男子と女子の間で直箸はYESかNOか
「あら、どうもありがとう……」
ルナが感謝の言葉を口にし、続けて何か言おうとした。しかし、それを遮る様にハルカが口を挟んだ。
「ちょっとマサオ君、その焼きそばは私とルナ先輩の分でしょ!」
そしてマサオがルナとの間に置いた焼きそばに手を伸ばし、キープするかの様にハルカとルナの間に引き寄せながら言った。
「まったく油断も隙も無いんだから……マサオ君とトシヤ君の分はそっちでしょ」
そしてはトシヤとマサオの間にある焼きそばを指差し、辛辣な言葉をマサオに浴びせた。
「マサオ君が箸を付けたモノなんて、ルナ先輩が嫌がるに決まってるじゃない」
ルナが言い難いことを言う……否、答えを出す前にハルカがきっぱり言い切った。もちろんそれは大多数の人が同意するであろう内容ではあるのだが、決して正解だとは言い切れない。如何せん正解を知っているのはルナ以外にはいないのだから。そして、このハルカの言動によってルナは正解を発表せずに済み、マサオはルナの真意を知る機会を失った。
そんなこんなで楽しいランチが終えたトシヤ達は流れるプールにもう一度入り、十分に涼んだ後で帰ることにした。
来た時と同様、男女別に分かれて着替えてから再度合流し、四人並んで駅を目指してパークを歩く。パークを歩いていると、当然のことながらジェットコースターや観覧車などのアトラクションが目に入る。
「せっかくだから何か乗ってくか?」
「うーん、ちょっと疲れちゃったから今日はもういいかな」
マサオが提案したがハルカが却下してしまった。マサオとしては正直なところ「お前に聞いてんじゃ無ぇよ」と悪態の一つもつきたいところだが、そんな事、出来るわけが無い。肩を落とすマサオだが、それにしてもハルカは何故こうもマサオがルナにモーションをかけようとするとそれを潰す様な事ばかりするのだろう……いつまでも告白してくれないトシヤに愛想を尽かし、お金持ちのマサオに乗り換えようとしているとか?
無い。それは無い。ハルカはマサオがルナに直接拒絶されたら辛いだろうと思ってルナが答える(拒絶する)前にマサオの提案を却下していたのだ。もっともルナがマサオを拒絶するとは限らないし、もしルナが拒絶していたとしてもマサオなら「時期尚早だったか」とぐらいに思って次の手を考えるに違い無いのだけれども。
パークを出て電車に乗り、地元の駅に着き、トシヤ達の楽しい時間は終わった。
解散して家に帰ったトシヤが部屋で一人ぼーっとしていると、スマホがメッセージの受信を知らせる電子音を奏でた。
「何だ? またマサオが次の作戦でも考えたか?」
ブツブツ言いながらスマホを手に取り、メッセージを確認したトシヤの目が輝いた。
『今日は私が補習でロードバイクに乗れないから気を使ってくれたんでしょ? ありがとう、楽しかった。補習が終わったら一緒に走りに行こうね』
メッセージの送り主は言うまでもないだろうがハルカだ。『走りに行こう』というのは『渋山峠を上ろう』という意味だろう。そう思ったトシヤが『うん、足着き無しで上れるよう頑張るよ』と返信しようとした時、ハルカからメッセージがまた入った。
『今度は二人でね』
コレは激アツだ! まさかハルカからこんなメッセージが入る日が来ようとは……それにしても女の子にこんなことを言わせるなんて、トシヤにも困ったものだ。早く告白すればハルカもトシヤも幸せになれるのに……
『うん! じゃあハルカちゃんの補習が終わったら二人で渋山峠上ろうか』
トシヤはハルカに返信を送った。本文に『二人で』と入れたところにトシヤも気持ちを込めたつもりだが、果たしてハルカに伝わったかどうか……
それより今日はまだ夏休み二日目だ。ハルカの補習が終わり、ロードバイクに乗れるようになるまであと五日もある。それまでトシヤはハルカを誘わないつもりなのだろうか? まったく先が思いやられるばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます