12.全然書けてねぇ…







 早速のところ俺はなんかよくわからん場所に行くことになっとぁけなのだが――


「なんでお前までついてくるんだ。緑子」


 緑子は顔を赤らめ、そっぽを向いて呟く。


「お前があんな恥ずかしい言葉を言わせるからだろっ!バカっ!」


「誤解が激しいが、別に変なことを言わせた覚えはない。10年経ってから俺を口説け」


「10年経ったら受け取ってくれるのか?わたしの好意を」


 緑子は俺を静かに見つめていた。俺はどうすればいいのか分からなかった――とでも言うと思ったか?


「ないな。可愛いからと言って誰からも愛されると思ったら大間違いだ。俺はそういう奴が嫌いだ」


「あら。可愛いだなんて、昼間っから惚気ているわね」


「…」


「……」


「………」


「何故何も言わないのかしら。ねぇ、なんで黙っているの?」


 俺たちの目の前には倒れている謎の人物がいた。声からして女のようだが、古い傘で顔が隠れていて分かりはしない。ただ、服も汚く、とりあえず、なんだか関わりたくはない。


「俺たちは何も言わなかった。聞かなかった。おーけぇい?」


「おー、いえーすっ」


「あなたたち、設定を忘れているんじゃないかしら」


 一体なんのことだろうな。


「で?クソババア。お前はなんで」


「誰がババアじゃい!」


「なあ、フランちゃんこのば」


「だから誰が行き遅れたおばさんじゃい!」


「いや、そんなこと言って――」


「緑子。あまりまともに取り扱ってはいけない部類らしい」


 というか、会話文で稼ぎ過ぎなのだ。いくら話が思いつかないからってな。


「で?お前は何者なんだ。なんでクマの餌にされそうな恰好で路上に死んでいるんだ?」


「そう…私が見えるのね…」


 ぶちっ。


「いっ、いやぁっ。そんな乱暴にしないでぇ!」


「うっせぇ!さっさと話せ。面倒臭いんだよっ!」


 幽霊に触れるわけねぇだろ、バカ。


「そうね。これには深いわけがあるの」


 そして女は語り始めた。




「お腹減って倒れちゃった。てへっ☆」




「ぶち殺すぞ」


「あら。なんでそんなに殺気立ってるのかしら?処理できていないの?」


「女が男の事情に口を挟むんじゃねぇ!」


 俺は石を拾い投げようと構える。


「あら。そんな物騒なことしないで欲しいわ」


 女は頭から傘を外す。


 絹のような黒い髪が広がる。髪が撫でる肌は白く、その顔立ちは奇妙なほどに美しい。整い過ぎた顔立ちのせいか、いささか印象が薄い顔だった。




「うふふ。わたしの美貌に驚いているわね。わかるわ。その気持ち、とっても良くわかるわよ」




「無駄に行使うんじゃねーよ。それと、道端でぶっ倒れたまま言われてもこっちが反応困るぞ」




「きれいな人……」




「おーい、緑子さん?お気持ちは分かるんだけど、行無駄に使わないでね。俺まで無駄遣いしてるように思われるから」


「ほんとそうやって脱線するから無駄に長くなるのよ」


「おめーにだけは言われたくねぇ!ぽっと出でなんかよくわからんやつになんでよく分からんことを言われんとならん!」


 そろそろ締めねぇとグダグダになる。


「で、お前はなんでそんなところで倒れてるんだって、聞いたな!腹減って倒れてるんだったな!」


 無駄なやり取りが多すぎて忘れたわ!


「ええ。なので何か恵んでくれないかしら」


「食うものなんて…」


 あることにはあるんだ。おにぎりが。だが、貴重な白米だ。誰とも知らんヤツに渡すわけには…


「あら。女の子にあんな恥ずかしいことを言わせておいて――」


「それは最初にやったどころかお前も聞いていただろう」


「そうね。でも、真面目な話」


 女は上体を起こし、冷ややかな瞳で俺を射抜く。


「倒れていて今すぐにでも空腹で死にそうな人がいる。でも、あなたは貴重な食料を持っている。でも貴重で渡したくなんてない。そんなとき、あなたはどうするの?倒れている人を放っておくのかしら。それとも、大切な食料をみすみすくれてやるバカなのかしら」


 まったく、こんなもの、話にもならない。


 答えなんて簡単に出てしまう。


 誰だって自分が大事だ。人間なんてそんな存在だ。それが当たり前だ。だから俺は当たり前のことをするだけだ。


「なんのつもりかしら。バカなの?」


「お前、飯を恵んでやった恩人に対してその態度はなんだ」


「何故?どうしてわたしなんかに食べ物を渡すの?」


「はっ。ただでやるわけじゃねぇよ。当たり前だろ」


「らんぼ――」


「長くなるからいい!」


 そこそこ今回の尺おしてるんですよっと。


「条件はこうだ。ともだちになれ」


「は?」


 女は危うくおにぎりを落としかけてあたふたとした。


「何を言ってるの?バカなの?」


「ホントバカだよな。ああ。まったくもってイライラするほどのバカ野郎だ」


 ただな、一瞬思い浮かんだだけなんだよ。腹を空かせている俺にともだちになるよう強要しやがった幼女の顔がな。


「白蓮」


「あん?」


「ともだちになればいいんでしょう?なら、名前くらい教えないとダメじゃない」


「あー。そんなことあったな」


「あーってなによ。あーって」


 というか、桃太郎か!




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