6 花火
夏の早朝――――。
ようやく明るくなりかけた時間に、セイリュウは、目を覚ました。気持ちの良い目覚めではなかった。体に申し訳程度にかかっていたタオルケットが、寝返りを打ったところで、パサリと落ちた。
「(夢、見た気がするんだけど)」
ぼんやりと目を開けて、寝起きの頭で考えてみるが、細かいことは、まったく思い出せない。ただ、嫌な夢だったことだけは確かで、現に、今もその余韻で体の内側に苛立ちとも怒りとも悔しさともとれる感情が広がっている。
セイリュウは、訳の分からない不機嫌をそのまま顔に表して、半身を起こした。
開け放たれたままの縁側へ目をやり、朝を迎えようとしている外を眺める。
眠れる気がしない。
セイリュウは、台所で顔を洗うと、そっと社を出た。
空は、半分が明るくなっていて、西の端は、まだ夜の色を残している。町はまだ静かだ。土手まで行くと、川の流れる音まで聞こえてくる。
「(何か、大事なことを忘れてる気がする……)」
内容など覚えていない夢なのに、何故か気になった。
セイリュウは、適当なところで斜面に腰を下ろした。
「あーあ、」
ゴロンと横になると、神社を出た時より空は明るさが増していた。
「セイリュウ?」
美しい声と共に、上に、夜叉の顔が見えて、セイリュウは目を丸くした。
「夜叉」
「早いな。散歩か?」
言いながら、夜叉は、セイリュウの隣に座った。
「あー……うん、覚えてないんだけど、嫌な夢見てたみたいで。気晴らし」
体を起こしながら、セイリュウは答えた。
「気は晴れたのか?」
「……晴れない」
「覚えていない夢に、悩まされているのか」
夜叉は、優しく微笑んで、慰めるように、セイリュウの頭を撫でた。
「大事な夢だった気がするんだよなぁー……」
膝を抱ええ、顎を埋める。考えても思い出せないものなのに、湧き出た感情を、忘れられない。セイリュウは、それが不思議でならなかった。
「大丈夫か?」
夜叉の声に、我に返る。セイリュウが隣を見ると、心配そうな表情の彼がいた。それを見たとたん、体の中で温かいものが広がっていくのを感じた。セイリュウは、自然と笑っている自分が、おかしかった。
「うん。なんか、今ので一気に大丈夫になった」
そして、傍と気が付いた。自分は、ここへ気晴らしにやってきた。樹李たちのいる社ではなく、一人になりたくて。
「夜叉、もしかして、何か悩んでて静かに考えたくてここに来てる?」
セイリュウにとっては、夜叉が現れてくれたことは嬉しいことだったが、夜叉にとっては、どうなのか。
「オレ、邪魔だったり……とか」
不安そうに見つめてくるセイリュウを見て、夜叉は、喉の奥を鳴らして笑った。
「邪魔ではない。邪魔だと思っていたら、声はかけないだろう?」
「そっか。なら、いいんだけど」
「悩み、というか、ずっと考えていることはある」
夜叉は、何かを思い出すような顔をして遠くを見つめた。
黒髪に黒の瞳、それが、夜の名残を広げる西の空を見つめている。
「(夜叉は、キレーだな)」
そんなことを考えながら、セイリュウは、彼の言葉を待った。
「私の父は、立派な人だ。私は、父の後を継ぐのだが、あのようになれるかどうか……。今は、不安しかない」
「跡継ぎか……。夜叉のお父さんって、何してるの?」
「一国の王だ」
セイリュウを見てそう答えた夜叉は、誇らしげな顔をしている。不安なことを話しているのに、嬉しそうな声をしている。
「え?!王様?!ってことは、夜叉、王子様……」
「あぁ、常に、民と国のことを考えている、素晴らしい人だ」
「尊敬してるんだな」
「父上のようになりたいと思うほど、ほど遠い存在だと思い知らされる」
彼の話を聞いていて、セイリュウには、思い出す人がいた。只々、すごいと思っていた人がいた。傍にいるのに、追いつけない人がいた。
思い出す表情で、セイリュウは微笑んだ。
「わかるよ。オレの父さんも、そんな人だったから」
父のようになりたいと、憧れていた。
「オレは、後を継ぐとかないけど」
「私たちは、似ているのかな」
「ははッ、そーかも」
空はすっかり明るくなり、目覚めた時の感情は、夜の色と共にどこかへ消えていた。
神社への帰り道をゆく足取りは、でかけたときに比べて随分と軽かった。
早朝で辺りは明るいが、夜叉が神社の近くまで送ると言った。
「独りでは帰せない。何かあったらどうするんだ」
それが、夜叉の主張だった。さり気なく護られているような感じが、セイリュウにはくすぐったかった。
神社までの道を半分ほど過ぎた頃、前方から見覚えのある顔が2つこちらへと歩いてくる。
「あ!いたよー」
やっぱりという笑顔でセイリュウを見る海吏と、その隣に眠そうな顔の海雷がいる。
海吏の言葉からすると、二人で朝の散歩というわけではないらしい。それを考えているうちに二人は、セイリュウと夜叉のそばまで来ていた。
そして、言葉を発する前に、海吏はセイリュウをスッと引き寄せ、海雷が夜叉との間に立った。
空気が張り詰めたのを感じはしたが、セイリュウにはその理由がわからない。
「え?なに?なんだよ」
尋ねるが、海吏も海雷もそれに答えてはくれなかった。視線も体も、夜叉に向いている。
「どーも、はじめまして」
海雷が言い、それに海吏も従うように口を開いた。
「朝から仲がいいねぇ。目的は何かな?」
「目的?」
硬い表情の中に悲しみと苦しみをにじませて夜叉が聞き返すと、海雷は、強気な笑みを返した。
「セイリュウと仲良くなって、何をしようとしてるのかってこと」
「何も企んでなどいない」
「魔界の王子様が、なんの企みもないのにここまで来ないだろ」
海雷は向けている感情を隠すこともなく、夜叉へと向けている。つまりは、警戒と苛立ち、敵意。
「こいつが鈍いからって、油断してるだろ?」
「俺たちがいるのに余裕なんて、なめてんの?それとも、情報が足りなかったのかな」
状況を理解できず、それまで後ろで黙って見ていたセイリュウが、自分の前に立つ二人の間を無理やり広げてその前に立った。夜叉をかばうようにして、二人を睨んでいる。
「なんかよくわかんないけど、夜叉を悪く言ってるだろ?!」
「いや、何でお前そっち側だよ」
呆れたような海雷の言葉に、セイリュウは更にむくれた顔をした。
「オレ、夜叉にお前らのこと、ちょっと変わってるけどいい奴らだって話したんだぞ?!」
「知るか!俺も海吏も大人しくやられたくないんだよ」
「夜叉はいいヤツだ!」
セイリュウは夜叉の手を掴み、二人を置いて神社の方へ向かってずんずんと歩き出した。一度立ち止まり、くるりと振り返る。
「ついてくんなよ!?」
戸惑った表情で、ただ連れられて一緒に歩いていた夜叉は、海吏と海雷が見えなくなってから、目の前の小さな背中に声をかけた。
「セイリュウ」
「心配すんな、夜叉。オレ、ちゃんと誤解を解くから!」
前を見つめたままでそう話すセイリュウを、夜叉は目を細め微笑んで見つめた。その言葉に嬉しくなる。愛おしいと思ってしまう。護りたいと思ってしまう。
「誤解なのか?」
笑いを滲ませて問いかけると、セイリュウは立ち止まって振り返った。その顔は、凛々しく輝いている。
「誤解だろ?夜叉はいいヤツなのにっ!」
「私は、魔界という異世界から来ている。それも、セイリュウ、お前に会うことが目的で。彼らにとってみれば、排除すべき異物なのだろう。護りたいものがそこにあるなら、なおさら」
夜叉の言葉を噛み締めて、セイリュウの眉尻は下がっていく。
「そうだけどぉ〜」
「セイリュウは、人を信じすぎる。彼らは、心配をしているんだよ」
「……そうだけど〜……」
「それでも、セイリュウが私の味方をしてくれたことは、とても嬉しかった」
セイリュウの顔が、喜びの色に染まり始める。
「迷いなく私を信じてくれている気持ちが、とても嬉しい。ありがとう、セイリュウ」
「うんっ」
「誘いに行っておいて何だけど、よく遊びに行くのOKしてもらえたね」
翌日の昼前、セイリュウは、達也と川に架かる大橋近くのOPバーガーにいた。
「うん。昨日の稽古のご褒美だって」
セイリュウは、嬉しそうにチーズバーガーにかぶりついた。
「あー、何かすごいことしてたね。海吏さんや海雷さんも、セイリュウが物覚え良すぎてビックリしてたよ」
「え、あいつらそんな話してたの?っていうか、何か聞こえる。タツヤのスマホ?」
達也のカバンから、かすかに聞こえる着信音。
「うん、電話……。誰――――…(良太?!)」
カバンからスマホを取り出して、表示されている名前を見ると、達也は、あからさまに面倒だという顔をした。
「……出ないのか?電話」
「あー……」
達也は、ため息をついてから、通話の操作をした。
耳元で、元気のいい、少し色気のある男の声がする。
『達也?』
「良太、久しぶり。どーしたの?」
『昨日から、竜のスマホに掛けてんだけど、繋がらなくて。お前、何か知ってる?』
達也は、向かいに座っているセイリュウを見やり、困り顔で言いよどむ。
「えっと……こ、われたー……とか、言ってたかも。修理に持っていくヒマがないって」
『そっかー……声、聴きたかったんだけどなぁ』
分かりやすく落胆する良太の声。達也は、複雑な思いを抱えていた。嘘をついていることへの罪悪感はもちろんあった。それより大きいものも、自覚している。
良太は、昔から竜が好きだった。
今は、事情があって傍にいない彼が、竜の声を聞きたがる気持ちはわかるし、繋いであげたい気持ちもある。しかし、そうなったら面白くないと思っている自分もいる。
『あ!お前、今、竜と一緒じゃない?』
「え?!」
『一緒なら、代わってよ』
「あー、えーっと……」
一緒にいるにはいるが、今の彼女には、記憶がない。代われるわけがなかった。
どうしたものかとセイリュウを見ると、目が合って、不思議そうな顔をされた。
「言っておくよ。良太が、声を聞きたがってるって」
『なんだ。珍しいな、二人が一緒じゃないって』
「そーだね」
『まぁ、じゃ、頼んだぞ』
「はーい」
通話が終了し、達也は、大きくため息をついた。
セイリュウは、相変わらず、不思議そうな顔をして、じっと達也を見つめている。
「友だち、なのか?」
確かめるように、セイリュウが聞いた。
「あー、うん……。辻口良太っていって、小学校の時からの友だち。この町にある、辻口病院の子。今は、都会の有名私立に行ってて、こっちにいないから」
「へぇー、タツヤ、友だちいっぱいいるんだな」
明るい笑顔でそう言われ、達也は苦笑いするしかなかった。
達也自身、元々、人見知りで引っ込み思案だ。すぐに友だちを作るのは竜の方で、幼なじみでいつも一緒にいたから、自然と友だちが増えただけだ。
「あ、そーだ。僕の知り合いで、セイリュウに会いたいって子がいるんだけど」
8月になり、もうすぐ花火大会が開かれる。
「え?オレに?」
「そう。この前、一緒にいるのを見て、話してみたいって」
本当のことが言いたくて、達也の胸は、チクリと痛くなった。夏休み初日に、神社に呼び出されて、その子に告白されていること。その時に、花火大会に一緒に行く約束をしていること。
そして、本当は、紹介なんてしたくないこと。
しかし、説明をしたところで、彼女は矢沢竜の記憶がない。
セイリュウは、達也が見慣れた笑顔を見せた。
「いーよ。タツヤの友だちなんだろ?」
無条件で信じてくれる、そんなところも変わらない。この表情、笑顔は、達也の大好きな彼女の笑顔。
「――――うん」
「いつ会うの?」
「花火大会があって……」
そこまで言って、達也は、言葉を切り、ふと視界に入った彼の正面にある入り口へ、視線を向けた。
男が一人、ちょうど入ってきたところだった。
肩にかかる黒い髪と、優しげで涼やかな雰囲気。
「あ」
呟いた声に、ポテトを食べていたセイリュウが反応をして、達也の視線を追って振り返った。
「あー!」
誰がいたのかを知り、嬉しげに声を上げた彼女を見て、達也の胸は、また、小さく痛んだ。先ほどとは、また別の痛みだった。
「夜叉がいる!なぁ、ここに呼んでいい?」
「いーよ」
セイリュウが、弾むように駆けていく。それを達也は、ため息をついて見送った。仕方がない。それが、達也の知る『矢沢竜』なのだから。
二人を観察をしてみると、セイリュウが、彼女らしく明るく話かけていて、夜叉がそれを優しく見つめている。
達也は、それが不可解で仕方なかった。
夜叉に、セイリュウを殺しに来たと宣言されたのは、つい先日、夕方の出来事だ。
彼の瞳は、殺す相手に向けるような色をしていない。あれは、むしろ――――。
達也は、そこまで考えて、思い至った結論を打ち消すように、目を閉じて頭をブンブンと横に振った。
「タツヤ、何やってんの?」
「あ、おかえり」
降ってきた声を見上げると、セイリュウの後ろに、申し訳なさげに立っている夜叉がいた。
彼は、確かに昨日言っていた。
―― セイリュウを、殺しに来た ――
彼の父は竜の父・杏須を殺していて、そして、その時も彼女を狙っていて、今、その息子が目の前にいる。
セイリュウが、隣に座るように促している。
達也は、今、この胸に渦巻くのが、どの感情なのか、判別できないでいた。
そんなに仲良くしないでほしい――――自分がここにいるのに。
そんなに、心を許さないで――――その人は、あなたの命を狙っているヒトなのに。
そんな風に笑わないで――――自分だけの、モノなのに。
何かあったら、どうしよう――――自分には、彼女を護れない。
「タツヤも夜叉も、会ったことはあるよな?」
「うん。ちゃんと話すのは、初めてだけど」
結局、楽しく時を過ごせるように祈るしかできない。達也は、情けなくて仕方なかった。
「何の話してたっけ?」
セイリュウが訊ねる。
「花火大会のこと。僕の知り合いが、会いたいって言ってて、今度の花火大会で会えないかって、そういう話」
先ほどの会話を掻い摘んで、達也は説明をした。
「花火大会?」
「花火大会?」
夜叉とセイリュウの声が揃った。
「セイリュウ、行ったことない?そこの河原で見られるの」
達也の言葉に、セイリュウは、過去を思い返すようにして唸り声を上げた。
「空にね、光の花が咲くんだよ。おっきな音と一緒に」
達也は、不思議そうな顔をしている夜叉へ向けて、『花火』を説明した。
「河原に屋台もたくさん出るから、にぎやかなんだ」
「それは、楽しそうだな」
花火大会の光景を思い浮かべ、夜叉が笑った。
それは、実に楽しそうな笑顔で、達也は困惑しかなかった。
「……うん。お祭り、だからね」
「そうか」
夜叉は、そう呟いて、大きな窓の外に見える土手を見やった。
その目に憧れのきらめきが見えて、達也は小さく笑った。
「今はなにもないけど、どこでやるのか見てみる?」
「いいのか?」
まるで子どものような夜叉の顔。不思議な気分にさせられる――――達也は、セイリュウが夜叉を友だちだと言う理由が、ようやく理解できた。
「――――……お祭り」
小さな呟きは店内の雑音にまぎれて、達也にも、隣にいたセイリュウにも届かなかった。
しかし、その声には確かに、別の声が混じっていた。
食べ終わってから、3人は花火大会の会場となる土手へと歩いた。
ハンバーガー店近くの大橋のそばに、花火大会の会場ができる。会場となる場所には、ステージや屋台設営の資材が置かれていた。それを指差しながら、達也は二人に説明をした。
「いつも、この辺りに屋台ができてて、花火は、もっと海の方から上がるから、橋の方がわから屋台を見て回るんだ」
セイリュウは、それを聞いて想像を膨らませているようだった。すでに目を輝かせて、土手を見つめている。
夜叉も、静かな表情の中に楽しげな色を滲ませて達也を振り返った。
「それは楽しそうだな」
「そこのグラウンドは、ステージか、屋台で埋まるんだ。賑やかだよ」
不思議な気分だった。
目の前にいるのは、確かに「命を狙っている」と宣言した人物なのに、まるで、そのような雰囲気はない。
このまま、何も起きないのではないか――――達也は、そんな気持ちにすらなっていた。
8月7日――――。
OPバーガー、17時30分。
緊張した面持ちで座っている、浴衣姿の少女が一人。
そして、そこから死角になる位置で、彼女のいる席を観察する少年が、三人。
「何で、あなたたちがいるんですか?」
達也は、何故か同席している海吏と海雷を、不機嫌に見やった。
「アイツが邪魔するなって言うからさ、期待に応えようかと思って」
海吏が、人のよさそうな笑みを浮かべ、
「お前こそ、何で、ここにいるワケ?」
海雷が、意地悪ににやりと笑った。
達也の顔が、赤く染まる。達也は、それを誤魔化すように俯いた。
「別に……。ただ、ちょっと……責任感じて」
それも、嘘じゃない。しかし、海吏と海雷は、達也の本音が、そことは別にあると思っていた。
海吏が、クスリと笑う。
「気になるって言えばいいのに。兄ィといい、タツヤといい、素直じゃないねェ」
海雷は、アイスティーをズズッと吸い込んで、少女を見やった。
「つーか、アイツは記憶ないだろ?どうすんの?」
「あ、花火大会のこととか、一緒に行きたがってる子がいることとか、説明はしました」
海吏と海雷は、信じられないと言いたげに、目を丸くして達也を見た。海吏が、ため息をついて漏らす。
「タツヤ、人良すぎ……」
OPバーガーは、花火大会の会場から近く、店内には、少女の他にも浴衣姿の客がちらほらといた。
海雷は、店内を見回しながら訊いた。
「あいつ、何着てくるの?まさかの浴衣?」
「望さんの浴衣です。おばさんに話したら、快く着付けてくれるって」
「男ものかよ……」
三人の視線の先で、少女が顔を赤くして、見惚れるように入り口を凝視した。
同時に、店員の「いらっしゃいませ」の声が響く。
達也が入り口を見ると、いつもと少し違う幼なじみがそこにいた。
「あ、来ました」
達也の声に、海吏も海雷も、入り口近くにいるセイリュウへ視線を移した。
「うわぁ、普通にイケメン」
海雷が呟く。
「似合いすぎでしょ」
海吏が、やや呆れ気味に笑った。
「違和感ねェな」
「初デート感は、すごいけどね」
海吏の言うとおり、セイリュウが少女を見つけ、テーブルを挟んで話をしている、その笑顔は、どこかぎこちなかった。
「……って、タツヤ?」
途中から、何も言わなくなった達也を不思議に思い、海吏が振り返ると、彼は、二人を淋しげに見つめていた。
「なんか……わかってても、イヤですね……」
本音を漏らした達也を見て、海雷が、ニヤリと笑う。
「お?シットか?」
「邪魔してあげようか?早速」
人の良さげな笑みで、海吏は達也を見つめた。
「やめてください……」
大きな窓から外を見ると、祭りへ向かうであろう人たちが、楽しげに通りすぎていく。
西の空へと太陽は傾いてはいるが、暮れるには、まだ時間があるようで、空は明るかった。
花火が始まるまで、あと一時間近くある。それでも、祭り会場へ向かう人の流れは途切れない。
「別にお前を見くびるワケじゃないけどさぁ、海吏。あんなに人がいて、分かるもんなの?」
海雷も、達也と同様、窓の外を眺めていた。海吏は、楽しげにセイリュウを観察している。
「いれば分かるよ。先に来てるなら、後を辿れるけど、そしたら、こっちが見れないし」
達也は、二人の会話を、目を丸くして聞いていた。振り向けば、悩み顔をした二人がいる。
「あの、もしかして……」
二人の会話に割って入る形で、達也が声をかけた。
疑問符を頭に浮かべ、二人は振り返った。
達也は、おずおずと続ける。
「海吏さんも海雷さんも、アニキを護るために、ここに来てます?」
今度は、海吏と海雷が、目を丸くする番だった。最初に口を開いたのは、呆れ顔をした海雷だった。
「まさか、お前、俺たちが本当にあいつの花火デートを邪魔しに来たとか思ってんの?」
「思ってました……」
達也はもうしわけなくて、目をそらした。
それを見ていた海吏が、軽く笑った。
「ホント、タツヤ、俺たちを何だと思ってんの。一応、ここの守護者だよ?」
「そうでしたね」
「タツヤはさ、リュウが俺たちとばっかり過ごしてんのが、イヤなんでしょ?」
穏やかに、しかし、的確にはっきりと告げる海吏。
「え?あ……」
「なら、一緒に来たら?」
海吏の提案は、達也にとって、思ってもみないことで、返答もなにも頭は真っ白になっていた。
「魔術はムリだけど、武術は教えられるし、木刀でよければ、剣術も教えてあげられるよ?」
言葉もなく、達也は海吏を見つめた。
「タツヤさえよければ、だけど」
「僕が、アニキの力になれますか?」
護ってもらってばかりだった自分が、大切な幼なじみの力に。
海吏も海雷も、頼もしい笑みを浮かべた。
「当たり前!俺たちが、教えるんだからな。なぁ?海吏」
「そうそう。まかせといて」
達也は、嬉しげに笑った。
「はいっ!」
その表情を見て、海吏と海雷が顔を見合わせて笑った。
「タツヤが、俺たちに笑ったのって……」
「初めてだな、今日が」
* * * * *
オレンジ色の光に包まれた、非日常の空間が、河原に広がっていた。
片手に水風船ヨーヨー。周囲は、祭に浮かれる人ばかり。
「そっかぁ。じゃあ、タツヤと一緒にサッカーしてんだ?」
「はい。あ、でも、私はサッカーをしてるわけじゃなくて、サッカーしてる先輩たちをサポートしてるというか」
「タツヤ、サッカー上手いの?」
「はい、試合でいつも活躍してます」
照れたように、嬉しそうに答えた彼女を見て、セイリュウも、嬉しくなった。
「タツヤのこと、好きなんだな」
途端に、彼女の顔が赤く染まる。
「え?いえ、そんな!私は、すごいなと思ってるだけで……。でも、あの、先輩をすごいと思うのと同じくらい、尊敬は……してます……」
「尊敬……」
セイリュウは、眉間にシワを寄せた。
「だから、好き、なんだよな?」
セイリュウにとって、尊敬してる、は、好きとイコールだった。だから、わからない。何故、好きを否定するのか。
「えっと、その…………はい」
「あいつ、いいやつだもんなー」
彼女の顔は、更に赤くなり、俯いている。
セイリュウにとっての「好き」は、恋愛感情ではない。それはいつも、「人として」だった。
「先輩、スマホ鳴ってませんか?」
「え?」
言われて、そういえば、と思い出す。浴衣を着せてもらった女の人に、タツヤと連絡が取れるようにと、手渡されていた。
色々と、頭を巡る疑問。
なんで、初対面の女の子に「先輩」と呼ばれるのか、とか、なんで、あの女の人を見たことがあると思ったのか、とか。
手にしていた巾着の中を見ると、確かに、スマホの待受画面が着信を知らせて光っていた。表示されている名前は、「辻口良太」
「(あれ?リョータって、たしか、タツヤの友だち)」
手のひらの中のスマホを見つめ、セイリュウは、わからないと、眉を曲げた。
スマホは、着信を知らせて鳴り続けている。
セイリュウは、通話操作をして、スマホを耳に当てた。
『あ、やっと繋がった!竜?』
耳元で、少しばかり色気のある声がした。
「……リョータ?」
『ハハッ、久しぶり!お前にさぁ、一番に報告したくて、ずっと鳴らしてたんだ。今、平気?』
「……今、祭で……」
セイリュウは、戸惑いのまま、応えていた。
辻口良太は、確実に、自分へ向けて話している。何故、今日借りているスマホに、知らないやつから電話がかかるのか。何故――――。
『あー、花火大会?』
「なぁ、」
『なに?』
「お前、オレのこと、知ってるの?」
『え?なに?』
「だから、オレを、知ってるの?」
『竜、お前、どうしたの?何かあったのか?』
相手は、自分を知っている。自分は、相手を知らない。
「なぁ、リョータ」
この存在に、疑問を抱いた。
「オレは、何者なんだ?」
自分は、一体誰で、なぜ、忘れているのか。
すると、耳元で、小さく笑う声が聞こえた。
『お前は、お前だろ。何があったか知らねーけど、俺、もうすぐ、そっち帰るから。そしたら、色々話聞いてやるよ。待ってろ』
「……ありがと」
揺るぎない声に、少し元気が出た。
『なんだよ。しおらしい声出すなよ。会いたくなんだろ』
照れたような声が返ってきて、セイリュウは、ようやくニッと笑った。
「なら、早く会いに来いよ」
『その言葉、忘れんなよ?』
「はいはい」
『じゃ、花火大会楽しんで。またな」
「あぁ」
スマホの画面が、待ち受けに戻る。祭の騒々しさも、同じように戻ってきた。
「悪い、友だちから電話だった」
笑顔で詫びると、恥ずかしそうに「いえ」と短く答えて、目を逸らされた。
「この後、どうする?なんか食べるもの買って、花火見えるとこ行く?」
「はい」
2人で、食べ物を売る屋台を見て回りながら、何を買うかを話していた。だから、セイリュウは、前方など、気にもしていなかった。なのに、視界の端でとらえた姿から、目が離せなくなった。
数メートル先に、夜叉がいる。
夜叉も、こちらに気づいたようで、すぐに目が合った。
セイリュウの顔には、自然と笑みが浮かんでいた。
「夜叉!」
名前を呼んで大きく手を振ると、彼も笑顔を返してきた。セイリュウは、隣の彼女を振り返り、手をつかんだ。
「オレの友だち。紹介するよ」
戸惑う彼女を連れて、駆け出す。人混みを縫うように、夜叉のところまで。
しかし――――。
「(あれ?)」
違和感に、足を止めた。
何かを通り抜けたような感覚と、誰かの小さな笑い声と、指をパチンと鳴らす音。
周囲を見ると、祭の会場と屋台はそのままに、人だけがいない。
手は、まだ握っていて、女の子はそこにいる。いていい空間ではない気が、セイリュウにはしていた。
数メートル先には、夜叉がいる。口元は優しい微笑みを浮かべているのに、雰囲気が違う。
突然の事態に怯える彼女を、ここから離さなければいけない。セイリュウは、数日前の、樹李との会話を思い出していた。
―― もし、何か危険な状況にあって、そこにタツヤが巻き込まれた時は、水か樹の術でタツヤを護ってろ。そうすれば、俺か、海吏か海雷の誰かが、そこに助けに行ける ――
セイリュウは、深呼吸を一つして心を落ち着けた。
「(樹の術か、水の術)……オレを、信じてて」
彼女を振り返り、できるだけ明るく微笑む。
「絶対、無事に戻すから」
そして、握っていた手を離すと、彼女を護るように、蔓と葉との盾を作った。
直後、後ろで彼らの気配がした気がして、セイリュウは、少し安堵した。
改めて、夜叉に向き直る。
夜叉の手には、剣が握られていた。
いつもの優しい彼の眼差しは殺気に満ちていて、こちらを見据えている。何も言わない。何が起ころうとしているのか、今、この状況が理解できない。
夜叉が、セイリュウに向けて、剣を振り上げた。
「(距離を取らなきゃ)」
思うだけで、足が、体が動かない。恐怖ではない。状況が理解できない、困惑と悲しみ。
「夜叉……」
その剣に、オレンジ色の風が巻きつく。剣の振り下ろされる音と、巻きついた風が放たれる音とが、同時にセイリュウの耳に届く。
息を飲んだ次の瞬間、彼女の体は、後ろに吹き飛ばされていた。まともに、地面に叩きつけられる。
体中が痛かった。
魔術をまともにくらってしまった。
近づく足音が聞こえる。
セイリュウは、必死に体を動かした。半身を起こして、夜叉を見つける。彼は、剣を手にしたまま、こちらへ近づいてきていた。
「…………夜叉は、オレを殺さない」
呟いて、セイリュウは立ち上がった。動かすと、体は痛みを訴えてきた。
「信じる」
何もしないまま、ただ、じっと彼を見つめていた。いつもよりも、真剣な眼差しで。
夜叉が、もう一度、剣を振り上げる。
セイリュウは、身構えて、次にくる衝撃を覚悟した。
しかし、それより早く、セイリュウの後方から、水と樹の矢が無数に夜叉へと飛んだ。
「夜叉ッ――――」
夜叉は、振り上げていた剣を、すばやく構え直して横に払った。水と樹の無数の矢は、夜叉に届く前に薙ぎ払われ、音を立てて消えていった。
「やっぱり、狙ってきたか」
海雷の、強気な笑みを含む声がした。
「ざーんねん。俺たちも、ちゃんと対策してるんです」
続いて、海吏の声が聞こえ、セイリュウは振り返った。
「なんでいるんだよ!」
「お前が、呼んだんだろうが」
「オレが呼んだのは、兄ィだよ!」
「ボロボロのくせしてよく言う」
状況を無視して言い合うセイリュウと海雷の間に立ち、海吏は、二人をひと睨みした。
「後でやって」
「はい」
「はい」
セイリュウと海雷が揃って答え、3人は、改めて夜叉に向き直る。
夜叉は相変わらず、殺気を纏わせ、静かにそこに立っていた。手にしている剣に絡む、オレンジ色の風の渦。
海吏と海雷も、合わせるように、水の術を手のひらに集中させる。
セイリュウだけが、どうしたらいいのかわからずに動けずにいた。
双方から、術が放たれる。
その瞬間、セイリュウの脳裏に、ニヤリと笑う少年の姿が過った。
嫌な予感――――。
「待ってッ――――」
止める言葉は、すでに遅い。
セイリュウの嫌な予感は的中した。海吏と海雷の放った水の槍は、夜叉に届くより早く消えてしまった。
夜叉の術は、消えることなくこちらに向かってくる。
セイリュウが、慌てて氷のシールドを作る。海吏と海雷も、そこに重なるように、急いで水のシールドを作った。
セイリュウの視線の先で、夜叉が剣を横に薙ぐ。
同時に、再び脳裏に過る、少年の姿。そちらに気を取られているうちに、3人分のシールドは砕け散り、夜叉の術がまともにセイリュウとぶつかる。
背を地につけ、痛みに耐えながら、考える。海吏と海雷を止めなければ、と。
二人が、話す声が聞こえる。
「なんで、術が消えんだよ?!」
「夜叉が、今の全部したとか、ちょっとヤバイかも」
声を出したいのに、セイリュウは今、息をするのもやっとの状態だった。
「セイリュウ」
海吏の声がするのと、呼吸が楽になるのとが同時だった。
体が動く。
声のした方へ顔を向けると、海吏が、手のひらをかざして治癒の術をかけているところだった。
「隙をついて逃げるから、今だけちょっと無理してくれる?」
痛む体を起こして、夜叉を見る。彼は、表情ひとつ変えない。
不意に、彼の胸元で、ネックレスがキラリと光った。
夜叉の口元が、弓のように形を変える。纏う雰囲気が、少しだけ、変わった気がした。
「邪魔なんだよ、キミは」
声も口調も、夜叉のものではなく、セイリュウは、彼の手から放たれる攻撃に何の反応もできなかった。
気がついたら、社にいた。
「あれ?」
体は重いが、動かせないわけではないようだった。
「目が覚めたか?」
セイリュウは、樹李の声に応えるように、体を起こした。そして、起きたことを思い出すように、額を押さえた。
花火大会に、達也の後輩と一緒に行った。そこで、夜叉に会って、攻撃を受けた後――――。
「あ……夜叉は?」
心配する彼女の表情を見て、樹李も、海吏も海雷も、ため息をついた。
「お前、自分を自分を殺そうとしたやつに何の用なんだ?」
表情厳しく、樹李は聞き返した。
「だって、海吏も海雷も、攻撃するから!」
「当たんなかったけどなー」
悔しげに海雷が横槍を入れる。その隣で、海吏が両手を後ろについて体を支え、セイリュウを見下ろす形で冷たく見つめた。
「そもそも、何でセイリュウは何もしなかったの」
彼の冷たい視線に、ややたじろぎながらも、セイリュウは反論をした。
「夜叉は、オレにあんなことをする奴じゃないし……なんか、いつもと違ったし……」
そして、体にかけられていた布団を避けて、セイリュウは立ち上がった。
「どこ行くの?」
海吏が声をかけると、セイリュウは、振り返らないで応えた。
「夜叉に会いに行く。探してくる」
樹李は慌てて、出ていこうとするセイリュウの腕を掴んだ。
「やめろ!今何があったか、覚えてないのか?!」
「わかってるよ!でも、だから会いたいの!」
「行かせられない」
「オレは、夜叉に会いたい!」
「ダメだ」
珍しく厳しい樹李の姿を、海吏と海雷は目を丸くして見つめていた。
「兄ィが、こわい……」
海雷が、驚きをそのまま表して呟いた。
「へぇー……」
海吏は、呟いた後でニヤリと笑った。
海雷がそれを見て、再び樹李に視線を戻して観察すると、やがて、同じようにニヤリと笑った。
「まぁ、まぁ、兄ィ」
海吏が、セイリュウと樹李の間に入る。そして、人のいい笑みを浮かべた。
「セイリュウを行かせてあげたら?」
言いながら、セイリュウを掴んでいる樹李の腕を、そっと放してやる。
「海吏!」
樹李の厳しい目が、海吏へ向けられる。
「そうそう。どうせ、止めたって行くんだろ、こいつ」
海雷も、セイリュウに味方をする口ぶりで、樹李の肩にポンと手を置いた。
「なら、行ってボロ負けして、思う存分傷ついてきてもらったら?」
海吏の笑みは、いつの間にか悪戯なものに変わっていた。
「そしたら、こいつもおとなしくなるんじゃねーの?」
二人の無茶な言いように樹李が反論する前に、海吏が続ける。
「兄ィが、夜叉にシットする気持ちもわかるけどさ。無理に止めると、余計燃え上がるよ」
「なっ……なに言い出すんだ!シットなんてっ」
樹李の顔が、ほのかに赤く染まっている。
「はいはい。ムキにならない」
海吏は、ポンポンと、樹李の肩を叩いて、今度は、セイリュウの方へ顔を向けた。
「セイリュウ、行くのはいいけど、今、夜中だよ?とりあえず、明日にしたら?」
少しの不満を残して、セイリュウは、仕方なく布団に座り直した。
「セイリュウ」
樹李の声が、先ほどよりも和らいでいた。
「俺は、お前を護りたい。夜叉は、お前を殺すために、ここに来てる。それは、セイリュウ、お前が紋章を持つ者だからだ」
セイリュウは、手元に視線を落とした。
「前に、夜叉から聞いた。何処にも属さず、何者にも支配されず、全てを統べる者って」
それは、決して喜ばしい噂ではない。
しかし、樹李の表情は、いつもの穏やかなものに戻っている。
「正直に言う。紋章を持つものは、味方にしろ敵にしろ、厄介でしかない。でも、セイリュウ、お前は、これから先の姿とか、生き様とか、見届けたいと思わせる人間だ。俺のただのわがままだけど、お前には、生きてほしい」
「兄ィ……。ありがとう」
「おやすみ」
セイリュウの頭をひと撫でし、樹李は、その部屋を後にした。
海吏と海雷は、顔を見合わせた。最後の樹李の言葉が、気になった。
「おやすみ、セイリュウ」
海吏が、含みのない笑顔でそう言った。
「今は抜け出すなよ?」
海雷が、少し厳しい表情でそう告げて、二人も、部屋を後にした。
そして、二人は、廊下を挟んだその向こう、樹李の部屋の前に来ると、海吏が中へと声をかけた。
「兄ィ、入るよ」
「どうぞ」
静かに襖を引いて、部屋に入る。オレンジ色の球体が、中で幾つか浮かんでいた。樹李は、魔術で作り出したオレンジの明かりの中で、胡座をかいている。
「精神統一?」
海雷が尋ねると、樹李は、困ったような顔で微笑んだ。
二人は、樹李を真ん中に、両横に座った。
樹李が、感情を解き放つように、深く息を吐いた。
「5年前にこだわっているわけじゃないし、アンスさんとの約束に、縛られてるわけでもない。でも、俺は決めた」
心配そうな顔をして、海吏が口を開く。
「なんで、どっちかだけなの?だって、セイリュウが好きなんでしょ?自分で認めてるのに、なんでそれをなかったことにしようとするの。……ツラいだけじゃん」
「海吏、俺がセイリュウを好きで、それをどうにかしようとすれば、この力は失われる。ただのヒトになってしまう」
「そうだけどっ!」
想いを抱える本人よりも、海吏の方が、よほど辛そうな顔をしていた。
樹李は、彼らしく穏やかに微笑んで、宙を見つめていた。
「精霊としては存在できない以上、あの子を厄介だと思う者たちから、護り続けることはできない。……限界がある」
海雷が、後ろに手をついて、ため息を付きながら天井を見上げた。
「ただのヒトが、一人、あいつを護ろうとしてるけどな。護りたいのに、護れない苦しみを抱えたまんま」
「それを見ているから、余計に思うんだ。護る力がある俺は、幸せなんだって。護りたい人を護ることができるから。俺は、それでいい。あの子が傷つかなければ、それが俺の一番の幸せだ」
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