第5話

「この忌々しい、地潜りはおろか草木も満足に生えぬ地面を作ったものか。そんなもののどこが賢く尊いのだ!」


ヘビはすっかり噛みつく相手を取り違えていて、カエルの術中にいました。

しかし、このままだといかりが通り過ぎて何かの拍子でバクリとやられてしまう心配があります。かといって、ヘビとの話を止めてもバクリとやられます。

何とかここはニンゲンを担ぎ出して、ヘビの気を引き続けるしかありません。


「ごもっとも!ごもっとも!ところが、ニンゲンはあたくしたちの助けになることもあります」


「同胞以外のものから恩に預かった覚えはない」


「ほんとうに覚えはありませんでしょうか。たとへば、いっとき異国の言葉を扱う余所者のタヌキどもが威張り散らしていたでしょう」


「それは覚えているとも。何にでも襲いかかる気性がやっかいなタヌキか。一度鉢合わせてほうほうの体で逃げたことがある」


ヘビは大変厭な思いをしたようで、掘り起こされた覚えにゾウと顔を青くしてとぐろを巻きました。


「やはりあなたさまも経験がおありでしたか。しかし、あのわきまえ知らずが、ちかごろはとんと見ませんでしょうが。あれを払ったのがニンゲンです」


「なんと。確かにやつらを見ることはとんと無くなった。ニンゲンとやらが退かしたのか?」


「へい、なんでも全体の兼ね合いを保つために払ったとかで」


「兼ね合いだと?どういう意味だ?」


「へい、あたくしはたいそうなオツムを持ち合わせておりませんので、満足に説明を差し上げれませんが、等しく生き物たちが暮らすためにタカの目よりうんと高いところから全部を眺めているそうです。草木も植えたりします。」


ニンゲンというものがやらかす仕事にたいそうヘビは驚きました。

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