3-3 マルキュー異世界館

 ①

「雑貨屋さん……ですか?」


 怪訝な顔つきでりんごが黒乃へ問いかけた。


「うん。何でも異世界23区の装備を販売しているショップらしいよ。通常の人には普通の雑貨屋さんにしか見えないらしいけどね」


 渋谷はファッションのメッカである。

 駅前にある109は代表格の一つ。

 その真下の地下通路を三人は歩んでいた。


「説明会の時とは違って、さっき倒したゴブリンがお金を落としたんだけど」

「あぁ、全部で100円くらいだがな」


 皐は手の中で光を放つ硬貨らしきものに目をやりながら言った。

 脳に信号を送ることで見せているとは──単なる映像とは思えないほど、ザラザラとした感触も、しっかりとした重みも感じる硬貨だった。

 始めは皐のミッション達成を目的としていた三人だったが、それだけでは物足りないと感じて結局二〇以上のゴブリンを討伐していた。


「こっちもある」


 と言って黒乃がゴブリンがその場に残した赤い帽子を掲げた。

 いわゆるドロップアイテムであり、その数は三人で合わせて一〇を越える。


 黒乃はパネルを呼び出し、《所持品》の欄から《鞄》を選択した。

 目の前に革袋のようなアイテムが現れて、アイテムをしまったり取り出したりすることが可能であることを皐とりんごにお披露目して見せた。


「ちなみにアイテム詳細の欄をタップすると、アイテムの説明が見れるよ」


 言われて早速、皐が指を伸ばしてパネルを展開させる。


「売却用アイテム、とあるな」

「MMOでよくある金策システムだね。うわぁ……装備とかドキドキするなぁ……光り輝くアーマーとかあるのかなぁ……」


 変わらず黒乃のテンションは高いまま。

 瞳を輝かせて、しまわずに残しておいたゴブリンの帽子をうっとりと眺めている。


「しかし、何だかすまん、二人とも」


 急に謝り始めた皐の意図するところを、流石に付き合いの浅いりんごには理解が及ばない。


「あぁ、気にすんなよ。言ったろ、必要以上のことで謝るのはなしだ」

「まぁ礼儀みたいなもんだクロ」

「ならいいけどさ」

「あ、あの……」


 置いてけぼりのりんごが割って入る。


「このゲームの報酬は争奪戦でしょ? 皐からすれば、こんなことしてないでもっと自分に見合った敵と戦ってレベルをガンガン上げて、装備を整えて早くボスに挑むべきなんだけど、それを三日も遅らせることになってごめんと、そういう謝罪だと思うよ」


 翻訳に近い黒乃の代弁は、全てが正解していた。皐が凛々しく頷く。


「な、なるほど! 熊杉君全然気にしないで下さいね!」

「御伽、ありがとう」

「二人は焦ってるかもしれないけど、そもそも早くクリアする必要がないんだ」

「「……え?」」


 りんごと皐の二人がハモった。

 報酬は早い者勝ちなのに早くクリアする必要がないとは、確かに矛盾が生じている。


「鴉間はこの報酬のことをイベントって言ったんだ。こういうオンラインとも言えるゲーム性でイベントと言えば、絶対にもう一度来る。クリア者は早い者勝ちではあるけど、その回数には制限がないんだよ」


 そうとも限らない。果たしてそうなのだろうかという疑念は皐とりんごからは拭い去らない。


「そうとは限らないんじゃないか?」

「や、限る。何故なら絶対にクリアできないゲームほど、やる気なんて絶対に起きない。難易度が高いけど、同じくらいに自由度が高くて、一見クリア不可能と思わせられるけど抜け道も用意してある。それが良いゲームの定義。

 鴉間は僕がゲーマーっぽい質問をしたら喜んでいた……つまり、人としては倫理的ではないかもしれないけど、ゲーム開発者としては誇り高いんだよ。

 そういう奴ほど、ゲームの完成度には注意を払う。ゲーマーの気持ちを考える。

 だからイベントは、ユーザーを落胆させて終わりにしない為の定期イベント形式になる」


 生かさず、多くは殺さず。再三に渡って痛感していたこのゲームの世界観だった。


「ま、何よりやる気を失われてはモルモットとして機能しなくなるだろうからね」

「なるほど。焦る必要はないのか」

「僕らにとってクリアできるタイミングを見定めて動けばいいんだ。もしそれが駄目でも次がある。先ずは生き残ることと、生き残る為の準備……だから今日の目的の二つ目──ショッピングだ」


 黒乃がそう言って足を止めたのは、109の真下にある大規模なコインロッカーが設置されている場所だった。

 小さいサイズのものと、大きいサイズのものが合わせて二〇ほど。

 少しスペースを空けてまた二〇ほど。幾つかに区分けされて複数箇所、用意されている。


 そのコインロッカーの群れと群れの間に、目的のものはあった。

 三人は直ぐに理解することができた。


「……ドア……ですか?」


 現代では中々お目に掛かれない。

 其処に見知らぬ大きな木の扉が在った。

 分厚い木製のドアに黒い鉄の補強が施されている。恐らくは強度を上げる為ではなく雰囲気作りを目的としたもの。

 押して開けるタイプの二枚の扉は中央のところで、ぴったりと合わさるように出来ている。


「凄い……RPGって感じのドアだ……!!」


 黒乃はその扉を開けることもなく、手触りを確かめ、鼻を近づけ匂いを嗅ぎ取り、気が済んだら今度は開け切らないように軽く押して重さを確かめている。

 割と──変態だった。


「……クロは、そもそも何処で知ったんだ?」

「へ?」

「此処に店があるのを知る機会がないだろう」

「あ、あぁ。たまたまだよ。たまたま」


 そそくさと木の扉に興味を戻す黒乃だった。

 ──また嘘をついている。

 この友人はこんなファッションのメッカなどには凡そ興味がなく、むしろ女性が多く集まる109に関しての情報など耳に入れる機会すらない筈だ。

 家ではきっとゲーム機に布団を掛けて一緒に寝てあげているような男がファッションなどと。

 そんなファッションに関しての知識を口走るような奴は黒乃ではないと──皐には黒乃が嘘をついていることは明白だった。


「猫町君、熊杉君が居ない三日間を散策に使ってたんですよ?」


 りんごが皐へ近寄ってヒソヒソと声を立てた。


「そうなのか」

「はい、熊杉君が行方不明になった初日に、熊杉君が異世界23区に参加することを確信して、それで戻ってきたらなるべくスムーズにゲームが進められるように、一応ボスが設定されている秋葉原にも行って、そこで装備屋の情報を他のプレイヤーから盗み聞いたみたいです。

 他にも回復手段とか、何処にどんなモンスターが居るとか、リリーを通してだったり、色んなところへ行って探し回ったりしたそうですよ?」


 恐らくは黒乃が居ない間、他県を探し回った件へのお返しだろう。

 恩を売られっぱなしではない辺りが黒乃らしい、と皐は鼻で笑って温かい目線を黒乃の背中へ送る。

 その黒乃は鼻息を荒げて、木の扉を携帯のカメラで撮影している。

 やはり──変態のようだった。


「おいクロ、御伽が引いてるぞ」

「っは!」

「ひ、引いてません! むしろ見守っております!」

「ごめんごめん……っていうか見てコレ! 写真では普通のガラスドアなんだよ!

 僕らの目には木の扉に映ってるし、匂いも木の香りがするんだよ! 脳って凄いよね!? 通常の人には普通のガラスドアに見えてるってことでしょ!?」


 だとすれば黒乃は、単なるガラスドアの手触りを確かめ、匂いを嗅ぎ、写真を撮るという、一層変態であった。


「入るか」


 手触りは完全に木。

 重たい扉が開かれると、其処は入り口の時点から、渋谷という都市からかけ離れている内装だった。

 石畳の真上を割くように赤い絨毯が道を作っている。

 壁には武器と鎧の数々が飾られていて、店内の雰囲気は中世時代風。

 会計所らしい受付は、数々の装備の陰に隠れ、奥でひっそりと身を潜めていた。

 その受付のほうから、扉が開く音に反応して声が返って来る。


「──いらっしゃ~いつって」


 聞き覚えのある──忘れようにも忘れられない声だった。

 陽気で不気味、狂気と狂喜。

 つい先刻まで話に出ていた当人が、其処には居た。


「鴉間!」

「おやおや……これはこれはお久しぶりでぇ」


 涎に糸を引かせて、その不気味な男はニタっと笑い、三名の客を出迎えた。



 ②

 皐が即座に足を肩幅に広げて腰を落とし、基立ちの型を取った。

 その背中へりんごがそそくさと隠れ込み、黒乃も不格好ながらに両手を前に伸ばしてファイティングポーズを取った。


「動くな!」


 黒乃が叫んだ直後、鴉間はゆっくりと受付の机に置かれたティーカップに手を伸ばし、中の紅茶を一口含んだ。


「血気盛んだねぇ。卓上にパソコンが見えるのかい?」


 プレイヤーの脳を停止されるにはパソコンが必要。

 机上にパソコンなどの電子機器の姿は見えない。

 鴉間は机へ手を広げ、危険性がないことを指し示しながら眼鏡の奥で厭らしく微笑んだ。


「……僕たちには見えないだけかもしれないだろ。例えばそのソーサーが本当はパソコンかもしれない」


 今はティーカップから離れた小さい皿へ、黒乃は顎をやる。


「っぷ!! ハーッハッハッハ!! なるほど! その発想はなかったなぁ!」


 嬉々としながら鴉間は、拳を思い切り皿へ叩きつける。

 ──ドン、ドン、ドン、ドン!

 と、小皿の破片で手が切れても、鴉間はニタニタと口元を緩ませながら、何度も何度も拳を叩きつけた。

 ソーサーは粉々に、鴉間は切った箇所から出る血を舐めながら、

「これでパソコンだったとしても、もう壊れてると思うよぉ?」と言った。


 暫く沈黙が流れた後、店を訪れた三人は警戒を解除した。


「……はぁ……何で居るんだよ」


 黒乃が呆れた溜息を零しながら聞いた。


「ボクさぁあ? ゲーム世界の店員さんって憧れだったんだぁ」

「……分かるけども」

「やっぱり分かってくれるぅ!? 定番の鋼の剣に自ら値段を付け、冒険者と交渉の末、そして売る! ボクはあの、鋼の剣を売った男なのだと、悦に浸りたいとずっと思ってたんだよぉ!」

「……まぁ……分かるけども!」

「思わず職権乱用しちゃったよねぇ。あぁ楽し」

「研究はいいのかよ」

「ずーっと研究じゃぁ、煮詰まっちゃうでしょぉ? だから気分転換に来てるのさっ」

「ちなみにお店の名前は?」

「マルキュー異世界館。マルキューと言いながら二四時間営業だけどねぇ」

「ぉお……何か格好良い……!!」


 黒乃はまるで猫が逆毛を立てるように警戒心を保ってはいるものの、何だかんだ二人はお互いにしかわからない何かを分かち合っているようだった。


「で、この店は装備が売ってると聞いたが、合ってるのか?」


 見かねて皐が割って入った。


「モチのロンだよぉ。一応説明聞いておく?」

「あぁ」

「見えてる武器や鎧は、勿論実体は違う何かだ。片手剣に見えて傘だったりもするし、甲冑に見えて萌えTだったりもする。本当の刃物を持ってちゃ捕まっちゃうからねぇ。異世界23区のプレイヤーだけがそう見えている。

 ゲーム内マネーはエンって通貨なんだけど、購入はエンが必要。もう手にしてるだろう?」


 皐の手の上では100エンが淡い光を放っていた。


「そう、それそれ」

「こっちの素材は売れる用?」


 黒乃が言うと、三人がアイテム欄からしまっていたゴブリンの帽子を取り出し、ドサドサっと机の上に置く。


「ゴブリンのトンガリ帽が十一個ね。全部で220エンでお買取りしま~すっつって。あー楽し」

「240エンにしてくれよ」

「ぇえ!? どうしてさぁ?」

「三人で割りづらいだろ」

「ッハッハッハ!! 黒猫君抜け目ないなぁ! 交渉とか面白いからおっけい!」


 机に240エンが並べられ、80エンずつを分け合う。


「毎度あり~っつってね」

「よし! 何か買おう!」

「あぁ……しかし……」


 皐がぐるりと身体ごと回転させて店内を見渡す。

 一体渋谷の地下の何処にこんな巨大なスペースがあったのかと思うほど、商品は多い。

 ゲーム初心者である皐とりんごには、何を手に取っていいものかわからなかった。


「ボクが見繕おうかぁ?」


 鴉間は頬杖の上でニヤニヤと楽しそうにしている。

 その時を待っていたかのように瞳が光輝いている。


「運営側がそんなことしていいのか」

「クマちゃん、ボクは今は運営じゃないさ。武器防具屋のオヤジなんだよん」

「クマちゃん……」

「書かれた職業に見合ったスキルを開発できるくらいだからね。コーディネート力には多少自信があるつもりだけどぉ?」

「……なら頼むが、武器が好かん。グローブか何かないのか」

「はいはい、ありますともぉ」


 鴉間は陳列棚の奥へと消えていく。

 既に受付付近に黒乃の姿はなく、室内の何処か遠くのほうで彼の興奮的な声が響いた。


「……黒猫君には必要なさそうだねぇ」


 言いながら戻ってきた鴉間の手には、黒革のグローブが握られていた。

 指先から生地が無いタイプで、ちょっとしたシルバー装飾が施されて黒光りしている革の艶が中々にキザったらしい。


「クマちゃん、爪のパッシブスキル持ってるよねぇ?」

「あぁ」

「それ育てることが出来るんだよ」

「何、そうなのか」

「相応のスキルポイントを割り振れば爪自体が強化されるよぉ。だから爪を閉まってしまうのは勿体ないだろうと思って、指先が空いているタイプのグローブにしてみたよん。

 結構厨二っぽいけど、これなら装着しただけで攻撃力だけでなく防御力も底上げされるシステムだし、何よりクマちゃんの気にしている凶器の域には達していないんじゃない?」


 商品名、タクティカルグローブ黒式。150エン。

 店主である鴉間は商品説明を行って皐に手渡した。

 皐の所持エンは約180エン。購入範囲内だった。


「これ、本当はなんなんだ?」

「携帯のカメラで見て御覧なさいな」

「そうだったな」


 携帯を取り出して、不慣れな様子でカメラ機能を呼び出す。

 撮影などしなくても携帯画面ではやはり元々の形で見えるらしい。

 これならカメラ越しに見ながら商品を選ぶことも可能だろう。

 黒式と名付けられたグローブがカメラ越しに映っていた姿は、シルバーなどの装飾がなくなっただけの普通のタクティカルグローブだった。


「ほぼ、そのままだな」

「日常生活で凶器と判断される代物じゃないからねぇ。別にそのままでいいものはそのままさ。まぁ普段からそんなグローブしてると厨二っぽいけど、そこは命が懸かってると思って我慢しておくれよぉ」


 とはいえ、わざわざ装飾品を足し、外見をゲーム装備風に昇華させてある辺りは芸が細かく、確かに黒乃の言う通り鴉間には開発者としての高い誇りがあるようだ。


「あ、あの……」

「おや、りんごちゃん」

「私にも……お願いしてもいいでしょうか?」

「あっはっはぁ! 勿論さぁ! いやぁ店主楽しいねぇ」


 鴉間は再び店内の何処かへと消えていく。陳列されている商品が多すぎて何処に居るかはわからない。それほどに武骨な剣や鎧で店内は埋め尽くされている。


「試着室とかあるのー!?」

「お店の右奥が試着スペースだよぉ!?」


 それぞれ違う場所に居るらしい黒乃と鴉間が大声を交わし合い、そして鴉間は何も持たない様子で戻ってきた。

 しかし何も持っていないわけではなく、小さい商品を手に握り込んでいた。

 りんごに差し出されたのは指輪だった。


「わぁこんな可愛い装備品もあるんですね!」

「おやぁ? りんごちゃんPR側なのにゲームしないのぉ? 指輪はRPGじゃ結構ベターな装備品だけどねぇ」

「PR……側……?」

「おっと失礼。PRは──Pre-registration(※事前登録の意)。

 ほら……プレイヤーは死にかけの人を無理やり連れて来てるって言っただろう? そうじゃなくて自ら手続き会場に足を運び、手続き書をしっかり書いた者のことを、運営内ではPR……事前登録者とみなして、そう呼んでるのさ」


 ちなみにそうではないプレイヤーをGLと呼んでいると鴉間が付け加える。

 どうやらグールという、ややスラング的な意味合いらしい。


「ちなみにこの指輪は知力と精神力が上がる。異世界23区の世界では知力は魔法攻撃力、精神力は魔法防御力にあたる。回復魔法などを使用した際の回復量は魔法攻撃力量に依存する。

 もっと言うとりんごちゃんの矢のスキルは、あれは魔法類に属されているから、スキル威力を上げるにはこの辺りがいいんじゃないかな。

 実物も単なる指輪だから、普段から付けてても可愛くていいじゃなぁい?」


 商品名、アメジストソウル。180エン。

 異世界23区内では一般的なアクセサリーである。

 細身の華奢なシルバーリングであり、中心に小さい紫色の宝石が一点のみ施されている。

 ぴったりのエンを持ち合わせていたりんごも会計を済ませるに至る。


 携帯カメラで見てみると、細身のリングはそのままに装飾などはない。玩具の指輪に近い感じだった。

 りんごは少し嬉しそうに小指に付けた。

 ──ガシャン、ガシャンと、店の奥から鎧が歩む音が響く。

 背中に両手剣を背負い、鉄ヘルムで顔は全く見えない。研磨された鋼に身を包み、店の灯りが鎧を美しく照らしている。

 突如、西洋の騎士が現れた。

 皐とりんごは、その鎧の者を見て印象を持ち思わず他プレイヤーとの遭遇かと身構えたが、その者の頭上には、《黒猫》と在った。


「見てこれ! 凄くない!?」


 異世界23区においてのアイアンヘルムはフルフェイスタイプの為、表情はよく見えないが、二人には黒乃の光輝く瞳が浮かんでいた。

 皐がおそるおそる携帯のカメラで黒乃の全身を映すと、単なるパーカーと帽子、そして背中に背負っているのは竹箒たけぼうきだった。


「……クロ、変だぞ」

「え!? 西洋騎士っぽくていいじゃん!?」

「御伽はどうだ」

「う、うーん……重くないのですか?」

「滅茶苦茶重いね」

「戦闘が困難になるのではないかと……」

「えー…………でも着たいなぁ……」


 悔しがる黒乃の、鎧の肩にぽんと鴉間が手を置いた。


「全部で二万飛んで820エンになりまぁす」

「…………ぇ……ぇえええええ!?」

「そんなフル装備当然だよぉ!?」

「全部で180エンに……なる訳ない?」

「アッハッハぁ! 駄目だねぇ!」

「っくっそぉおおおおお!!」


 結局、この日黒乃は短刀を買い、余ったエンで回復アイテムである薬草らしきものを買って、鴉間が店主である装備屋を後にした。

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