第4話 友達

あの日以来、杉田さんと学校でも話しかけられたりする様になった。初めて会話した時の興奮っぷりが秘密であって後は隠すつもりはないみたいだ。


突然の僕と杉田さんとの関係に男子生徒が素早く反応する。

「友介、お前何があった?」

「弱みでも握ったのか?」

「毒盛った?」

ひどい言われようだ。まあ、ある意味、未生からの助言はあったけど。

「渡辺君が、毒盛るわけないでしょ、催眠術ね」


突然何を言うかと声の主を見てみると、グループで遊びに行く『小野 優子』さんがそこにいた。

明るい性格でダジャレも言うムードメーカー的な存在だ。

「小野さん、僕にそんな力がある訳ないでしょ」

「わかってるわよ。男子は杉田さんの事『高嶺の花』なんて言ってるけど本人はそんな事ない普通の女の子よ。でも自分の事知らないのに見た目だけで話しかけてくる男子は苦手みたいね」

なるほど、だから『ボクシュ』から入った僕には普通に話しかけるのか。

「まあ、渡辺君は数少ない男友達の一人なんだから優しく接してあげなさいよ」

友達・・僕は杉田さんと『友達』になっているのかな?

「小野さんありがとう。優しいね」

「そりゃそうよ。名前が『優子』だもんね。ふふん」

笑いながら後ろ手に手を振って去って行った。


廊下を歩いていると杉田さんがこっちに向かって走ってきた、

「あ、渡辺君、居てよかった。話したかったの。おすすめの小説よかったら読んでほしいなって持って来たの」

「ありがとう、いつ返せばいい?」

「じっくり読んで満足したら返してくれればいいわ。急がせて流し読みだと悲しいから。友達なんだからいつでもいいから感想聞かせてね」

本人から『友達』って言われてこんなに嬉しいものなんだ。認めてもらえたんだなって思う。


帰り道歩いていると声をかけられる、

「お父・・お兄ちゃん」

「未生、第一声の時に言い間違えるよね」

「だって習慣だもん、『お父さん』って言うのは、お兄ちゃん」

ああ、ややこしい。この件に関して突っ込むのはやめよう。

「それはそうとお兄ちゃん『友達』になれたからって満足してないよね」

「そ、そんな事ないよ」

「はぁ、お兄ちゃんのその癖、図星言われて慌ててるでしょ」

「なんでわかるの?!」

「それは娘だもん、お兄ちゃんのその仕草」

どんな仕草か解らないけど気を付けよう。(突っ込まないぞ)

「いい?最終目的は『恋人』だからね!忘れてないよね!」

「忘れてないよ、未生に関わる事だからそこは忘れてない。絶対!」

「・・やっぱり優しいな。お父さんは・・」

「ん?聞こえなかった。なんて言った?」

「なんでもないよ。そして次の作戦はこれです!」

未生はラケットを取り出した。

「テニスです!お兄ちゃんにはテニスをしてもらいます」

「未生、僕やった事ないよ。運動はそんなに得意じゃないし」

「大丈夫!部活でエースと言われたこの私に任せて!」

未生はスポーツが得意なのか、母親が運動できるのかな?

「じゃあ、明日の土曜日、市民テニスコートに集合ね。よろしく!」

明後日は筋肉痛かな不安を抱えつつ未生と別れた。

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