第3話 本屋にて、出会い

14時45分駅近本屋のラノベコーナーにやって来た。

『僕は主人公になれない 新刊発売中!』

店員の手書きホップが飾られている。

来る人来る人が本を手にしてレジへ向かう、

人気作なんだなと改めて実感する。

未生のおかげで内容と要点はバッチリだ、個人的に話の内容も気に入った話だったので読みやすかった。

あとはどうやって話しかけるか、他の人みたいに僕に気づかずに本を手に取ってレジに行ってしまうかもしれない。

気を落ち着かせるために新刊を手に取り背表紙の文章を読もうとした時、気配を感じた。

「あれ?渡辺君?」


そこには杉田さんがいた、まさか向こうから話しかけてくるとは思っていなかった。想定外だどうしよう・・

「渡辺君も『ボクシュ』読んでるんだ!意外だなラノベとか読まないタイプだと思ってたから」

僕は驚いた学校では見せない興奮ぶり、よっぽどこの本が気に入っているのが判った、略称も『ボクシュ』って初めて知った。教えておいてくれ我が娘よ・・

「そうなんだ、僕は他の本はあまり読まないけど、この本は気に入ったんだ」

嘘ではない気に入ったのは確かだ、昨日からだけど。

「渡辺君はどの辺りが気に入ったの?」


来た!『感動ポイント!』未生がマーカーを引いたところだ!

「主人公の『君じゃなくても感動するけど、君が言うからもっと感動できる』ってセリフかな、ガツンときたね」

すると杉田さんは目を見開いて驚いた様子で、そして満面の笑みで、

「一緒だよ!私もそこ凄く好きなセリフ!嬉しいなぁ同じ考えの人がいて!」

なんか罪悪感が凄い、詐欺師ってこんな感じかな?いや詐欺じゃないぞ。

「あ、ごめん。ちょと興奮しすぎちゃったわ。この興奮気味な私の事はみんなに内緒にしてくれる?『二人だけの秘密ね!』ふふ」

『二人だけの秘密ね!』はラノベの引用、本当に好きなんだなこの話。

「あ、そうだ!今日の本の感想を知りたいな、よかったら電話とメールの交換してくれるかな?」

え?今なんて言った?学校では男子から聞かれてもメール交換断っているのに向こうから交換したいって?未生これは凄いぞ一気に進展しているぞ。

「うん、いいよ。物語の話が出来て嬉しいよ」


そして、杉田さんとのメール交換が終わり帰り道ふと気づいた、

あれ、新作の話はどう読もうか、感想が杉田さんと違ったらどうしよう。

「お父・・お兄ちゃん!」

後ろから声がした、振り向くと未生だった。

「あ、未生いいところに。新作の対策マーカー本ある?」

すると笑顔で未生は、

「無いよ」

「え?無いの?価値観が違ったらどうするの?」

「大丈夫だよ、最初のマーカー本はきっかけを作る為のものだから、あとはお兄ちゃんの感性で話せばいいの、これ以上は作らないお兄ちゃんの感性でぶつかって」

「わかった、しっかり読んで感想を話すよ」

「あと、美紀さんは熟読するから読み終えるのに2日はかかるから、2日後にメール送ってあげてね、じゃあねバイバイ!」

未生は走ってどこかへ行った、どこに泊まったりしてるんだろう。


その夜、僕は『ボクシュ』を熟読した。マーカー無しでも凄く面白いラノベだ、これは誰かと感想を言い合いたい2日後を楽しみに僕は何回も読み返しをするのだった。

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