第6話 耳元で
耳元で囁かれる愛の言葉と熱い吐息にゾクリとした心地よさを感じる。
「愛してるよ」
ならばなぜあなたは婚約者と別れてはくれないのだろう。
ふうっ…。
ひとつ切なげに翼の胸でため息をついたならば、すかさず更に抱きしめられて裸同士の肌が触れ合うとそのぬくもりに喘ぎ声が出る。
「感じるのか?」
「んっ…」
「答えてみろよ」
意地悪く笑う翼の顔は明らかに愉しんでいて会社の
「答えないともっと色々しちまうぞ?」
それはそれで良いわとどんどん自分の中の女性の
私は今までのどんな恋愛とも違う深い愛の
彼は上手い、のだ。
さすが人たらしだと思った。
女心の扱いもベッドでのテクニックも。
この人と離れられるのか?
なぜ知ってしまったんだろう。
体の隅々まで愛される悦びを感じて知ってしまった。
刻まれる特別な時間。
こんな心地の良い愛撫の時間がいずれはなくなってしまうなんて。
私は翼に抱かれる胸のなかで力強い男らしい腕に体を絡めとられながら、一粒だけ涙を流した。
翼にはきっと分からなかっただろう。
私が泣いているなんて気づいていないはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。