第2話あるものの適正
クラス判別式場
「ふぅー、ここかぁ。さて、カリンはど~こだ?」
その年は例年より少し適正年齢の子供が少なく、去年より少しさみしい。しかし、飾り付けは変わらず緑を基調とした派手なデザインだ。
「あ!いたいた。兄さん、こっちこっち!」
カリンが式場に着いたばかりのエクスを指定の席に呼ぶ。
「さっきぶり。あれ?母さんは?」
「腹が痛いから、トイレ行ってる。」
「おいおい。大丈夫か?」
「大丈夫。兄さんもわかるでしょう。母さんはいざとなったら幽体離脱してでも来るわ。」
エッヘンとカリンは豊かな胸部装甲を張る。
「止めなさい。襲うよ。」
「わ~兄さんのえっち。でも…いや、何でも無いわ。あっそろそろ、ロジット公爵の挨拶よ。」
派手な飾り付けの祭壇の方を見るといかにも貴族と言う感じのスーツ姿をした初老の男がマイクのある所から、全体を見渡しているのが見えた。
キーーーーン
マイクから出るあの耳障りな音で式場の皆は祭壇に集中する。
「(あれがロジット公爵か。)」
「えー、マイクテスト、マイクテスト。
お よう ざい す。」
「(おいおい)」
ロジット公爵は異常に気づき、右奥にいる男性と何か、ジェスチャーをしている。やがて、ジェスチャーをし終えると、全体を見て
右手人差し指を喉に当てている
「(あのおじさん喉に指当てて何してんの?)」
「いや~すみませんね~、どうやらマイクの調子が悪いようです。気を取り直して、おはようございます。」
「(おー声でか)」
「「「「「おはようございす。」」」」」
「皆さんは、あのおじさん喉に指当てて何してんの?と思っているでしょう。」
「(わー、当たってる。)」
ふと横を見ると、カリンも図星という感じの表情をしている。
「これは無数にあると言われる魔法の一つです。えー、改めまして私はここ、ロジット公爵領を管理している、ロジット・パトス・アルメオです。今日という日を心よりお待ちしていました。今日から、皆さんはクラス判別をし、大人への一歩を踏み出すのです。以上」
「(みじか!)」
すると、騎士達がやって来て
「これからクラス判別を行います!周りの騎士達の指示に従って動いてください!」
そう言って、次々と誘導していく。その誘導に従って行くと、祭壇の奥にある教会の大きな部屋の前に並ばされ、何人かが新しく、出たり入ったりを繰り返している。そして、部屋から出た人達は自身の適正を自慢したり、将来どうするかを話していた。どうやら、この部屋で、クラス判別をするようだ。
「次、入って。」
女騎士に言われ、部屋の中に入ると、人数分の大きな水晶玉が設置されている。
「皆さん、それぞれ水晶玉がある所へ移動してください。」
「兄さん。どんな適正かな?」
「さあな。とにかく、やってみるしか無いだろう。カリンも、さっさと行け。」
「うん。じゃ後でね。」
エクスと、カリンは、それぞれ水晶玉の方へ向かった。
「手をかざして。」
騎士に従って水晶玉に手をかざすと、水晶玉が白黒に輝きそして、囲むようにして稲妻のような光が渦巻いている。
「これは!き、君はここで待ってて、すぐ戻るから。」
騎士が、慌ただしく、部屋の奥に消えた。すると、もう一人騎士が慌ただしく、部屋の奥に消えた。
「なんなんだ?」
周りを見ると、カリンの姿があるのに気付いた。
「よ~す。どうやら残ったのは俺達だけだな。」
「兄さん、何かした?」
「何にも。」
すると突然
(おーい!)
と何かに呼ばれた。
声の聞こえる方を見ると、蒼髪の女性の幽霊がいた。
「「あ、母さん!」」
(いや~ごめんね。間に合わないから、幽体離脱して来ちゃった。)
「いや、何やってんだよ。早く体に戻った方がいいよ。」
「そうよそうよ。」
(断ると、言いたいけどけっこうさまよったから、そろそろ戻らないと本当に幽霊になるから戻るね。でも本当によかったわ。あの人にも似てこんなに強いんだから。)
母さんは懐かしくどこかさみしく言った。
「おーい!君たち、こっちに来てくれ!」
帰って来た騎士がこちらに大声で言った。
「じゃまた後でね。母さん。」(小声)
(うん。)
そうして、二人は部屋の奥へ向かった。
また会う君にオクルモノ アルミ @ARUMINIUMU
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