百十九話慣れって凄いな

自分が今焼いているオークの肉に向かって来るモンスターを確認したソウスケは、直ぐに近くにあった石を拾ってモンスター目掛けて投げつけた。


咄嗟の出来事だったため、ソウスケは手加減を一切せずにその場の態勢から出せる力を全て込めて投擲した。

結果、鳥型のモンスターはオークの肉にたどり着く前に、腹に大きな穴を開けて墜落した。


「・・・・・・咄嗟に投げたから手加減が出来なかったな。そんで、なんなんだコイツは?」


いきなり自分達の昼食を狙ってきたモンスターが、全く見た事が無いためとりあえず鑑定を使って調べた。


「名前はスナッチバードか。・・・・・・特に目立ったスキルはな、くもないな」


名前のついでにスキルを調べていると強盗というスキルがあり、そのスキルに付いてソウスケは更に鑑定で調べた。


「えっと・・・・・・相手の物を奪う時に速さが上昇する。レベルが後半になると相手が持っている物を離れた距離からランダムで奪う事が出来る。奪える距離と成功する確率はスキルのレベルと、相手とのレベル差によるねぇ。レベルを上げれば中々使えるスキルだな」


「確かにそうですね。戦闘中にランダムとはいえ自分の持ち物を奪われたら、少しの瞬間とはいえ隙は出来ますからね。それにしてもスナッチバードですか・・・・・・」


ミレアナのスナッチバードを見る目が気になり、ソウスケは過去にスナッチバードに関する何かがあるのかと感じた。


「スナッチバードを見る目が若干怖いけど、昔スナッチバードと何かあったのか」


ミレアナに過去に何かあったのか尋ねるソウスケだが、手元にあるオークの肉はしっかりと回転させて焼いていた。


「私達エルフは狩りの時には主に弓を使うんですよ。そして獲物から離れた距離から仕留めたところをよくスナッチバードに盗られていたんですよ。なので弓を持ち始めたエルフ達が超えるべき関門の一つでしたね」


「仕留めた獲物を横取りされる、か・・・・・・それは~~~~あれだな。中々に殺意が沸くな」


ミレアナが話した出来事を簡単に頭の中でイメージしたソウスケはイメージし終えると、直ぐ様スナッチバードに殺意が芽生えた。


「ソウスケさんの言う通りです!! 私も最初の頃は倒した獲物を盗られてよく地団駄を踏んでいました。まぁ、何回も盗られている内に攻略方法が見つかるんですけどね」


スナッチバードの攻略方法がどのような物なのか、今しがた自分が倒した方法を除いてソウスケは考え始めた。


(獲物を仕留めた時に襲い掛かるんだろ。というか、獲物を盗るときには多分最高速度からスピードを下げるよな。じゃないと盗った獲物を潰す可能性があるだろうし。その時を狙えるように目標の獲物を仕留めたら直ぐに二撃目の準備をするのがおそらく正解だろうな)


二分ほどで思いついたソウスケの攻略方法は正しく、エルフやハイ・エルフの親達はその方法を自分で見つけて貰いたいために、敢えてスナッチバードの攻略方法を言わない習慣がある。


「ところでスナッチバードは美味いのか?」


「習性はとても憎たらしいですけど、その分味は美味しいですね。Eランクのモンスターの中では頭一つ抜けていると思いますね」


「だったらそいつも食べてしまうか。悪いけど血抜きと解体頼んでいいか。終わったらこの串に刺しといてくれ」


ソウスケは魔法袋から自作の串を取り出してミレアナ渡した。


「分かりました!! 少し待っていてくださいね」


ミレアナがスナッチバードの血抜きと解体を始めている間に、ソウスケは焼きあがったオークの肉を包丁の代わりに風の魔力で均等な大きさに切り、自作の木の皿の上に乗せていった。


「・・・・・・あんまり魔力を使う訳じゃないけど、正直方法としては良くないんだろうな」


ソウスケの肉を切るためだけに魔力を使っているのを、魔法をメインに戦う人が見れば魔力の無駄使いだと怒る者をいるだろう。だが、ソウスケとしては本当に微々たるものなので特に気にしてはいなかった。


「ソウスケさん。血抜きと解体終わりましたよ」


「えっ!?」


余りにも血抜きと解体時間が早すぎるため、ソウスケは驚きの声を上げてしまったが、ミレアナが言う通りスナッチバードの血抜きと解体は全て終わっていた。


ソウスケは解体の速さは自分とは一朝一夕じゃ埋められない差があるため納得できたが、血抜きに関しては何故こんなにも早く終わるのか全く分からなかった。

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