点と線
湯野正
点と線
私、
幼馴染以外には両親にも話していない秘密の能力だ。
と言っても大したものではない。
人から人への好意が線として見えるのだ。
弱い思いなら細く、強ければ太く見える。
これだけ聞いたら便利な能力だと思うかもしれないが、これがそうでもないのだ。
まずこの能力には欠陥がある。
どちらからの好意なのかわからないところだ。
ただの線なので、矢印のようにどちらが先端というのがない。
とても太い線で結ばれたカップルがいて、羨ましいなと思っていたら数日後に別れたということがあった。
どちらかの好意だけが強くて、片方は冷めていたのだろう。
これのせいで小さい頃恋のキューピットをしようとして何度もミスをして、幼馴染から「お前ってクソ鈍感だよな」などとよく言われるようになってしまった。
更に、この能力は見たくないものも見えてしまう。
両親の間の線がだんだん細くなっていくのは、とても辛かった。
もちろん悪いところだけじゃない。
どんどん太くなっていく友達とその彼氏の間の線とか、いつまでも変わらない近所のおじいちゃんおばあちゃんの間の線とか、素敵なものもたくさん見せてくれる。
そんな能力に、最近一つ謎ができた。
いつからか幼馴染の胸の辺りに大きな黒い丸が見えるようになったのだ。
その事を相談してみたら、彼は大きくため息を吐いて––。
「お前ってクソ鈍感だよな」
といつものように言った。
点と線 湯野正 @OoBase
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