夢心地は瞬間で
午後は永遠にパソコンと向き合うだけなので時間が過ぎるのが遅い。出されたエクセルの課題を早々に終わらせ提出し、足取り軽やかに広場へ向かう。
サボって一回家に帰って着替えればよかったな、でもそんなことしたら気合い入ってると思われるのも恥ずかしい。待ち合わせの時間の十分前に広場に着くと彼女はもう着いていた。
「ごめん、待った?」
「ううん、今来たところだよん」
こんなカップルみたいな会話をした後に、俺たちは近くのファミレスに入りそれぞれメニューを頼んで食べ始めた。加々谷さんは期間限定プレートの小さなオムライスをるんるんで頬張っている。
「おいし〜い、このメニューずっと食べたかったんだよね〜」
「それはよかった。でもずっと気になってたんだけど、なんでそんなに俺と話したいの?」
「誰かと仲良くなりたいのに理由がなきゃダメなの?」
こぼれ落ちそうなまんまるの瞳が俺を見つめている。さっきからこんな風にはぐらかされて話が核心に近づかない。
「じゃあ俺のどんな所がそんなに気になるの?」
「うーん、全部かな」
「…え、いや、ぜぜ全部って、」
あまりの驚きで手元が狂い、持っていた箸が落ちてしまった。今日会った人にいきなりこんなこと言うなんて。
最近の若者はこれが普通なんだろうか。だとしたらやっぱり俺は時代から遅れているんだな。
そんな俺をよそに彼女はプレートの上のものを次々とたいらげていく。
これはなんて答えるのが正解なんだ、考えれば考えるほど下心じみた回答しか思い浮かばない。
その様子に痺れを切らしたて加賀谷さんが
「別に今日全部知りたいわけじゃないから、そんなに慌てないで。」
「だ、だよね。」
「でもさ今日一つどうしても聞きたいことがあるんだよね」
「何?」
「ゆきくんもしかして背中にお花咲いてる?」
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