第8話 お父さん
お父さんは優しい、甘やかされてる訳じゃない。悪い事をした時は感情的にならず怒るのではなく叱ってくれる。普段から明るく笑顔にしてくれる大好きなお父さんが今までにない表情で私を見つめている。
「消えるために?何を言っているのお父さん」
もう、『お兄ちゃん』なんて演技で話が出来ない。私はもう普通に『お父さん』と呼んで話をしてしまっている。
「未生、君は僕を呼ぶとき癖で最初に『お父さん』と言いかけるよね。でも杉田さんの時は『美紀さん』と素直に言葉が出てくるよね」
私は黙ってお父さんの話を聞き続ける。
「ここは、僕の憶測だけど僕の本当の恋人は小野さんじゃないのかな?」
「なんで、そう思うの?」
「未生が小野さんを呼ぶとき、『お、小野さん・・』って言っていたけど最初の『お』は『小野』の『お』では無く『お母さん』の『お』じゃないのかな?」
私は自分の癖を恨んだ、そこで気づかれるとは思わなかった。
「そして、杉田さんは小野さんの親戚。未来でも杉田さんと親交があるんじゃないかな?だから『美紀さん』と素直に言葉が出てくる」
その通りだった。この頃からお父さんは考え方が鋭いんだ・・
「そして、決定的なのが未生のあの言葉『女子は多少秘密がある方が魅力的』これは小説とかの流行り言葉じゃない、検索でも出なかった、するとこれは小野さんの口癖だ、このセリフを未来の人が言えるのは未生、君だけだ」
そして、お父さんは悲しい顔をして、
「未生、その腕の
「・・・」
私は何も言えなかった、優しいお父さん、優しいお母さん。私を笑顔にする為に冗談とか言ったりして楽しい家族でとっても幸せなのに両親を不安にさせたくなかった。だからなにも言えなかった。見た目が同年代に見えるから油断して腕まくりをしてしまったのが私の失敗だった。
部活じゃない、クラスの中でいじめがあった。見えない所の腕を叩かれたりもした、でも家と部活は楽しかったので我慢が出来ていた。でも我慢の限界が近づいてきて耐えられなくなっていた。だから私は考えた、お父さんとお母さんが結婚しなければ私は生まれない。でもお父さんには結婚して幸せになってほしい親戚である美紀さんと結婚すればお母さんとの接点も切れないから楽しい生活が出来ると考えた。
「未生・・今の僕じゃ力になれないかもしれないでも相談してほしい、だって未生は僕の父親なんだから」
ああ、お父さんこの時代でも心配をかけてしまってごめんなさい・・
私はハンカチを取り出そうとポケットに手を入れる。取り出した時、お守りが一緒に出てテーブルに落ちた。
「お守り?」
お父さんが聞いてくる。そうだこれは中学生の頃にお父さんがくれたお守りだった。そしてお守りをくれた時、お父さんが『本当に困った時はこのお守りを開けてお札に願いを込めるんだ』言ったのを思い出した。私はお守りを開けて札を取ろうとした時、手紙が入っているのに気付いた。手紙を開く・・
「未生へ、この手紙を見たという事は本当に困った事になっているんだよね。まずは気づかなくて謝るよごめんな未生。でも、その困った内容が僕に話せないと思ったら大間違いだよ。とにかく話して欲しい相談に乗るから、だって未生は僕の父親なんだから」
涙がボロボロこぼれた、お父さんもそしてここにいる高校生のお父さんも同じ心配をしてくれる。一人で抱え込んでしまった。
「未生?!大丈夫?どうしたんだ?」
「ありがとう・・お父さん・・ふふ・・いまはお兄ちゃんかな・・」
体が軽く感じる・・消えるんじゃない未来に帰る時がきたんだ・・
このまま目の前から居なくなったら高校生のお父さんが心配する・・
だから私は涙を拭いてとびっきりの笑顔で高校生のお父さんを見てこう言った
「また、会おうね!お兄ちゃん!」
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