第5話 翼の部屋で

 仕事が終わったらすぐに向かう。

 早く会いたい。

 急いで向かう近藤係長の家はもう何度目の訪問だったか?


 今夜も熱い情事が待っているのだろうか。


(早く翼に抱かれたい)


 最近の私はおかしい。

 自分でも色気のことばかり翼と交わすベッドでのキスや翼の肌の感触やスーツ姿ではない裸の姿ばかり考えてしまっていた。


 係長を翼を満足させられ続ければ婚約者を捨てて私の方に来てくれるんじゃないかと淡い期待をいつしかいだいていた。


 デパートで新しい下着をいくつも試着して少し際どいデザインの物や可愛いもの黒の下着や少し透けた感じのものを選んでいく。

 翼が好きそうな組み合わせも新調していった。


 翼に夢中になればなるほどに私はどんどん大胆になっていく。


 深みにハマっていく。

 

 いつか必ず辛くなるのは分かっていたのに。


 このあいだは煙草が苦手な私に気を使ってベランダで煙草をくゆらす翼の後ろ姿に、胸がぎゅうっと切なくなって結局私はベランダに出た。


 私が後ろから翼の背中を抱くと彼は笑った。


「もう一度したくなったのか?」

 翼は私に抱かれたまま私の腕に左手を添えた。

 煙草を持つ右手は所在なさげに空中に止まっていた。


 ゆらゆらと煙が上がっていた。

 

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