3日目③
*
居間でおれはガチャを引いていた。
「石がない。10連どころか単発すら回せない。来月にはピックアップがあるのに、どうしてムダ遣いしてしまったんだ」
スマートフォンの画面を未練がましくタップする。異世界転生がご破算になり、軽率な行動のつけがきていた。
じつを言えば、炎上による批判を逃れる手立てはある。火付け役の希望どおり、歴史に忠実に書きなおせばいい。歴史どおりであれば、フィクションではないため先行作品との類似を非難されることもない。
だが、どうしたものか。
夏未が険しい声をあげる。
「ちょっと。そこどいてくんない? 借りてきた『わらの犬』のDVDをみたいんだけど」
「勝手にみればいいだろ」
「お兄と肩を並べてソファに座れって言うの? キモ」
おれはため息をついて腰をあげた。
そうだ。そもそもおれが異世界転生を望んだのは、この人生を変えたかったからだ。やるしかない。
自室に戻る前に美冬に声をかける。
「夜、1人でおれの部屋にきてくれ」
美冬はなぜか頬を赤らめた。
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