第11話 翼の婚約者
病院に救急搬送された翼を私は見つめる。
幸い刺された傷は深くなかった。
麻酔で眠る翼の呼吸は荒くはないから少し安心した。
命に別状はない。
警察が来て軽い事情聴取を受けた。
翼の意識が戻ったらまた警察は話を聞きに来ると言う。
私は翼の左手を握りしめながらウトウトし始めていた。
「良かった。死ななくて」
私には翼の顔を見ていることしか出来ない。
翼。私のために私を守るためにごめんね。ありがとう。
カツカツカッ…とヒールの甲高い音が響いて病室のドアが開いた。
「翼さんっ!」
見たことがある子だった。
この子が翼の婚約者か。
直感で気づいた。
私は
彼女は翼の婚約者は私を睨んでいる。
私は相手を睨みつける元気はなかったしそんなことはどうでも良かった。
翼のことだけしか頭になかった。
秘書部の子だった。
私と入れ替わりに入って来た新人さんだ。
「田園です。
彼女は怒りながら挑戦的に私を見ている。
背は低いが凄みがあり磨かれた美しさを備えていて、いかにもお嬢様という雰囲気だった。
田園ってそういや。
社長の娘か。
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