百二十話味は良いけど・・・・・・

「なぁ、ミレアナ。なんでそんなに血抜きが早く終わってるんだ?」


「えっと、水の魔力の応用技で魔物の血を一気に外に出したんですよ」


とんでもない事をサラッというミレアナに対し、ソウスケは開いた口が塞がらずポカーンとした表情になっていた。


(いやいやいや・・・・・・ちょっと待てよ。モンスターの血を自在に操る事が出来るって、それじゃあ一旦傷を付けてしまえば後は大量出血させてしまえば、大抵の相手は勝てるんじゃないか!?)


モンスターの大きさによって血の量に差が出るが、対峙するモンスターが再生するスキルとか持っていない限り、自分を守ってくれる前衛がいれば失った血は戻らないのでかなりの応用技と言う事になるが、世の中そう都合の良い応用技は無かった。


「とはいっても、死んだ魔物にしか効果は無いんですけどね」


「・・・・・・うん、だよな。そうだよな」


ソウスケは応用技がチート過ぎる物ではないと知り安心した事で大きなため息が口から出て来た。


「まぁ、血抜きの理由は分かったし解体は一朝一夕の差だという事で分かる、肉がしっかりと洗われているのは血抜きと同じく水の魔力を使ったからか」


「はい。水の球体を出してから中にお肉を入れて全方向からランダムに肉を裂かない様に力を加えて洗いました」


ミレアナが先程まで肉を洗っていた水球は血の影響で赤黒く染まっていた。

そこでソウスケはミレアナの全方向という言葉で何かを思い出し、空を見上げながら考え始めた。


(全方向・・・・・・ランダムに力を加える。と言う事は水球の中の状況は乱回転に近いものになっているのか?)


ソウスケは水の中で乱回転というワードで、日本・・・・・・世界中でそこそこ有名になっている忍者漫画に出てくる主人公の必殺技が頭の中に浮かんでいた。


(う~~~~ん、乱回転か。今はまだ思いつかないけど新しい魔法が作れそうな気がするな)


本当は螺〇丸と叫んで技を決めてみたいとソウスケは少し思っていたが、色々とアウトな気がしたので直ぐに真似しないと決意した。


「・・・・・・取り合えずそれも焼いちまうか」


ミレアナからスナッチバードの肉が刺さった串を受け取り、新しく串を支える木を集めるのが面倒に感じたソウスケは木の魔力を使って、串を支える台を作った。


そして早く肉を焼いてしまおうと思い、火に風の魔力の応用で酸素を送り火力を上げた。


「・・・・・・本当に火の大きさ、熱さが変わった。今、さんそ? という空気中に存在する者を火に送り込んだんですよね」


「ああ。そうすれば火力が上がるからな。火魔法にも応用出来るぞ。特に単純に相手に向かって放つ魔法は」


真っ赤な炎に酸素を取り込んだ事で、綺麗な蒼炎に変化した時の様子と、威力と火力の変化に驚いた時の事を思い出してソウスケは小さく笑い出した。


「ふっふっふ。ミレアナは風魔法が使えて魔力操作のレベルも高いんだから、そう時間を掛けずに実戦で使えるようになるさ。まぁ、取りあえず今その話は置いといて昼飯を食べようぜ」


「分かりました。午後も探索するんですかしっかりと食べておきます」


二人はオークの肉にスナッチバードの肉と、肉オンリーな昼食を食べたため満腹にはなったが、口の中が少々肉臭くなってしまった。


昼食を食べ終えたソウスケは流石に栄養バランスが偏り過ぎだと感じ、次からはサンドイッチを作ってこようと思いパンの間に挟む具材を考えながら探索を再開した。



「・・・・・・なぁ、何か近づいてきてないか?」


「そうですね。小さくですがこの感じは・・・・・・羽の音だと思います」


気配感知の範囲を広げると、自分達に向かってきている数が十匹ほどだと分かり二人は即座に迎撃できるように準備を始めた。


するとモンスターが姿を完全に現す前に攻撃を仕掛けて来た。


「っ!? 危ないな。速さはそこまでじゃないけど、厄介な追加効果があるな」


ソウスケに向かって飛んできた物は鋭い針だった。しかもソウスケがその針を鑑定すると、針には刺さると毒状態にさせる効果があるという事が分かった。


「ソウスケさん。向かってきているのは恐らくスナイプビーです!! 気づいているとは思いますけど、針には気を付けてください」


「ああ、その方が良さそうだな」


ソウスケがミレアナの言葉に頷いた瞬間、二人に九本の針が一斉に飛んできた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る