第28話 運命停止
その記憶を見た瞬間、俺はシオンの頬から手を離した。
すると、記憶が流れ込む現象もとぎれたようだ。
シオンがあんな事を想っていたなんて。
「しおん、ごめん。おれ、おまえのことなにもしらないで」
簡単にあきらめようとしていた自分に腹が立った。
シオンはもうずっと、何年も苦しんで、足掻いていたというのに。
俺は、萎えそうになっていた自らの意思を鼓舞する。
シオンだって、あそこまでできたんだ。
魔人をまた封印状態に戻す、なんて方法を調べ上げたんだ。
なら、俺だってできるはずだ。
もっと違う方法でためせば、きっと打開できるはずだ。
諦めなければ、運命は打ち破れる。そのはずなんだ。
――スキルの解放条件を達成しました。即殺スキルが発動します。
――別スキルの発動によって、運命停止スキルがキャンセルされました。
けれど、そんな俺の意思をあざ笑うかのように。
その変化は、やっと手にした感情に、水をかぶせた。
「ぁ」
ぐら、とシオンの体が倒れる。
「なっ!」
慌てて受け止めると、シオンのうめき声が聞こえた。
俺は言葉を失うしかない。
「な、なにが……、どうし……」
胸をおさえて苦し気にするシオン。
その原因は何だ。
唐突に、彼女がこんな風になるわけがない。
なら、まさか、そんな。
その原因は俺が作ったのか。
「お、おれがしおんを……?」
「ちがい……らっくす、さま」
「しおん!」
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