第5話 メイドのシオン



 俺は5歳になった。

 でもあいかわらず、暇。


 時々家の手伝いをしながら、暇をもてあましていると、部屋に使用人がやって来た。


「おはようございますラックス様。ご飯をお持ちしましたよ。ご気分はいかがでしょうか」


 紫色のボンキュッボンさん。

 それだけじゃ分からんだろうから、もう少し説明するけど。


 できる秘書風な見た目のお姉さんだ。

 紫の長い髪を腰までのばしていて、凛としたたたずまいが魅力的。

 意志の強そうな琥珀色の瞳は、いつでも強い光を放っているが、子供には優しい視線を向ける。


 家の中で読書していた俺は、シオンに気づいて挨拶する。


「おはようしおん。きょうは、はやかったな」

「お客様がいらっしゃいましたので、厨房の方達がそちらの方にかかりきりなのです」

「そうか、ならしかたない」


 我ながら、物分かりの良い、子供らしくない返答だなと思う。


 おかしく思われないかなと思いつつも、口調を改められない。


 前世分を足すと、俺の中身、十代過ぎてるし。

 それなりに大人の苦労にも想像が及んでる年頃であるわけで、あんまり我が儘を言うのもどうかと思うのだ。


 それになりより、そんな俺の態度に慣れてる家の人間とか使用人とかしかいないからなこの家。


 それが当たり前みたいな。

 えっ、何それ、こっわ。


 天才しか生まれてこない家なの? この家?


 それなりに高名な家らしいから、俺の将来の立場ってどうなるんだろうな。


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