予兆

「おい、それやるとき声かけろよ。殺されるかと思った」

「はいはい、それじゃあこれどうぞ」

渡されたのは赤黒いカプセル一錠。もう怪しさしかない。

「これ飲んで大丈夫なのか?」

「どんなことがあっても着いてくるんでしょう。ほら早くして」

そう言いながら缶コーヒーを渡された。

「これは?」

「薬の作用に必要なの」

「水じゃないのか?」

「ねぇ何度も同じこと言わせないでよ」

と決めポーズのように指をこちらに向けてくるので慌てて缶を開ける。毎朝嗅ぐジャンクな香りが鼻をくすぐる。

これを飲んだら変われる、特別になる。漠然としたものじゃない、明確な本物を手に入れるんだ。

意を決してカプセルを口に入れようとしたとき、突風とともにカプセルが宙に舞い、同時に辺りは白い煙のようなものに包まれた。

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