再発


「その、どいうこと?」

「だから『お花』だよ。もしかして背中に花咲き病の傷ができてるんじゃないのって聞いてるの」

「なんでそれをっ」

背中の花ってなんの話だ。俺に花が咲いたのは首元のはず。というか加賀谷さん花咲き病たっけ?しかも背にあるってどいうことだ、いやあれはもう翌日に治ったはずじゃないか。恐る恐る背中を触ってみる。


咲いてる。


背中の中央に確かに咲いていた。しかも前のよりもはるかに大きい。

恐怖で言葉を失うとはまさにこのことだ。花咲き病の再発。すなわち、それは…

「ずいぶんと怯えてるね。再発してたでしょ?」

「つまりもう治すことが、できない…。」

花咲き病は皮膚の血管に本物の花のように根をはり、そこから必要な養分を吸収する。

大体は一度薬を飲めば根もろとも枯れて徐々に治る。

しかし再発したということは根が皮膚の血管にとどまらず体の奥の血管にまで根を深く張っているという証拠。

再発のケースは稀で、今までなった人は数日間で花に養分を吸い尽くされてしまう。

なので手術することも原因究明の時間もなく生き絶えるのだ。

「普通なら、ね?」と加賀谷さんは静かに言った。けれど焦っている俺には届かない。

「一体どうすれば… そうだ今すぐ病院に行けば」

「もう遅いよ、様子を見る限り根を張って数日は経っているし」

「じゃあどうすればいいんだよ、なんでわかんだよ」

「いいから大声を出さないで、落ち着いて」

「こんな状況で落ち着いてられるか、他人事だからそんな簡単に言えるんだ」


気づいたらファミレスの客全員が俺の方を見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る