無闇に撮ったら厳禁

人 物

春日綾女(17)新宿高校二年生

西島丈(40)警視庁公安

大城光(17)綾女の友人の彼氏。畑中組構成員

公安の男性

○代々木公園・桜並木前(夜)

   街灯に照らされる道。

   そよ風が吹き、桜の花びらが散る。

   春日綾女(17)、スマホを桜並木に向ける。

   一枚、撮影する。

綾女「うん、ばっちり、夜桜も綺麗」

   スマホの画面には桜並木と散った花びらが表示されている。

   綾女、嬉しそうにスキップして、道を進む。

   カップルが座るベンチが見える。

   男性は大城光(17)。

   綾女、そのベンチの遠くで足を止める。

   綾女、目を凝らし、

綾女「あいつは…加奈子の彼氏じゃないか?隣の女、誰?」

   綾女、木の後ろに隠れ、スマホをカップルに向ける。ズームさせ、撮影する。

   綾女、撮影した画像を見て、

綾女「加奈子に送信と。悲しむだろうな…」

   綾女の後ろの茂みで忍び声が聞こえる。

   綾女、それに気づき、後ろで振り向く。

  西島丈(40)と男性、険しい表情で向かい合っている。二人は黒いスーツ。

   綾女、木に隠れて、聞き耳を立てる。

西島「そうだ…春日綾女を…れ」

   綾女、耳に手を当て、耳を済ませる。スマホを握りしめる。

綾女「(小声で)なぜ、私の名前が?それにしても聞き取れないわ」

西島「…捕まえ…殺…せ…」

綾女「え?殺される!?」

   綾女、青ざめる。後退りする。

綾女「に、逃げなきゃ」

   綾女、枝を踏み、パキッと音がなる。

   西島と男性、綾女に注目する。

西島「春日綾女!?」

   綾女、涙目になり、後退る。

西島「おい、春日綾女を確保しろ」

男性「おう」

   男性、綾女に走り、詰め寄る。

   西島、走り出す。

   綾女、必死に逃げる。スマホを握りしめながら。


◯代々木八幡商店街・大通り(夜)

   人達が疎らに歩いている。

   綾女、人を避けながら、走る。スマホは握りしめられている。

西島「すいません、通してください」

   西島と男性、人との間を掻い潜り、走っている。

   綾女、振り返り、絶望な表情。足を速める。

   西島、息を切らしながら、

西島「春日綾女、止まれ!」

綾女「誰が止まるか」

   綾女、角を曲がる。


◯同・狭い通路(夜)

   綾女、辺りをキョロキョロと見渡す。

   暗い路地が目に留まる。直様、路地に入る。


◯同・裏路地(夜)

   綾女、トラッシュコンテの後ろに隠くる。スマホを握りしめ、じっとする。


◯同・狭い通路(夜)

   西島と男性、路地前に足を止め、辺りをキョロキョロと見渡す。

西島「ちっ、どこ行った?」


◯同・裏路地(夜)

   綾女、陰から顔を少し出し、息を殺す。


◯同・狭い通路(夜)

   西島、一瞬路地を見る。


◯同・裏路地(夜)

   綾女、顔を隠し、目をぎゅっと瞑り、スマホを握りしめる。


◯同・狭い通路(夜)

   男性、道の先を指差し、

男性「あっちに行ったのかも」

   西島、路地の中と先の道を交互に見る。

西島「あぁ、行くぞ」

   西島と男性、道の先に走っていく。


◯同・裏路地(夜)

   綾女、壁に凭れ、緊張が解かれたように安堵をする。立ち上がり、路地から顔を出し、キョロキョロと見渡す。ゆっくり路地から出る。


◯同・狭い通路(夜)

  綾女、スカートの埃を手で叩く。

  綾女、西島達が向かった先と反対方向に走ろうとする。

大城「やぁ、こんなところでどうしたの?」

   綾女、ビクッと体が跳ねる。素早く後ろを振り向く。

   大城、笑顔で手を振って立っている。

   綾女、安堵する。

綾女「(深く息を吐く)何だ、あんたか」

   だが、綾女、直様真顔になる。

綾女「今はあんたと相手している暇ないの。(手を振って)危ないからどっか行って」

   笑顔のままの大城。

大城「まぁ、そう邪険としないで。君に用事があるんだ」

綾女「わ、私に?」

大城「そう、厳密には君のスマホの方だけどね」

綾女「えっ?」

   綾女、抱えるようにスマホを胸の前でギュッとする。そして、後退る。

   大城、少しづつ迫る。

大城「さっき公園でちかちゃんと居たのを写メ撮ったでしょう?それ消してくれる?」

綾女「ふん、それは聞けないね。ただ、私の親友に送ってからなら、そのお願い聞いてあげてもいいけどね」

   大城、笑顔でゆっくり迫る。

   綾女、後退る。

   大城、ゆっくり迫る。

   綾女、後退る。だが、壁に背がぶつかる。

綾女「し、しまった」

   大城、壁に腕でドンと打ち付ける。

大城「(笑顔で)さぁ、スマホを渡して」

   大城、スマホに手を伸ばす。

   綾女、大城の股間を蹴る。

大城「うっ」

   大城、股間を押さえて、怯む。

   綾女、大城を掻い潜り、走り出す。

綾女「へっ、自業自得だわ」

西島「おい、見つけたぞ」

   西島と男性、走ってくる。

   綾女、驚き、一瞬怯む。

綾女「げっ、グズグズしすぎた所為で見つかった」

   綾女、必死で走る。


◯閑静な道路(夜)

   綾女、息を切らせ、必死で逃げる。後ろを振り返りながら。スマホを手に握る。

   西島と男性、息を切らせ、追い掛ける。

綾女「もう、何で私を狙うのよ」

西島「おい、もう…止まってくれよ…」

綾女「誰が止まるもんか」

西島「無理矢理にも確保してやる」

   男性、足を躓き、転ぶ。

   西島、足を一瞬止めるが、

男性「俺に構うな、早くいけ」

西島「すまん」

   西島、走り出す。

   綾女、角を曲がる。

◯曲がった先の閑静な道路(夜)

   綾女、足を滑らし、地面に倒れ込む。表情を歪む。

西島の声「おい、待てよ」

   綾女、角を見つめる。

綾女「ま、まずい…」

   綾女、立ち上がろうとするが、膝を押さえる。膝は血で滲んでいる。痛みを我慢しながら、立ち上がり、足を引き摺り歩く。

   足音が近づいてくる。

   綾女、焦る顔。目を瞑る。だが、路地の中から手が伸び、綾女の腕を掴む。

   綾女は引き込まれる。

   西島、角を曲がってくる。

西島「逃さねえ…ぞ…」

   通路には誰もいない。

   西島、足を止める。

西島「足が速い奴め」

   西島、走り出す。

◯同・狭い路地(夜)

   暗闇にしゃがむ大城と綾女。綾女の手を握る大城。通過する西島。

大城「行ったみたいだな」

   綾女、手を払い除け、後退る。スマホを胸の前で握る。

綾女「お礼は言わないわ」

大城「(笑顔で)ははは、助けた訳ではない

から」

  大城、近づき、スマホに手を伸ばす。  

大城「邪魔者は居なくなった」

   綾女、後退る。

綾女「あんた、しつこいね。あの写メは消させないわ」

大城「あの写メに用はない。まぁお前は抵抗せず、早く渡せ。今なら命だけは取らないでおこう」

綾女「は?何を言って?」

   大城、手を伸ばすが、西島に手を掴まれる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る