第6話 親戚そしてカレー

テニス日当日。

テニス初心者の杉田さんと小野さんの特訓もあってそれなりに出来るようになった僕とでかなり互角にゲームが出来て楽しい時間を過ごしている。

「友介君が上級者じゃなくって良かった。上級者なら負けっぱなしだもんね」

笑顔で杉田さんが話す。

「そうだね、でも小野さんの誤情報で誘ってくれたからこうやって遊べて楽しいよ」

「ふふ、そうね優子ちゃんが『渡辺君がテニスやってるよ』なんて言うから勝手に私が勘違いしちゃったのよね」


杉田さんが小野さんの事を『優子ちゃん』呼び?小野さんは『杉田さん』って呼んでいるのになんか差を感じるな・・聞いてみるか・・

「あれ?小野さんとは仲がいいの?普段そんな風に見えないけど」

「あ、優子ちゃんは親戚なのよ。母方の親戚だから苗字が違うけどね。学校では苗字呼びしているし、親戚同士って目で見られるのが嫌だから二人で相談して、あえて親戚って話していないの」

「なるほど・・わかったこの事はあえて話さないようにするよ」

「ありがとう、友介君」


あれ・・今気づいたけど僕の事『渡辺君』からいつの間にか『友介君』って名前呼びされてるぞ。それだけ親近感をもってくれているのかな?そしたら凄く嬉しいな。

「じゃあ、友介君帰りにハンバーガー食べて帰らない?おすすめのハンバーガ屋さんがあるの」

「うん、いいね。じゃあ食べて帰ろう」

やっぱり親戚だけあって考える事は似ているなと僕は思った。


別の日、喫茶店「コーヒータイム」に僕と未生がいる。作戦会議だ。

「おと・・お兄ちゃん、これからが正念場よクリスマス・お正月・バレンタイン恋愛イベントが沢山あるんだから」

「でもな、どうやっていけばいいかわからないよ」

「はぁ・・やっぱりお兄ちゃんは奥手だなぁ・・もう、ビシィ!バシィ!っと攻めて行かなきゃ」

「擬音が多すぎてわからないよ」


そこに店長がやって来る、作戦会議はここで行うので常連っぽくなり店長との面識もそれなに出来てきた。

「お客様、ちょっといいですか?お腹は空いてますか?」

「まあ空いてますがどうしました?」

「今度『寒い冬こそのホットカレー』というカレーを提供しようと考えているのですが試作で食べてみて感想を聞かせて下さい。お代はいりません」

すると未生が目を輝かせて、

「え!あの定番ホットカレーですか?」

すると店長は不思議な顔をして、

「???いえ、まだお店では提供してないですよ?」

あ、未生の時代では定番になっているんだな、僕は会話を遮って、

「あー、店長!是非食べさせて下さい!お願いします」

「はい、わかりました。お持ちしますので少々お待ち下さい」

店長が厨房に戻る。誤魔化せたかな?未生は気まずい顔で

「ごめんなさい、私ここのカレー大好きなのだから喜んじゃった」

「気を付けなよ、まだこの時代じゃ試作でメニューに無いんだから」

「でもね、ここのカレー凄い辛いわけじゃないけど汗が出るのよスパイスが効いているからとっても美味しいの」

「それは楽しみだ、未生は新メニューの立会人になるのか凄いな」

「うん、私もビックリだよ」


カレーが運ばれて来るスパイスの効いたいい香りだ。

「いただきまーす!」

「いただきます」

カレーを口に入れる、激辛では無いけど程よい辛さでとても美味しい、

「未生、美味しいねこれ。これは定番メニューになるね」

「でしょ、でもこれからが凄いのよ」

ん?あ・・熱いスパイスの影響か体がホカホカして汗が出てくる。僕は腕まくりをする。

「本当に体が温まるね」

「でしょ。私も熱くなってきちゃった」

未生も腕まくりをする。

その時、僕は驚いた、未生の腕にはいくつものあざがあった。

「未生、その腕の痣どうしたの?」

未生は袖をさっと戻し

「なんでもないよ、部活で転んだりして出来た痣だからすぐ直るよ」

僕は心配になった。色々と・・

「未生、本当に大丈夫?肌のケアをして跡が残らないようにしなよ」

「ありがとう、お兄ちゃん。沢山練習して『球拾い』じゃないエースになってみせるね」

「ああ、頑張ってエースになってテニス教えてくれよな」

「うん!頑張るね!」

いつもの未生の笑顔に戻る。もう安心・・なのかな?この後、店長のカレーを絶賛し、カレーは冬の定番メニューになるのだった。

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