ハンバーガーと鈴の音
中学や高校は活動域が狭いし、俺もそれなりに話せる方なので簡単に友達もできた。
席の距離感も近いので「ねぇ、消しゴム貸して」的なことで話しかけて会話をはじめることができる。
しかし大学はそこまで甘くない。
広大な敷地に、大きな教室、様々な人間模様。そして大体の人が入学式前には仲間的な何かをSNSで作っている。
俺にはそんなに細かいことなどできるわけがない。また決して特別見た目がいいわけでも、何かが得意なわけでもない。
だから俺が何かアクションを起こさない限り誰かと話すなんてことは学内ではない。
ここで華やかになるはずだったキャンパスライフは来世に期待するしかないみたいだ。
考えてるうちに一つ目のハンバーガーを食べ終える。虚しさと寂しさが込み上げてきてほとんど味がしない。
半分ほど減ったポテトに手を伸ばそうとした時、少し離れた席からの視線を感じる。
通路を挟んで向かい、ちょうど目が合う位置にその子は座っていた。
俺の自意識が過剰なのか、でもこちら側に座っている人は誰もいない。
したがってあの子が見つめる先には俺しかいない。
特別意味があるわけでもないだろう、動物園に来て物珍しい生き物が食事をしているからちょっと観察してみようという何気ない視線だ。
そう考えながら二つ目のハンバーガーに目を下ろしたその時、
「たくさん食べるのねっ」
頭の上から鈴の音のような可愛らしい声が聞こえてきた。
あまりにも唐突な出来事で俺は呆気にとられて、頭が全く回らない。
さっきまで離れた所にいたのにいつここに?そしてこれは俺に向かって話しかけているのか、だとしたらなぜだ?
色んな疑問が頭をよぎるなか声が続く。
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