第4話

「飲んでみればわかります。しかし、飲まれちゃあ、あたくしも助かりませんので、やはり命乞いをします」


都合のよい言い分にヘビは苛立ち、カエルの『言葉』に噛みつき始めました。


「嘘を吐くな!オマエの模様、かたち、色はわたしが知っている好物のカエルそのものなのだ。毒など持ち合わせておらん。そうであろう」


しかし、カエルは必死に弁明します。


「色や形で判断しないでくだせえ。見た目は似ていても、そいつらとは違うものでございます。なにとぞ、お見逃しを、なにとぞ」


ポロポロと目に雫を溜めてはこうべを垂れて落とし、また雫のおかわりをしてはこうべを垂れて落とし、何度もカエルはうったえました。


「見逃す?目のまえのご馳走を前にしてそんなことをするものなどいるものか」


すっかりヘビはカエルの言葉に噛みつくことに夢中で、それらをすべて飲み込むまではカエルを飲んでやろうという気配が見当たりません。やりくいさえ上手に出来れば、いのちを繋げるのではないかと考えたカエルはヘビとの会話を繋ごうとします。


「おりますとも!たとへばニンゲン」


「ニンゲンだと?それは何者だ?」


聞いたことがない生き物の名前にヘビはまた関心を持ってしまいました。


「この道を作った生き物です。ニンゲンは賢く尊いので色んなことが出来ます」


カエルは卵から生まれてオタマまでの時分、ある家の水槽に飼われていたことがあったので、ニンゲンのことをよく知っていました。


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