怪しいと憧れ

「赤い花の能力?フラデ・フォース?お願いだ、ちゃんとした日本語で喋ってく」


言いかけた時にはもう遅かった。足の付近に一発銃弾が煙をあげてめり込んでいた。


「それ以上私を馬鹿にするような事を言ったら次は頭にでも打っちゃおうかな」


ニコニコと笑いながらとんでもないことを言う。


「わかった、悪かったから。そのフラデ・フォースってなんなんだ?」

「面倒くさいわね、要するに身体に特異体質が現れるのよ。赤い花が司令塔になって身体全体の能力を血の巡りを利用して活発化させるの。そして薬の作用も合わせたら、あら不思議体が伸縮自在になったり様々なことができるようになるってわけ。理解した?」

「な、なるほど」


明らかに怪しい。なんだ能力って、こいつこじらせてるのか。でも嘘ではないかもしれない。実際にあいつの手からは銃弾がでてきたわけだし、もしそれが俺の中にも存在するなら興味がある。そのフラデ・フォースだかなんだかを手の入れたら、昔憧れたヒーローみたいになれるじゃないか。

今の生活はもう嫌だ。ずっと一人でなんの彩りもない、人生を目的もなく歩くことに疲れた。この日常に変化が起きるなら、この身体がどうなってもいい。


「その特別な能力ってどうやって手に入れるんだ?」

「知りたいなら、条件がある」

「なんだよ」

「一つ、どんなことがあっても必ず私に着いてくること。二つ、この薬を今飲むこと。それだけよ。」

「わかった」

「ずいぶんすんなり受け入れてくれるのね」

「ここで死にたくもないし、けど生き延びたいわけでもない。俺のつまらない人生にこれから先に大きな変化があるとは思えない。だったら一緒に連れてってくれ」

「まぁ理解力が低い割にはよくできました、合格よ」


彼女はまた指を上に振り上げ、俺を縛りつけていたロープの結び目に向かって銃弾をはなち、拘束を解いた。

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