恐怖を栄養に
驚いた加賀谷さんが哀れむような、それでいてイラついた目で俺を見る。
そして俺の胸ぐらを掴んでそっと息を殺すように
「お願い、大声を出さないで。私はそれを治す方法を知っているって言ってるのよ」
「え…」
「ここでは話せないから、とりあえず出ましょ」
混乱と動揺、焦燥の感情で思考が上手く回らない。言われるがままに彼女と共に店を後にした。今の俺には余裕など一ミリもない。
治す方法ないんてあるはずがない。そんなものがあればニュースで報道される。悲しくなるほどになすすべがない。
そもそも花咲き病になんかならなければこんな事にはならなかったんだ。
これで最近のあれやこれやの謎が解けた気がする。
体重の変化も身長の伸び縮みも全て赤い花が体から養分を吸い取る為に必要な動きだったんだ。だって普通に考えればあり得ないことが起きていたんだ。
それを忙しさかまけて見て見ぬ振りをしていた。自分の愚かさに落胆する。
店を出て数分歩き、ほの暗い裏路地に着いた。
加賀谷さんはさっきよりかは怒ってないけど、落ち着きなくそわそわしてる。
辺りを見回し、人が居ないこととは別のことを気にしてるように見える。
ようやく確認を終えて加賀谷さんがこちらに向き直った。
「もう急に取り乱すからビックリしたじゃない」
こいつは何を言ってるんだ。そりゃ命の終わりが垣間見えたら誰だって慌てる。
行き場のない怒りを抑えて声を絞り出す。
「当たり前だろ。ほぼ初対面の子に色々言われるし、花は再発してるし。治らずにただ死を待ってるだけなんて。怖いに決まってる」
「だから治す方法があるって、さっきから言ってるじゃない」
「そんなものあるはずないだろ。あるなら大きく取り上げてるはずだし、ばあちゃんだって死なずに済んだんだ」
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